第8話 バールのような、お仕事完了です

「小林さん、もう時間だし上がって良いよ」


「はい、お先に失礼します。ヨウナちゃんも一緒に着替えようか」


「はい!」


 今日の営業時間を終え、店のかたずけをしながら康太は思い悩んでいた


「さて・・・どうにか今日は乗り切ったぞ。この後どうするか・・・、あのバール娘」


 そう康太が考えている中に、小林とヨウナが着替えて休憩室から出てきた


「お疲れはです。また来週よろしくお願いします」


「はい、お疲れ」


「お疲れです☆」


 小林が帰った後、ヨウナがモジモジしながら康太に言う


「康太さん、私頑張りましたよねぇ~」


「うん、そうだねお疲れさまヨウナ。正直はじめはヒヤヒヤしたけど…」


「じゃあ康太さん! 私に油塗ってください!」


「油!?」


「そうです、ちゃんと使った後は手入れしませんと。全身すみずみまでですよぉ~、ムフフフ」


 笑いながら服を脱ぎだすヨウナを康太は全力で止めた


「ちょっと待ったぁ!」


「どうしたんです康太さん?」


「もう自分の手足があるんだから、自分で塗った方がいいんじゃないかな!」


「え~、康太さんが塗ってくれないんですか~…」


「ダメです塗りません、勘弁してください」


「ちぇ、分かりましたよ~、自分で塗ります。油どこでしたっけ?」


 ヨウナは不貞腐れながら油を探しに行こうとしたが、康太が ”やべえ! 工具用の錆止め油を仮にも人の姿をした物体に使う訳には!” と思い呼び止めた


「それも待って!」


「今度は何です?」


「明日!明日新しい油買ってくるからそれまで待って!」


「え、やった! 良い油じゃないと承知しませよぉ~」


「はは・・任せてくれよ。二階の空き部屋を片付けるから、とりあえず今日はそこで休んで」


「は~い、二階の物置ですね☆ とう!」


 ヨウナは二階に上がる階段の前のドアのすき間に手を差し込みこじ開けた


「バキィン!」


「ドアノブ回して開けよう! それと鍵がかかってるからって無理矢理こじ開けるのも無し!」


 康太の言葉にヨウナは驚いた


「ドアノブ!? そんな開け方が! いつも私を使わずに普通に開けてるから不思議に思っていたのですよ☆」


「普通はそう開けるんだよ!」


「ところでドアノブってなんです?」


「ドアについてる取っ手の事!」


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