何で自分が助かったのか、福田には記憶がない。真壁が気まぐれを起こしたのかもしれないし、自分は生かしておく計画だったのかもしれない。

 憶えていることは…真壁の立つ足元には、3人の死体があったことと、偶然にも本当にオーロラを見ることができたことぐらい。

「ここに埋めておけば、雪が解けたらクマの餌にでもなるだろうよ。もしかして、冬眠できなかった奴が明日にでも食っちまうかもな」

 真壁はそう言って、死体を埋めた。

「このことを誰かに言ったら、わかってるよな?」

 脅された福田は、誰にも何も言えなかった。

 オーロラの包囲下で、福田は自分も犯罪者のように感じたことが頭のどこかに引っかかっていた。


 その後の大学生活は、酷いの一言に尽きる。

 目的を果たした真壁は、谷川と付き合うことになった。口が上手いことにあの一件、伊藤は角野と浮気をしていたとか、大嶋にバレたので彼を殺したとか、逆上した角野も手にかけようとしたとか…。流していた噂のこともあって、谷川は伊藤の死を悲しむことができなかった。いや、落ち込まないように真壁が常に谷川の側にいた。

 福田は、友人を失った。そして真壁に、誰にも漏らさないよう監視される生活を送ることになった。亀井が自分に告白してきたのも、真壁の差し金だろう。断ったら…。その先を考えられず、福田は頷いた。

 だが亀井と一緒にいることは、必ずしもマイナスには働かなかった。亀井は優しく接してくれたのだ。

 福田がどうしても耐え切れず、あの日の真相を亀井に教えてしまった時も、亀井は黙っていてくれると約束してくれた。

「他にも秘密があるのなら、言ってよ。2人で共有しちゃえば、怖くないでしょ?」

 亀井のその台詞に、何度救われたことか…。真壁の目が光る中、彼女の存在は大きかった。

 当初は冷めた目で見ていた福田だったが、次第に亀井に対し好意を抱けた。そして大学卒業後、三年間同棲してから結婚したのだ。

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