そんなことが二、三回あったので俺はパターンを把握した。

 宵家に何か良いことが起きると、狙っていたかのように身内に不幸がやってくる。

「あの家族が喜んでいた理由はこれか…!」

 俺は探偵に依頼して、元住民について調べてもらった。

 調査結果はすぐに手元にやってきた。それによれば元住民も、かつては大家族であったらしい。言わば宵家と立場が似ていた。

 そして報告書には、元住民の繁栄と不幸の時期も記載されていた。それはほとんど同時であり、今の宵家と同じような流れだった。

「このままここにいれば、四肢を切り落として宝を得るようなもの…。それでは意味がない!」

 俺は探偵からの報告を持って、家族に進言しようと決心した。


 だが、この洋館の『何者か』がそれをさせなかった。


「オマエ……。コノヤカタヲデルツモリカ?」

『何者か』は、おぞましい姿を俺に見せた。体は人間のようだが、ライオンのような頭、コウモリのような羽、そしてサソリのような尻尾があった。四足歩行をしていて、俺の部屋にどこからとなく入ってきたのだ。

 俺は、恐怖する前に反発した。

「当たり前だ。ここにいれば、家族がどんどん減ってしまう。不幸と抱き合わせの富なんていらねえ」

『何者か』は、怖くなかった。その存在を早いうちに察していたからか、そういうのがいなければおかしいくらいに不幸が出来すぎていると心の中で納得していたためか。

「ソウイウワケニハイカナイ。オマエガデテイクトイウナラ、アシタニデモイッカシンジュウニシテヤロウカ? ドウスル? ニゲテモイイガ、タイセツナカゾクヲヒトバンデウシナイタクハナイダロウ?」

「てめえ…!」

 天秤にかけられないものが当時の俺にはあった。だから俺は折れて、洋館に残る…つまり報告書を破り捨てた。

「アンシンシロ、ミュウシ。ワガスガタヲミタモノニテヲクダスノハ、イチバンサイゴトキメテイル。オマエガサイゴジャナケレバ、オマエニフコウハオトズレナイ。サア、ヨイノイチゾクガホロビルサマヲ、イッショニミヨウジャナイカ」

『何者か』はそう言って、ニヤニヤと笑った。

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