続・その六 栄光と代償の館
壱
「わざわざ海まで越えるとは…。熱心なんだか、馬鹿げてるんだか」
「そこに怪談があるなら、聞きにいくまでさ」
美優志は離島の田舎に住んでいた。友人の親戚がそこに住んでいるから、その家に転がり込んでいるとのこと。高校を卒業してから自力でカメラマンになったんだって。心霊写真はないのかと尋ねたら、そんなものは写さないと言い返されてしまった。
「おい今お前…俺のこと、落ちぶれてるって思っただろう?」
「いやいや。そんな風には…」
正直、ちょっとは感じてしまった。だってこんな田舎に骨を納める気であるらしく、自分の撮った写真が世間の目にとまるようなことは夢にすら思い描いていないって言うから。沖縄に来て首里城やひめゆりの塔を撮影してくれって頼んだら快諾はしてくれたけど、彼には有名になりたいという願望がないようだ。
「これでも昔は、大金持ちだったんだぜ? まあそう言っても誰も信じちゃくれないが」
「そりゃ金持ちだったら、ここで暮らしたりしないだろうね」
「…まあいい。氷威さんよぉ、せっかくここまで来たんだし、話を聞いていけよ。後悔はさせねえからよ」
そもそもそれが目的だ。
俺はこの島に伝わる話が聞けると思ったが、どうやら違うようで、
「今は俺一人、日田家の世話になってるがな。俺の一族はかつて、本土で暮らしていたんだ。よくある金持ちのバカみたいな日常を送っていたさ、それこそ脳みそ溶けちまいそうなくらいにな」
やや自嘲気味に美優志は喋り始めた。
「栄光には代償が付き物なんだ。俺は身をもって思い知らされた」
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