ある時のことだ。競っていたライバル会社が倒産した。それで宵家は莫大な利益を得た。

「羨ましいなあ、美優志は」

 クラスメイトがそう言う。離れた森に住んでいても、そういう噂は普通に囁かれていた。だが俺は、ちっとも嬉しくなかった。

 理由は公にできなかった。宵家の中で、箝口令が発せられていたからだ。

 それは宵家の中の男に問題があった。なんとコイツ、良家との縁談が成立した直後に不倫が発覚したのだ。家中は大騒ぎだった。縁談は白紙に戻されるかもしれず、さらに訴えられそうだったからだ。

 結局、儲かった大金を積んで、裁判沙汰は回避した。お陰で儲けた意味がほとんどなくなってしまった。問題を起こした宵家の男は絶縁され、風の噂が確かなら断崖絶壁から身を投げたらしい。


 今度は逆のパターンを紹介しよう。

 宵家の中でも高齢な女がいた。病院に通いながら寿命を延ばしているような様子だった。だが、普通に運動もできるし話も通じるぐらいには元気なのだ。俺もよく、話をしていた。

 ある日のことだ。その女が突然死した。癌でも脳梗塞でも、心不全でもない、というより俺は、何で死んだのか知らされていない。死因は医者はわかっていたが、宵家には詳しく伝わっていない。

 何故なら時を同じくして、親が買っていた宝くじが大当たりをしたのだ。結構な額が家に入ってくると、誰も女の死を口にするものはいなかった。


 同時の時もあった。

 宵家が出資している系列が北海道にホテルを建設しようとした時だ。近くにエオスという大きなホテルがあって、それが邪魔だったのだが、そう思っていた矢先に、火災で焼失した。犠牲者も出て、そのグループは撤退を余儀なくされた。そして宵家の可愛がっている系列はそこにホテルを建てることができた。

 それと、宵家の若い女が交通事故で死ぬのは、タイミングが重なった。

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