第33話

 

 夢から覚めたら、枕元に夢に出てきたくねくねが居た。


 ど、どういうことだってばよ。


 15cm位でパールみたいにマットに光ってる。夢で見た通り、盾に忍者? に魔法使いに狩人あれ?5人いた気がするんだけど……思い出せないな。

 って、人数なんてどうでもいいよね? 枕元に夢で見た謎のくねくねが居ることに比べたら些事だよね!


 枕元にじっと佇むくねくね。

 エルちゃんが出したやつは出たり消えたりしてたけど、これは出っぱなしなのかな?


 よく見るとなんか個性豊かで面白い。盾はヨーロッパ系の重装備プレートアーマーを着込み、魔法使いもローブに背丈ほどもある大きな杖で、完全にくむくむ星の世界観をぶち壊してる。かと思えば短刀か忍刀を二刀流にした遊撃手はまさに忍者って感じだ。狩人は……どっちかな?どっちつかずな感じ。


 これって私の夢から出て来たのかな。だからこの世界に喧嘩売ってるの?

 アミルくんのパクリだけど、テイストは大分違うね。向こうは完全な人型じゃ無かったし。


 取り敢えずみうを起こしてみる。みうが出したのかも知れないし、動かしてみてほしい!

 絶対起きたのに、二度寝を決め込んでいるみうのお腹に顔をグリグリ擦り付ける。頭に両手両足を突っ張り抵抗するみう。これ嫌なんだよね、うん、知ってる。


『みうがこれ出したの?』


 くねくね達を指さして聞いてみる。「にゃー」あ、うん。分からないね。

 ボスが言ったようにイメージを伝えようとしてみる。


 動かせー、食卓に行くのだー。


 微動だにしないくねくね。

 どうやら、私達の関係はペットと飼い主から1歩も動いてないらしい。残念です。


 諦めてとにかく顔を洗おうと洗面道具を持って部屋を出ると、くねくねパーティが着いてきた。


 こ、コイツら動くぞ!


 えーっと、みうはまだまだベットに居るから、私に着いてきてるんだよね。私が主ですか? そしてミッションもないのに出っぱなしなのは何故ですか? そのMPは何処から頂いてるのですか?

 謎は尽きない。早く身支度してボスに報告しなくては。


 急いで中庭の井戸に行き顔を洗う。当然のように着いてくる光り輝くパーティ。解せぬ。


 食卓へ行くと既に向かいの書斎で書き物をしているボスを見つけた。


「おはようございますサヒラー様、これ何?」


「おはよ……う、何だそれは?」


 ボスが驚愕と悦びに満ちた目を見開く。


「こいつらの夢みた。おきる、する。こいつら、居た」


「夢で……昨日アミルの地霊を見たせいか?」


「きのうねる前、エル、アミルかんがえる、した」


 エルちゃんのあのうねうねって地霊なの? じゃ、この光り輝くヘンテコパーティも何かの精霊?


「面白いな」


 ボスが早速ヘンテコパーティを捕獲して調べ始めた。テーブルに置かれ、わたわたと逃げ回るパーティ。枕元では動かなかったのにね。


「おはようございます。大史、ユウナ」


 フィナちゃんおはよう。昨日長風呂したおかげか透明感二割増しだね。一段と麗しいです。

 あ、これ? なんかわかんない。夢に出てきて、起きたら居たんだよね。謎だよね!


 フィナちゃんが顔を引き攣らせながら書斎から何か紙を持ってきた。昨日もふもふ達に使ってたでっかい御札だ。

 フィナちゃんが御札の上にナイトを立たせる。ボスからは逃げ惑ってたのに今は大人しく立っている。きっと解体されると思って逃げてたんだね。


「凄い呪力効率、ごんかのとです。綺麗な色、不思議な格好をしてますね」


 何を言ってるのかさっぱりだけど、褒められたのは分かる。良かったね、ナイト。


「ユウナ、これを動かせるのか?」


「できません」


 勝手に着いてきただけで、意思の疎通とか出来ないの。私の言葉に目を輝かせてパーティを見つめるボス。何でそれで嬉しそうなの?


「おはようございます皆様、お食事の用意が出来ました」


「おはよう」


「おはようございます」おはようございますミリィアさん。テーブルの上がとっちらかっててすみません。今下ろしますね。

 降りろと念じてみるも通じるは筈も無く、捕まえて下ろした。ボスと違って逃げられないから直ぐだけどね。


 ミリィアさんがパールパーティに怯えながらも配膳をしてくれた。いつの間にかみうも、ちゃっかりお座りしてご飯を待っている。


 今日の朝ごはんはキビご飯のお握りにカブのお漬物青菜のお浸しにお味噌汁! お味噌汁だよ。やっぱり味噌あったんだよね。完全にスパイスプラスの和食だったから絶対あると思ってたよ、神に感謝を。

 やっぱこれだねと言う安定の美味しさだ。


 ボスはご飯の間中あいだじゅうそわそわとパールパーティを見つめていた。本当はご飯なんて後にしたかった位なんだろうね。


「しかし面白いな、なんと呼ぶのがいいか……その金霊かねだま達はやはりユウナが出したのだろうか?」


「起きる、かねだま?居た」


 残念ながら、おきたら居たから私も何が何だか分からないよ。


「夢に見たと言うことですが、どんな夢だったのですか?」


 フィナちゃんが小首を傾げながら言った。

 うーん、私の今の語彙であの夢の激戦を語れるとはとても思えない。


「かねだまと、くま、戦う。かねだま、戦略すごい! みう、私おうえんする」


 残念すぎるパールパーティーに申し訳ない。


「かねだま達、すごい!」


 これだけは言っておく。

 パールパーティは私の足元、みうのすぐ側で待機している。いざ戦闘になったら、あんなふうに戦えるのかな? この大きさじゃ、猪や犬さえ超強敵だよね。


「ごちそうさま」


 早々にご飯を食べ終えたボスが立ち上がると、パールパーティは散りりに逃げ出したのでした。


 なんか学習してるよね? まさかのAI式かな?


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