第52話
「この煎餅はなかなか美味いな」
犬を片手にパリポリ香味野菜煎餅を咀嚼するボス。描写がおかしい気がするけど、見たままだからね。
「セグおすすめ 煎餅」
「ほほー、他の味も試してみたい。取り寄せよう」
それにしてもテーブルの上が何だかカオスだ。
ムスターファはフィナちゃんに構われて満更でもなさそう。ラティファはカイくんに何かを伝えようと不思議な踊りを披露している。何か伝え忘れたのかな?
私の傍に残っているのはラドだけで、イシャルに至ってはミリィアさんと台所へ行ってしまった。
「あの、太史様。本当に良いのですか?」
謎の踊りを解き明かす事を諦めたのか、カイくんがボスに問うた。
さっきお煎餅を堪能しながらボスが仰たのだ。「いちいち影に話を聞きに行くのも面倒だ、金霊の言葉を聞き取る方法を模索する間に金霊が文字を覚えれば良いではないか。 込み入った話以外は筆談で充分だろう。そうだな、私が教鞭を取ろう」ドヤァって感じでした。時間が引き伸ばされるって聞いたから影に行きたくてしょうがないのでしょうね。
後、これで私について詳しく聞けると喜んでらっしゃいました。
もしかしたら一緒に入れば話が通じる?! みうが来れたのなら人の影でも入れるでのでは?! っとボスとフィナちゃんのテンションが上がった所でサックりカイくんに否定されてました。カイくんも同じことをラティファに言って無理だと言われたらしい。
人間2人はキャパオーバーらしい。
でも何か自分のいない所でガッツリ自分の話をされると思うとゾワゾワするね。
「ん? 金霊に文字を教える事か? 勿論良いぞ。色々聞きたいこともあるし、気になることもあるのでな。それに、持ち込みで積んである書物を読ませて貰おうかと思っているところだ 」
「私も術祝の研究を……「だめ!」」
フィナちゃんがバラ色の頬に手を添えて、夢見る瞳で言いかけたので慌てて遮る。ダメなの? って顔をしたフィナちゃんに近付き、耳元で「人より はやく ふける可能性ある。サヒラー様見る、確かめる」っと呟いた。
呆然とするフィナちゃんの肩を叩き、頷いて席に戻る。白雪姫の美貌は守られるべき。
おっさんには関係の無い話だから、気の済むまで潜ればいいんじゃないかな! 肉体も行ってるっぽいからダメだとは思うけど、もし脳内だけの加速なら是非とも活用したい。ボスには判断がつくほど短期間で長時間潜って貰わねばなるまい。クックック。
私が抑えきれないイヤらしい笑みを浮かべて居ると、カイくんボスに注告した。
「突然長時間潜るのは危険かと思われます。あれだけ時間がズレるのですから······」
ちっ、ボスなら10時間は潜ること間違いなしだと思ってたのに! でも、 人の400倍の速さで老けるかと思うと恐ろしいね。
あ! でも私影の中で半日位の時間過ごしたけど、ご飯食べてなかった。トイレもしてない。
夢の脳内加速系?!
「私、影のなか たべる してない! トイレ
してない! 」
「なんと! それは面白いな」
「まぁ······」
フィナちゃんがレディがトイレを宣言するものではありません、と言うようなことを耳元で囁いた。気にするところそこ?
老けずに人の400倍の時を過ごせるかもしれないんですよ!
「では、早速試してみよう」
マロを解放し、書斎へ向かったボスが十数冊の本を持って戻ってきた。対話も忘れないでね。
「太史様、影の中では戦闘になる事もあります。武器も持って行かれるべきかと。あと、やはり最初は長くとも四半時程で戻ってきては頂けませんか?」
「ふむ、留意しよう」
「イシャル、つれてくる」
手にガブガブするマロをぶら下げたまま、台所へイシャルを呼びに行く。
ティネットさんとミリィアさんに囲まれて、アクロバットを披露するイシャルを確保した。
「イシャル、サヒラー様のお供 する」
「そうなのですか、イシャル君頑張ってね。太史様を宜しくお願いします」
「イシャル、気をつけてね」
掌の上で手を振るイシャルを連れて、ダイニングへ戻るとパールパーティがボスの前に整列していたので彼を並びに下ろした。
手に喰いついたマロを指さして何か叫んでいるので、マロも振り落としてみる。マロも連れていくの? 役に立つのかな。
ムスターファが紐を出してマロの首に括りつけた。
「太史様、お気を付けて。ラド、ラティファ、ムスターファ、イシャル太史様の事、任せましたよ。お守りしてください」
「お気を付けて、時を忘れ無いようにお願いします」
心配そうにボスを見つめるフィナちゃんとボスの行動を心配するカイくん。
整列したパールパーティが誇らしげに見える。
『皆、ボスの事宜しくね。好奇心旺盛でもふもふ好きだから気をつけて。何かに夢中になったら、時間が過ぎても居座ろうとするだろうけど連れて帰ってきて』「サヒラー様、お気を付けて」
「良いかな? では行ってくる。フィナ、そなたの問題も解決出来るかもしれぬ。詳しく聞いてくる」
私の言葉に頷いて、進み出たラティファが何かを唱え杖を振るとボスが影に吸い込まれて消える。
次々に影に飛び込むパールパーティ。最後に私に向かって来ようとするマロを引っ張ったムスターファが飛び込んだ。
「行ってしまいましたね」
「時を忘れず、ちゃんと帰ってくると良いのだが」
胸に手を当てて心配そうに呟くフィナちゃん。潤んだ瞳に震えるまつ毛も麗しいです。
「大丈夫! 金霊達 サヒラー様 守る」
ボス強そうだしね。
それにしても、フィナちゃんの問題って何なんだろう?
湖畔の私へ 炬燵猫 @cotatuneko
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