弐
俺の家……すなわち宵家は投資をはじめとするビジネスで金を稼いでいた。だがそれは決して正しい方法と言い難く、時には恐喝まがいのことすらしていた。都合の悪い企業はあの手この手で倒産に追い込み、言うことを聞く会社には甘ったるい飴を与える。もしかすると暴力団とも繋がっていたのかもしれない。まあ今となっては確かめようがないが。
ある時、引っ越すことになった。一族で一番偉いヤツが、都会暮らしはもう飽きたとかぬかしたんだ。だから宵家は、森の中にひっそりと建てられている一軒の洋館を見つけ、元々の住民を追い出して、そこで暮らすことになった。
だがそれは、誤ちだった。
俺だけは、追い出される家族の表情を見逃さなかった。
喜んでいる。家を奪われるというのに、悲しい涙の一滴も流していない。
元住民は逃げるように足早に去っていった。何から逃げていたのか? それはすぐに知ることになる。
俺は、この洋館に『何か』がいることを見抜いていた。実際に目にしたわけじゃないし、特別霊感が優れているわけでもない。だが空気というか雰囲気というか……異常なのだ。
だが、発言権のない俺が何を言っても聞き入れてもらえるはずがない。仕方なく、黙っていた。
ちなみにだが、宵家は洋館に引っ越した時点で、合計四十六人いた。
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