弐
福田祥彰は真面目に勉強し、高校大学と進んだ男だった。しかしある欠点があった。それは、心が弱いこと。幼いころから驚かされると泣き出したり、何かあるとわかっていても怯えたり、勇気が出せなかったり…。それで損したことは何度もあった。
福田の成績を考慮すれば、もっと偏差値の高い大学を受験しても合格できただろう。だがそれはしなかった。もし受験当日、わからない問題が出題されたら…。もし受験に落ちたら…。そんな小さな不安が、彼にとある大学を受験させ、そこに進学させた。レベルが低いのなら、講義についていけないこともないだろう。だから彼は考え直すことがなかったのだ。
その選択がなければ、福田はまた違った道を歩めたかもしれない。
福田は進学した大学で、とあるサークルに入った。やりたいことがあったのではなく、中学高校と過ごした友人がそこに入ると言ったからだ。先輩ができれば、過去問も手に入るだろうと当初は思っていたらしい。
「
その友人は伊藤といい、進学後すぐに彼女ができたほど容姿が良かった。
「福田もそんなことないと思うぜ?」
決まって伊藤はそう返す。
二人は特別仲が良かったわけではない。福田は伊藤のことを親友だと思ったことはなかったと言っており、伊藤の方も自分のことはただの友達としか思ってなかったんじゃないかとも。
けれども他に知人がいない場所では、その存在は大きかった。小心者の福田にとっては、頼らない理由がないほどだったそうだ。
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