第34話
ご飯を食べて、ボスが満足いくまでパールパーティを調べるのを見届けてから私は問いかけた。
「エル、地霊消えた。これ、消えない?」
そう、消せないと色々問題がある。今日は学校はない日だけど、パールパーティ連れてゾロゾロ町を歩くのを考えるとね。
それに、出したり消したりしてたエルちゃんの出した地精は叩き潰されても復活してたけど、こいつらはどうなの?
「あれはそれこそ術を使っている間だけ具現化しているのだろう。そなたのとはだいぶ違うと思うが」
ボスは少し考え込むと、ぽんっと拳を掌に打ち付けながら言った。
「エルの地霊は術で出しているが、ユウナの金霊はエル自体のようなものだ」
なんですと!
「っと思われる」
確信ないのかい!
うぬぬ、それが正しいならパールパーティのレベルが上がって隠遁を覚えるまでこのままってこと? いや、レベルがあるのかは知らんけどさ。チビは元々出来てたみたいだけど、エルちゃんとハルちゃんはどうなんだろう? 大至急聞きに行かねば。
「まぁ、もう暫くしたら扱い方も分かるようになるのではないか? 色々試してみるといい。勤めから戻ったらまた調べてみよう」
ビクッとするパールパーティ。え、言葉わかってるの?
仕事に出掛けるボスを皆で見送ってから、パールパーティと睨めっこしているとフィナちゃんが聞いてきた。
「ユウナはこれからどうしますか?」
何時もなら、朝ご飯の後にフィナちゃんが2時間授業をしてくれるんだけど、ちょっとこいつらが気になってね。明日こいつら連れて学校に行くのかと思うと不安でしょうがない。
「何ならあの三人を訪ねてみますか? どなたかは鍛錬場にいると思いますよ」
悩んでいるとフィナちゃんが素晴らしいアイディアをくれた。
そうだね、ここで悩んでてもしょうがない。先人達にLvの上げ方を聞いてくるのだ。目指せスキル獲得!
「会う、行く! ありがとう」
フィナちゃんが一緒に来てくれるらしいので、着替えてからセグさんを待って出発する事にした。ボスは私が何処に行くにも誰か人をつけるので、フィナちゃんも気を使ってくれたみたい。この世界の治安はそんなに悪くない気がするんだけどね。まあ、世界一平和ボケした国から来てるから、自分の感覚に自信はない。
部屋に戻る時、試しにパールパーティに「待て」っと言ってみたら何と聞いてくれた。
あれ、これ出掛ける用事半分ぐらい消え去ってない? だって待てして学校行けるよね、っと思いながら着替えていると戸を開けてパールパーティが部屋にやって来た。戸を開けれるなんて力持ち過ぎないか? カブトムシレベルだね。
そして待てなかったんだね……。
ダイニングへ戻るとティネットさんとミリィアさんが二人でお掃除をしてた。
ここは書斎の向かいで、座りやすい椅子とテーブルがある。結果、勉強する時は何時もここでしているので、掃除するタイミングが難しいんだろうね。だから最近は食後部屋でちょっとゆっくりしてから戻ってたのに、すっかり忘れてた。
ここで手伝おうとしてもティネットさん、が
以心伝心は出来なくても言葉は分かる様になるかも。日本語を覚えてくれたら最高だ。
『パールパーティ』
取り敢えずパールみたいな質感だから正式にこう呼ぶことにする。呼んでみるとパールパーティはビシッと姿勢を正した。む、なんかビリッとしたよ。名付けると通じ合うとかある?!
心の中で回れーと念じる。動かないパールパーティ。そんなもんよね。
『右向けー右!』
わたわたしながらも右をむくパールパーティ。
あれ、これどう言う事? 日本語で言ったのに即通じたよ。テレパシー出来てるんじゃないの!
心の中で手を上げろーと命じてみる。
微動だにしないパールパーティ。うぬぬ、分からぬ。
「前もどる、手、上げる!」
金霊同士でヒソヒソしながら前を向いて手を上げる。どういうこと? 何ヒソヒソしてるの。お前ら話せるの?!
『手を下ろして右足あげる!』
サッと手を下ろして右足を上げるパールパーティ。んー、日本語の方が伝わりやすいって事かな。どっちでも良くて熟練度の問題なのかも?
横をむくと、掃除の終わったティネットさんとミリィアさんがキラキラした目でパールパーティをガン見してた。
あれ、ミリィアさんさっきは怖がってたよね。
「ユウナ様の使い魔ですか? 綺麗な色で可愛いですね」
ティネットさんや、昨日これの色違いぶっ殺してなかったかい?
「分からない、朝おきる、こいつら居た」
「そんな事もあるのですか? 不思議ですね。でも、ちまちま動く姿を見ていると可愛らしいものですね」
ミリィアさんも同意する。
「私も朝見た時は怖かったのですが、先程ユウナ様に置いていかれて、おろおろしながら待っている姿を見てから可愛く見えて来ました」
結果、待てなかったしね。
二人が見守る中隊列訓練をしていると、フィナちゃんが風呂敷を持ってやって来た。
「お待たせしました。もう大分動かせる様になったのですね」
ねー、まさか日本語でも良いとは思わなかったよ。
「かねだま、言葉わかる」
「その様ですね、でも町を歩くのにそれを連れていると目立つので、袋に入れていきましょう」
まぁ、そうだよね。それを回避するためにアドバイス貰いに行くんだもんね。
「分かった、おねがいします」
三人であーじゃないこーじゃないと相談しながら大きな風呂敷のいろんな所を結び、斜め掛けのバックにしてくれた。
斜めがけにして金霊達を入れてみる。うわ、こいつら重っ。テーブルから下ろす時も思ったけど、4体同時に持つと中々だね。
「みんな、ありがとうございます」
今日はボスも山登りの日だし、どうせお昼は別のことが多いから、折角なので外食する事にした。
楽しみー。外食は初めてではないけど、この前のは高級店過ぎてなんか違うんだよね。こう、屋台飯とか、手頃な庶民の味を味わいたい。
セグさんが来たので直ぐで申し訳ないけど、付き随いをお願いしてイザ出発。
「家の事宜しくおねがいします。行ってまいります」
「いってきます」
くぅ、フィナちゃんの挨拶若奥様みたい。
フィナちゃんとお出かけ楽しみだな。鍛錬場は何処なんだろう? ご飯は何が食べれるかな。
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