第6話 バールのような衣装
うずくまっていた康太はどうにか立ち上がってヨウナに言った
「わかった、わかったから。ヨウナにも手伝ってもらうよ」
「はい、ありがとうございます! ヨウナ頑張りますね」
康太は ”やれやれ。明るい性格だし給仕くらいならどうにかなる・・・かな?” と頭を押さえて、ふと思った
「一応聞くけどヨウナ、コーヒーってわかるかい?」
康太は ”一般常識があるか分かんないからな。なんたって工具だし” と思いながら返事を待つと、ヨウナはこう答えた
「はい! アメリカの開拓者が旅先で汲み上げた泥水を、煮沸消毒するついでに砕いたコーヒー豆を入れて泥臭さをごまかす為に使った嗜好品ですよね」
”なんか似たような話を聞いた事あるけど、違うそうじゃない! 知識が片寄ってるな、工具だから実用性の話しか出来ないのか?” と思いながら康太は言った
「えっと、取りあえずウチのは泥水じゃないから。それにうちの店はイタリア風だし」
ヨウナは指を鉄砲の様な形にして構えながらこう答える
「なるほど・・・、マカロニ・ウェスタン・スタイルなんですね☆」
”昔の娯楽映画のジャンルが分かるならコーヒーも分かれよ!” と康太はため息をもらす
「はぁ・・・大丈夫かな・・・」
困ってる康太に小林が声をかけた
「康太さん、取りあえずヨウナちゃんに私の予備の制服着せてみましょうか。、このままと言うのも何かアレですし」
康太は ”確かに不自然な赤い髪と青いワンピースのツートンカラーより、制服を着てもらった方が良いか” と思い答えた
「じゃあヨウナを着替えさせるの手伝ってあげてくれるかな小林さん。多少サイズ合わなくてもエプロンとかで誤魔化せばどうにかなりそうだし」
「はい、わかりました。ほら着替えさせるからこっちに来てヨウナちゃん」
「はい! 小林さん」
小林がヨウナをつれて休憩室に行ったのを見届け、康太はカフェバールの開店準備を始めた
「ちょっと急がないと! あと10分しかないや」
「康太さん!」
ヨウナの声を聞いて康太は振り返った
「ヨウナ、制服のサイズはどう?」
「はい!小林のガバガバです!」
「ガバガバ?」
「なんか胸とお尻の部分がスカスカしました。今はエプロンで無理矢理固定してますから大丈夫です☆」
康太は ”そう言えばヨウナ、平バールだもんな” とか思いながら言う
「えっと、スカートの裾を引きずってるわけじゃ無いから大丈夫か」
そんな事を言ってると、ふと小林の声がした
「康太さん・・・」
「小林さん、ヨウナの着付けありがと・・・・」
小林の悲痛な訴えが響き渡る
「ヨウナちゃんはガバガバでも、私ガバガバじゃないですからね」
「うん? 小林さんのサイズに合わせた制服だもんね。たまによく分かんない事言うよね小林さん」
康太の感性もどこかガバガバだった
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