第32話
フィナちゃんに呼ばれた私は軽くパニックを起こしていた。完全裏方の気持ちで活動してたからね。
ぎこちない足取りで広場へ向かう。
「みう」
「にゃー」
みうが何時もの調子ででスリスリしてきた。宜しく頼むよ、相棒。
「ではユウナ、あの的に攻撃するように命じてくれ」
皆は以心伝心テレパシー出来るみたいだけど、私達は極々普通の飼い猫飼い主Lvなんだよ。命じるね……。
「情景を思い浮かべてみるがいい」
大事なのはイメージって事ですね。えーと、的に攻撃。
猫じゃ切っても真皮までだからなー、物理は諦めてやっぱり魔法だよね。みうの属性ってなんだろう。分からないから取り敢えず攻撃ーってイメージしてみよう。的が遠隔で倒れるイメージ。イメー······ジ。
『みう、的を魔法で攻撃してみて』
明確にイメージするのを諦めた私は、みうにお願いした。みうは優雅な歩みで的へ向かって歩いていき、スリスリと体を擦り付けた。
ええ、分かってましたとも。むしろスリスリはみうの必殺技と言っていい行為。半分ぐらい意思は伝わったんじゃないの?!
みうの攻撃は辺りにほのぼのした空気をもたらした。
「あー、ならそうだな。チビかハルの時の事を思い浮かべて命じてみたらどうだ?」
イエッサー。みうを呼び戻し再び命じる。チビとハルちゃんの魔法の感じ······。
『みう、撃って』
風が巻き起こり、バンッと音がして的が倒れた。
みうが尻尾をバシッと叩きつけると、風が起こって的が倒れた、んだけど……これって成功? 魔法か物理かよく分からないんだけど。
まぁ、尻尾叩いた位であんな風起きるわけないから魔法なのかな。
「うむー、まぁユウナとみうについては追い追い調べる事としよう」
ボスも納得がいかないらしい。私とみうの初舞台は微妙な結果となった。
落ち込んでは居られない、もふもふ達におやつを提供しなければ。
ボスとフィナちゃんにお礼を言ってから、フロア主任のミリィアさんと台所へ向かう。テーブルには既に、見た目も美しい五枚の皿が用意されていた。
魔獣によって食べる量が異なると思われるので、配膳ミスは許されない。ミリィアさんにエルちゃんとハルちゃん用の皿を持って行ってもらう。後は大·中·小で小はソラちゃんの草食用のひと皿だ。
もふもふ広場に戻り、中心に皿を並べ広場の守役と手分けして魔獣をそれぞれのお皿の前に誘導する。
肉食派には~皮と軟骨の煮こごりに地鶏の足を添えて~
草食には~早採れのビワにスダジイの団栗、花の種を添えて~
雑食にはハーフハーフをご用意させて頂きました。ティネットさんの力作をご堪能あれ。
ここでご来賓の皆様にも冷えたイチジクをお出しする。イチジクって見た目があれだけど美味しいんだよねー。
イチジクを食べながら魔獣の能力についてや、可愛らしい仕草の事を奥様とるるちゃんとお話しした。奥様はもふもふに夢中で、るるちゃんはティナちゃんに夢中だね。うんうん、今日のティナちゃんはかっこよかったもんね。あ、るるちゃんは今日も可愛いよ。
その後、ボスとフィナちゃんが話し合いながら追加で何回かテストをしてもふもふ大集合はお開きとなった。
追加テストの時のアミルくんエルちゃんコンビが凄かったよ。3対3での戦闘シーンは中々の見ものだった。昔ハマってたゲームを思い出したね。欲を言えば6体で戦うところも見てみたかったな。
後、最初に登場して派手な氷雪をぶち立ててから空気だったチビとワラドくんも追加のテストでは多彩な技を見せていた。アイスダスト的な技とか綺麗だったよー。
それにチビは全く全力じゃないみたいだったしね。
カイくんとハルちゃんは時間が押して、細かいテストはまた今度ということになった。ボスの食いつき的にも絶対長くなるしね。
総括すると、もふもふ大集合は大成功だったと言っていいと思う。
◆◇◆
その日の夜、達成感と快い疲れに酔った私とフィナちゃんは近所の銭湯に行くことにした。ボス家のお風呂にも湯船はあるけど、準備が大変なので何時も蒸し風呂なのだ。
ティネットさんが来てからは週に2回はお風呂を沸かしてくれるんだけどね! でも今日は湯船デーじゃ無いから、昔フィナちゃんと行ったことがある銭湯に、セグさんに提灯持ちをたのんで行くことにした。
西町の中心から南西に外れたところにティナちゃん行きつけの銭湯はある。奥様様の家から近いよね。
くむくむ星に来たばかりの時は、向こうの世界に比べて田舎だと思って、村村言ってたけど、学校に通ったおかげでここが都市としては一番大きな枠組みになるということを学んだ。昔の日本で言う所の
西町に二つしかない銭湯は夕方なら大賑わいなんだけど、薄闇迫る七時ともなるとガラガラだ。セグさんと別れ、無人の脱衣所で着物を脱いだら魅惑のお風呂へ。
カッポーン。
この前来た時はアホなの? って思うぐらい熱かったのに今日はいい感じに温くて癒される。
フィナちゃんの白磁の肌がピンク色に染まって色っぽいの。私も美肌自慢なんだけど、フィナちゃんの透明感にはかなわないな。それにウエストの細いこと! あ、でもおっぱいは勝ったな! お尻もね。ち、ちょっとだけどね。
もふもふ大集合の興奮が治まらないフィナちゃんは早口でズーと今日の事を話してる。勿論半分も分からないけど、聞くだけでも良いし、聞き返すと簡単に言い直してくれるから本当に勉強になる。
私も初めて色々セッティングした苦労や、喜びを拙い言葉で語る。フィナちゃんが偉い偉いと褒めてくれた。
そうしてガッツリ湯あたりした私達は、湯冷めしたセグさんとよろよろしながら家に帰ったのでした。
その日の夜、何時もなら8時過ぎには寝るんだけど、体温が下がらないせいか寝付けなかった私はみうと訓練をする事にした。
私も皆のようにみうとテレパシーしたいの!
結果、試みは全て失敗に終わったけれどいい感じに眠くなった私は、アミルくんエルちゃんコンビの戦闘シーンを思い浮かべながら眠りに落ちた。
夢の中でみうと私のコンビは、パールに輝くくねくね兵士を巧みに指揮して山の中での戦闘を行っていた。
敵は巨大な
高火力の魔法を遠距離から放つ魔法使いも居る。魔法使いがハッスルし過ぎてタゲをとってしまった時には、対面斜め後ろの狩人が狙い撃ちを発動! 乱れ打ちで矢の雨を降らせる。
怒り狂った羆が移動するあいだに前衛が激しくラッシュしてタゲを取り戻す。その後自ヒールをしてタゲを固定する盾役。
あれ? 此奴ナイトなの? 乱れ打ちの時も思ったけど、世界観どうなってるの? そして意外にも白魔道士は居ないんだね。
そんな戦闘を、あーじゃこーじゃ言いながら応援する私とみう。そんなヘンテコな夢だった。
意識が覚醒する時に、夢を見てたから可笑しくてしょうがなかった。枕元で腹天アンモナイトするみうを撫でながら、その事を話そうかと顔を上げたら、枕にパール色のくねくね達が居た。
ふぁ?!
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