公美来がかつてまつりに語った呪い。まつりは名前を覚えていなかったが内容は教えてくれた。

「絶対に実践しないことを約束するなら、ここで教えるよ」

「わかった。そこだけ空白にしておこう」

 この呪いには、生け贄が必要だ。それは人以外の赤い血が流れる動物でなければいけない。でも条件を満たしているのなら、猫じゃなくてもいい。鳥でもネズミでも大丈夫だそうだが、体が大きければ大きいほど効果があるという。

 まず生け贄の血を抜く。抜いた血はビンか何かに保存しておく。入れ物であれば種類は問わないらしい。

 そして生け贄の死体の四肢と頭、尻尾を切り落とす。残った胴体は呪いたい人物の数になるように切り分ける。

 最後に穴を掘って、生け贄の体とその他の部位を全て埋める。穴は土以外の物で蓋をする。容器に入れた血は、四十九日後に入れ物ごと燃やす。

 これが呪いの全行程だが、四十九日が来る前に誰かに生け贄を発見されたら、自分に呪いが返ってくる。過ぎた後に生け贄を発見するのもよくない。その人が呪われる。


「当時僕とまつりは、生け贄の呪いと名付けていた。公美来は二つの呪いを同時に行なっていたんだ。表には出さなかったけど、それほど里親とその息子たちを恨んでいたんだろうね」

 普通なら、悪口の一つぐらいこぼさずにはいられないはず。でも公美来は呪いを行ってから明らかに元気になっていった。僕が不思議でたまらなかったのは、罪悪感や後ろめたい気持ちを公美来が微塵も感じていないことだった。

「僕は丑の刻参りを見てしまったし、まつりも生け贄の呪いを見た。でも公美来が呪われるようなことは起きなかった。まあ非科学的と言えば、そこまでなんだけどさ…」

「効果はどうだったんだい?」

「あったんだ。信じられないだろうけどね」

「それは……どんな風に?」

「それも教えるよ」

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