第63話
竜巻が大きくなったのを確認して、僕は一直線に焚き火のところへ。
と同時に、
「セッタ君!少しの間だけ、入り口からの見えない攻撃を防いでください!」
あの大蛇からの攻撃に邪魔をされないように、セッタ君に防御を頼む。
一人ではキツイだろうけど、1発や2発くらいなら耐えてくれるはずだ。
その間に勝負を決める!!
目の前には焚き火。洞窟に入ってすぐに着火しておいて助かった!
「行きますよ!ミューさん、少し熱いけど我慢してくださいね!!」
僕は自分の炎の魔法と、風の魔法を組み合わせて焚き火の日を増幅させる。
そしてその炎を、竜巻の風に乗せる!!
瞬く間に炎は渦を巻き、火炎竜巻が出来上がり!
竜巻に巻き上げられていた蛇たちが次々と炎によって焼かれていくのが見える。
「あっつい!!あちちちち!!」
ミューさんがだいぶ辛そうだ。
「ミューさん!もうちょっとだけ!もう少しで炎が天井まで届くので、そうすれば大半の蛇は焼けるハズです!」
「もうちょっとてどのくらいですか!?」
「もうちょっとです!」
「あとどのくらいですか!?」
「あともうちょっとです!!」
「だから、どのくらいですか!?」
「ほんとうにもうちょっとですから!!」
なんだこのやりとり!
そんな会話がしばらく続いてるうちに、炎が天井に到達し、補備と土の焦げる匂いが周囲に漂う。
「まだですか!?」
「もう大丈夫です!」
「助かりますー!!」
ミューさんがそう叫びつつ座り込むと、竜巻がふっと消えた。
上から降ってくる蛇蛇蛇の雨。
中にはまだ燃えてる個体もあるので、少し危ないが、まあ生きた蛇に襲われるのに比べたら避けるのは簡単だ。
そう思っていたのだけど――――炎をまとった蛇が一匹、すっかり疲れて座り込んだミューさんの上に落下していくのが見えた!
「危ないっ…!」
声をかけた時にはもう、炎はミューさんの頭上に―――
「俺に、任せろぉぉぉぉ!!!」
近くにいたオーサさんが、そう叫びながらミューさんに駆け寄り、大剣を振り回して炎ごと蛇を吹き飛ばした!!
た、頼れるぅぅぅぅぅ!!!!
脚を怪我していたはずなのに!!なんて頼れる男だオーサさん!!
「問題ない!足はポーションで何とかなった!」
さすがポーション、便利だ!!魔法アイテムこうであれ!!
……けど、ってことは蛇は毒無かったのかな?ポーションで治るってことはただの噛み傷だったってことだよな……と足元の比較的焦げてない蛇を見てみる。
……毒蛇ですよね?
あの、うん、これどう考えても毒蛇なんですけど……ポーションって毒を消す効果ありましたっけ…?
「いやぁ、ポーションは万能だな!!どんな怪我でもすぐ治る!!はははっ!これさえあれば最強だ!」
……ポーションってちょっとした怪我を治すくらいの効果しかないハズなんだけど……まあその、思い込みで病気が治ることもあるらしいし、信じさせておこう。もし後でなんか症状が出たら毒消し飲ませてあげるけど……大丈夫そうですね…?
人体の不思議!!!
「ふおおおっ!!」
突然の音に驚くと、セッタ君が吹っ飛ばされてきた。
ああ、さすがにもう限界でしたか。
「大丈夫セッタ君!?」
「ああ、平気じゃよ。この程度では傷もつかんわい。ただ、盾はやはり構える人間がいてこそよ。盾だけでは防ぎきるのは難しいわい」
苦笑いをして見せるセッタ君の肩に手を置く。
「ありがとう、助かったよ。あとは僕が!……と言いたいところだけど、オーサさん!もう一仕事頼めますか!?」
「おう!任せとけ!」
仲間の蛇たちの異変を感じたのか、それとも攻撃を防がれていた障害を取り除けた実感があったのか、巨大蛇が近づいて来るのがわかる。
「こっちの入り口から巨大蛇が来ます。僕が惹きつけるので、オーサさんは横から頭を切り落としてください!!」
「了解了解!任せとけ!なんでもかんでも俺に任せとけ!!」
いやホント、こと戦闘に関してはこの人ホント頼りになるなぁ!
あえて入口の前に立たず、見えない攻撃を素通りさせる。
さっきまでとは違い、他のみんなも余裕を持って安全な場所に立っていてもらえる今がチャンスだ。
……どうやら、あの見えない攻撃には敵との距離や安全を確認する意味もあるらしい。狭い通路を通るうえで、まず先に攻撃をしかけて、そこにいる相手を排除してから先に進む。
効率的と言えばそうだが、敵が倒れなければ、つまり先ほどまでのように僕がずっと防いで居たりする間は全く近寄ってこないとなると、あまりにも行動が機械的なようにも感じるな……モンスターの習性にはそういう物も有り得るとは思うけど、少し違和感だ。
ともかく、少しずつ、少しずつ近づいてきている気配。
音を立てずに、息を殺し、待ち伏せる。
何度目かの見えない攻撃が通り過ぎた気配を感じた次の瞬間!
巨大な蛇の頭が入口の通路からこの広い空間に入ってきた!!
デカいっ!!なんだこれ!?
間近で見ると、そのあまりの大きさに一瞬で恐怖が全身を駆け抜ける。
大きい、という事に対する根源的な恐れが沸きあがってくるのを精神力で封じ込め、正面に立つ!
僕の存在に気付くと巨大蛇は大きな口を開けて威嚇すると同時に、その口から見えない攻撃が飛び出した!!
「いってぇな!近い!!」
イジッテちゃんが何とか防いでくれたが、近くでくらうと凄い衝撃だ。
ほんの少しでも気を抜いていたなら、全身が反対側の通路まで吹っ飛んでいたかもしれない。
だが、息をつく間も無くその大きな口が僕を飲み込もうと襲い来るっ!!
「ぐっ!」
大きく開いた口の下あごに足をかけて、鋭い牙が剥きだしな上顎はイジッテちゃんで防ぐ!
「お前無茶すんなぁぁぁーーー!!!いたたたたた!!」
「すいませんイジッテちゃん!!ちょっと耐えてー!!」
これで何とかしのいだ……と思った次の瞬間、口の奥で何か、空気が唸るような音が聞こえてきた。
――――ヤバい!あの見えない攻撃が来る!
この近距離でくらったら間違いなく致命傷だ……!
「オーサさん!お願いします!!」
けど、今がチャンス!蛇の注意がこっちに向いてる間に、横からオーサさんが攻撃!予定通りの展開!
「よっしゃあ!!!まーーかーーさーーれーーーーたぁぁぁぁぁーーー!!!!」
大きく頭上に振りかぶり、そこから鋭く振り下ろされるオーサさんの大剣!!
そのスピードとパワーの凄まじさは見ただけで伝わってくる。
よし、これが決まれば――――
だが、その期待は淡くも打ち砕かれる。
突如巨大蛇の瞳が光ったかと思うと、そこから青白い光線が放たれ、オーサさんの剣を弾き返し、その勢いでオーサさんの身体も後方に吹き飛んだ!
「なんだと!?」
オーサさんも驚きを隠せないでいる。そりゃそうだ、なんだよアレ!?
あのオーサさんの大きな体で、全体重と力を乗せて振り下ろした剣を、オーサさんの身体ごと吹き飛ばすなんて、どんなパワーだよ!
ってか、なんで蛇の目から光線が出るの!?なにそれ!?そんなの見たことも聞いたこともないぞ!!
くそっ、どうする、どうする!?
このままだと見えない攻撃をくらう。一度引くか?けどここで引いたらその隙に蛇の全身が中に入ってくる可能性が高い。
頭を高く上げられたら戦ううえで酷く不利なのは確実。
今このチャンスを逃したら勝ちが遠のく……!
「えーーーい!!」
緊張感をぽかりと叩くような可愛い声が聞こえたかと思うと、風が吹いた。
その風は、吹き飛んだオーサさんの身体を浮き上がらせ、天井近くまで持ち上げたかと思うと、巨大蛇の頭上辺りでピタリと止んだ。
「い、今ですー!」
ミューさん!そうか、さっきのような風の魔法で、オーサさんの身体をコントロールしたのか!
「心得た!!任せろぉぉぉー!!!
今日何度目かの任せろが出た!
だが、蛇の目は再び光って――――
「おそぉぉぉぉぉぉい!!!!」
光線が出る前に、オーサさんの大剣が巨大蛇の首を切り落とすっっっ!!!
ガギィっと金属のような音を立てて、首は斬り落とされ、地面に落ちた。
喉の奥で鳴っていた謎の音も少しずつ消えていき、瞳の光も消失した。
ごろりと転がる巨大蛇の頭……しばらく、空気が凍ったのかと思う程の静寂。
終わった……のか?
しかしその時、わずかな物音に背後を振り向く!
蛇……!生き残った小さな蛇が、背後から僕に噛みつこうとその口を開けて飛び掛かって……!
「おっと!!……アンタ、最後に油断し過ぎよ」
いつの間にか近くまで来てくれていたパイクさんの蹴りが、その蛇を貫いた。
「あ、ありがとうございます」
僕は安堵で座り込みそうになるが、いかんいかん、またすぐ油断したら駄目だ。
しっかりと周囲を見回し、危険がないか警戒する。
どうやら僕とイジッテちゃんとオーサさん、そしてミューさんが巨大蛇と戦っていた間に、パイクさんとセッタくんで生き残った小さな蛇の後始末をしてくれていたようだ。
ああもう、「本当になんて頼れる仲間で賞」を差し上げたい。
そして少しの間警戒を続けたが、もう小さな蛇も居ないし、巨大蛇の頭も、そして頭を切り落とされた長い体も動く様子はない。
念のために剣で突いてみる。
硬い、動く様子はない。
つまり――――――
「これ、倒したってことで良いんですよね?」
「うむ!!良かろう!!!」
オーサさんは何の根拠があるのかわからないけど、そう言い切って貰えると少し安心する。
うん、うん……よし、助かったーー!!
あーーーーー、疲れたーーーーーーー!!!寝たーーーーーい!!!!
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