「私は未だに、自分に問いかけることがあるんだ。あの時に正しかったのは、どちらだったんだろうと」

 興児の感じる後味の悪さとは、そこだった。子供たちに何も言い返せなかったことを、悔いているのだ。

「でも、もう奥さんになった人が成仏させちゃったんでしょう? じゃあ正しかったのはあなたたちの方では」

 俺はそう言ったが、興児は深刻な顔で、

「今もどこかに、戦時中の亡霊が存在しているのかもしれない。彼らは危険な存在だが、耳を傾けるべきことを言うかもしれないんだ。思考を停止させて、無理に成仏させることこそ、一番間違っているのかもな……」

 未だ答えを探していた。興児はきっと、自分が納得するまでそれを追い求めるんだろう。

「ところで、せっかく来たんだし、展示コーナーを回ってみてはどう?」

「嫌です。だって私、お経なんて知らないもん。氷威を見捨てないといけない」

「そうか…。六年前は撃退したが、まあ今になって別の幽霊がやってきているかもしれないしな。危ない橋は渡らない方がいい」

「でしょう?」

「おいおい祈裡……。俺が連れてかれる前提で話を進めるなよ…」

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