第38話

 

 一面の若々しい緑。

 目の前には後ろ足をダンッダンッと踏み鳴らす、お怒り気味なパンダウサギちゃんがいる。強靭な後ろ足から生み出される衝撃で、地面が揺れる。


 やばいよこの揺れ方。可愛いけど、蹴られたらバイ〇ンマンみたいに飛ばされちゃう。


 巨大な兎がたまに回りながら足を踏み鳴らす様子を呆然と見ていたら、ラドが「よろしいですか?」っと聞いてきた。


 何がですか? このうさちゃんをぶち殺して良いですかって事?

 それも勇気がいるけど、倒せるのかと疑問なほどでかいんだけど。兎の前歯の鋭さ舐めたらあかんよ。


「向こうが来るんだったらしょうがないよ。でも倒せるの?」


「これぐらいの兎なら戦ったことがあります故、問題ないかと。ラティファの位置まで下がってください」


 兎から目を離さずに告げるラド。

 バイバ〇〇ーンって飛んで行くのは無しね?


 ラティファ隣まで下がる。うーん、ゲームならここでバフ掛けるんだろうけど分からないな。有るならHPとMPリジェネ位は掛けてあげたいところだよね。


 目の前で威嚇キックをする兎の迫力に圧倒される。あんなの当たったらお星様になっちゃうよ。


 ラドの盾は曲線のある大きな盾で、カイト型タワーシールドってところかな、下が尖ってる。

 ラドが小手で盾をガンーンと叩き、片手剣を腰に差したまま声を上げた。


「さぁ、来い!」


 その声に誘われたのか、盾を叩くのが挑発になったのか、兎が凄い勢いで突っ込んできてクイックターンと同時に凄まじい両脚蹴りをかました。

 受けると見せかけて体を返したラドが、振り向きざまに片手剣で胴をなで斬りにする。


 私達の前には刀を構えたイシャルが立っていた。もしもの時のために居てくれてるのかな?


 兎が突っ込んで来ないのを見たイシャルが

 シュッっと札を投げると、空振りした兎のお尻に火が爆ぜた。遁術も使えるんですね。


 驚いて飛び上がった兎がゴロゴロ転がって火を消す。可愛い尻尾の毛が焦げた程度で、火遁の威力は低そうだ。

 でも火が点いたら放ってはおけないし、十分使えるね。


 ラドが、盾を鳴らして挑発する。


 イシャルが横に廻り込み攻撃を始めた。 


 いつの間にか、その少し横に廻っていたムスターファが矢を放ち、真っ直ぐに飛んだ矢が兎の首元に突き刺さる。


「切り裂け、ウィンドエッジ!」


 腹の底から響くような声でラティファが唱えると、かまいたちのような風の刃が兎を切り裂いた。


 ぷーぶー鳴いた兎が血に染まった体を振ると、飛び散る血に混ざって鋭い棘のような毛が飛んで来くる。やばい!


 六角形の光が瞬き針が弾かれた。


 針は全方位に飛んだ。

 ムスターファは体をマントで覆いしゃがむ事で難を逃れ、近距離に居たイシャルは交差した腕と肩口に針を受けていた。


 こ、この兎なんか必殺技使うじゃん!


 時間あったんだから、最低でも前衛遊撃のイシャルには障壁を張るべきだった。


「イシャルを癒し給え」


 ハタキをイシャルに向けて唱える。薄らと緑色の光がイシャルを包む。

 ほんとにお願い先指定しないでも発動するんだ。マーベラス!


 怒り狂った兎が歯を向きながら向かってくる。


「ラドに減殺げんさいの障壁!」


 光が瞬き盾を構えるラドを包む。

 ラドが盾を地面に突き立てた。


 いなすのでは無く受けるつもり? あのサイズの突撃に耐えれるのかな。


 飛び上がりながら向かってくる兎。


「乱れ打ち」


「弾けろエアバレット!」


 ムスターファが、兎の側面に矢の雨を降らせ、ラティファの放った風の弾丸が兎の顔面に炸裂した。

 

 巨大兎を正面から受けるラド。耐えて!



 光が瞬いて兎とラドが激突した。



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