第49話
「おか……えり?」
首を傾げて動きを止めたフィナちゃんが言った。何で疑問形?
「私消える、する……心配かけるしてなかった?」
フィナちゃんがハッとして違うというように首を振る。
「いや、勿論心配してたわよ。影に消えたんだもの。線香が燃え尽きるほども無いほどの間だったけれど……。時間短い、これ、燃える 時間」
え、そんなもん? それって5分とか10分とかだよね? そんなはずない。
中腰で固まったままのカイくんを見ると同意するように頷いた。
「そうだ、ユウナが影に消えてそれ程しか経ってない。影が消えずに残っていたので、此処から入れるのかとソラを大史様の元へ使いに出そうかと相談していた所だった」
座り直したカイくんが言うのを待てない様子で遮ったフィナちゃんが私に訊ねた。
「その足元の小さい犬は何なんですか? 怒っているように見えますけど」
「この子マロ、マロはなし長いはなし」
私の答えを受けてフィナちゃんはおデコに手を当ててハァーっと大きな大きなめ息をついた。
「ええ、それは長い話でしょうね」
呆れた様子のフィナちゃんが私の足元のマロを指で突く。白魚の様な指に良いようにあしらわれるマロを見ているとその長い話がどうでもいい話になって行く気がした。
「何だか一瞬で疲れてしまいました。長い話しならこんな所ではなくて、菓子でも買って帰ってお茶を飲みながら聞きたいものです」
「うん、家に帰る。カイありがとう」
「いや、俺も行くぞ」
え、来るの? 別に良いけどさ。
パールパーティの造作について思うところがあるからあんまり来て欲しくなかったんだけどな。
まぁ、でもカイくんなら第1村人だし、お世話になってるし理解出来る話だからいいのよ。問題はお兄様ですよ。
るるちゃんのが仲良いのに、頭突き位しか接点のないお兄様雛形のムスターファが居るのを知られるのが恥ずかしいというか……。
うん、普通に恥ずかしい。めちゃ恥ずかしい。
「分かった、みんな帰る」
風呂敷を畳みながらそう告げると、立ち上がって体を伸ばしたフィナちゃんがみうを指差して言った。
「とっても可愛らしいですけど、アレは凄く目立つと思いますよ」
みうの肩にしがみつくパールパーティ。
お前らもう問題なく隠遁出来るんじゃなかったんかい。なにちゃっかりみうに乗り直してるのよ。
『それ目立つから、隠遁してくれない? もう問題ないんでしょ』
ラティファが何か言ってるけど早送りみたいで聞き取れない。
『ごめん、分からないや。お家に帰ったらボスにその辺も相談してみよう』
フィナちゃんは大体みうは家に居たはずなのにと呟きながら首を傾げている 。あ、それは私にも答えられないわ。
空気を読んだのかみうがパールパーティを乗せたままあっさりと影の中に消えていった。
助けに来てくれたんだから、当然出来たはずなんだけど改めて見ると感動する。みうにこんなスキルがあったなんて!
道場から出た私達はアルワァと言う名のお菓子屋さんでフィナおすすめの甘味とセグさんおすすめの乾き物を買い込んで家に戻った。
パールパーティが出て来たのが今日の朝の事だったなんて信じられないよね。2·3日ぐらいは一緒に居た気持ち。
うちに帰るとミリィアさんが出迎えてくれた。相変わらずほっとするいい笑顔です。
お菓子を渡し、お茶の用意をお願いしてダイニングに入ると既にみうとパールパーティが待っていた。セグさんは席に着くのを遠慮したけど、偉大な発明家でもありボディガードもしてくれるセグさんには居てもらわないと困る。
お行儀は良くないかもしれないけど、パールパーティはテーブルの上に風呂敷を広げて乗せた。足元だと色々不安だし、これから話すことの当事者な訳だしね。
「っと、パールパーティ夢の中影の中、私パーティ組む、してた。左から、ラド、ラティファ、イシャル、ムスターファ」
「あら、朝は全身真珠色だったのに今は瞳に色がありますね。表情が分かりやすくなった気がします」
だよね! 瞳が有るだけでだいぶ違って見える。頷いて同意するも、伝えれる気がしない。自分の語彙のなさにイライラする。ずっと影の中で日本語で話せてたからこの不便さを忘れてた。
「私、小さくなる。パールパーティ話分かる! 大きくなる話分からない」
「小さくなると通じるのか? 不思議だな」
そうなんだよね。でも、影の中だけかと思いきや出て来てからも話せてたもんね。
「パールパーティ、大きい 私のことば 分かる。私、大きい とき パールパーティの言葉分からない」
あー、イライラする! 舌噛みそう。
私が久しぶりのくむくむ語に苦戦しているとミリィアさんとティネットさんがお茶と器に盛られたお菓子を持ってきてくれた。
糖分! 糖分!
「ありがとうございます」
あー、お茶が美味しい。ほうじ茶って落ち着くよね。ちょっと甘いものを食べて落ち着こう。
1度下がったティネットさんがパールパーティの分と思われる小さくカットしたお菓子を小さなお善に乗せてきて「宜しいですか?」っと聞いてきた。
食べれるのかな? 分からないけど、いいんじゃないかな。
私が頷くとティネットさんはいそいそとパールパーティの前にお善をセットした。どこにあったのか凄い小さいサイズの湯のみにお茶を入れてやって来たミリィアさんと、楽しそうに給仕をしている。
ん、マロが居ない? マロは元気に私の足を攻撃してますよ。
ティネットさんってもふもふ大集合辺りから大分イメージ変わったよね。コレが素なんだろうね。甘味を頂きながらほのぼのしていると、じーっとパールパーティを見ていたミリィアさんが呟いた。
「あれ……? 何だかこの変な格好をした子うちの子に似てますね」
ぎゃー! 止めて、その話は危険よ!
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