捌
「だから言っただろう? 一番怖いのは人間だ。私は真壁と同じ、自分のためなら他人なんてどうなってもいいと考えている、自分勝手な奴だ。ある意味、一番人間らしいのだがな」
福田はそう言った。氷威は、
「でもその話が本当なら、俺が警察に通報したらあなたは、逮捕されるのでは?」
脅そうと思ったわけではない。氷威としては、仮に本当なら色々とやばい気がするのだ。
「証拠がないよ。私が2人に嘘の道を教えたと、何で証明するんだい?」
福田の言葉に、氷威は黙り込んだ。録音もしてないんじゃ、彼の言う通り証拠にすらなりえない。
福田へのインタビューはそれで終わった。
「…………」
ところでこの話、なぜ没にしなかったというと、ちゃんと理由がある。それはさっき届いたメールだ。
メールの送り主は、
主人から話を聞きました。
私と主人だけの秘密です。
疑わせません。だって本当のことなんですから。
メールの内容は要約するとそんな感じだ。福田が奥さんに、氷威に話したことを教えたところ、氷威が信じてなさそうだったから、奥さんがメールを出したと思われる。
「待てよ?」
亀井は例のホテル火災の前に、福田と一緒にホテルを探索してたはずだ。
亀井が真壁たちを見かけたのは、福田に違う道を教えられた後。
「見かけたときに、間違いを指摘しなかった?」
あの時、真壁たちは亀井の存在に気がつかなかったらしい。でもそれは、福田が実際に目にしたことではない。福田が、亀井から聞いただけだ。
友人とすれ違っても無視したのか? 緊急事態でも? 真壁はそれに対処できるはずなのに?
「もしかして、亀井はホテル火災で真壁たちとすれ違った時に、少し話をしたんじゃないか? 福田を探しに行くとか」
加えて、逃げ道は間違っていないと、言ったんではないだろうか。
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