第一章 帝都にて
1 最初の夜(1)
部屋の南側一面に
○○の先ほどの発言は、現在部屋にいる三人から言葉を奪って、奇妙な
「ここはウルグルド帝国、首都スラミヤにある皇帝陛下の居城オリドールの一室です」
一気に
「
「シエルレーネ……第一皇女殿下……」○○は
そう言って狐耳眼鏡が寝転がっている有翼紅髪を
「貴女様の
以後お見知りおきを下さいませ、とタタロナは優雅に、イェーナはぎこちなく
「……」
○○(名前を得た。以後シエルと呼ぶ)はタタロナの言葉を聞いて、ひとつの結論を得た。それは本当に
「ゼカ歴四九八年九月二十二日です」
ゼカ歴、と聞いてはっとしたシエルは、そうか使っている
「姫殿下様は式典に参加されるために、御領地からここオリドール城に御到着なされましたが、三日前に
こちらのシエルも階段落ちをしていたのか。偶然かな? とシエルは思った。
「式典とは?」
「
とタタロナが答えた。
うへえ、とシエルはうんざりした。帝族という立場上やむを得ないものであろうが、おそらく元の世界では一般人であったろうシエルには、面倒なものとしか思えなかった。
「礼儀作法とかひとの顔も覚えていないのだが……」
と、何とか逃げようとするシエルだった。が。
「明日一日御座います。必要なことは
必要なことは一日で覚えろと! シエルは
「今日まで寝込んでいたのだ。体調が
「先ほどの鏡の前での
鬼だ、とシエルは思った。
タタロナはやれやれという雰囲気を
「国が主催する行事に参加されないのは、帝国の権威を
貴族社会。シエルは
「わ、分かった。明日はよろしく教授してくれ」
分かれば
ふと視線を外すとイェーナと目が合った。ぱっちりとした瞳にきりっとした眉、の筈であったが、半開きのまなこに
(さっきまで大笑いしてたくせにもうか! 子供かよ!)
「何もないようでしたら、今夜はこれまでとしたく存じますが」
タタロナが聞いてくる。シエルはとんと忘れていたが、今は真夜中だった。しかも遅い。色々と聞きたいことはあったが、それは明るくなってからで良いだろうと結論を出す。だが、ひとつだけ確認しなければならないことがあった。
「ああ、そうそう、
「聖花歴、で御座いますか。人族が使っている暦で御座いますね――」
どうしてそんなことをと思っているだろうが、タタロナは
「千百十二年で御座います」
「分かった、ありがとう。おやすみ」
「おやすみなさいませ」
扉が開いてふたりが出ていき、また閉まった。蝋燭の火が
「あーもう、寝ちゃいたい」
しかしまだシエルは眠るわけにはいかなかった。今の状況を整理して、分析をしなければならないのだ。長く息を吸って
その姿が目の前の鏡に映っている。
そのまぶたをシエルは閉じる。閉じてしばらくそのままにした。
まぶたを開き、言った。
「ここはゲームの世界だ」
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