第31話
エルちゃんが地面から滴る水滴でうねうねした何かを出した後、ボスがアミルくんに指示を出した。
「その地霊を三体台所に送って、くず餅を貰ってきてくれ。無理ならくず餅を持ってくるように伝言を頼む。それも無理ならティネットが何をしているのか偵察を頼む。残りの三体は別行動の精度を見るためにも、ここで色々やらせてみよう」
今までフランスの豚さん宜しく、キノコや団栗を見つける事しかしてなかったんだろうね。アミルくんが茫然自失の体でエルちゃんを見つめている。
フィナちゃんが優しく肩を叩くと、我に返ったアミルくんがエルちゃんに指示を出した。
三体のうねうね達がつーっと地面を滑り台所に向かって行く。見た目的にびちょびちょ歩くのかなと思ったら、凄い機動力だ。
残された三体は的を攻撃するようにとボスが指示を出す。フィナちゃんが立てた的は30センチ位の藁人形だ。
同時に動かせたら凄いよね。自立してなきゃ脳がパンクしそう。
フィナちゃんが細かい指示を出してアミルくんが的を見ると、まだアミルくんが話してないのにくねくねが的を攻撃し始めた。
前横後ろと位置取りし、真ん中がムキッと大きくなって殴りかかると横がちまちま
正直威力はしょぼいけど、凄いよね、これ。戦法次第では格上や複数の敵とも戦えそうだし、エルちゃん凄い!
それに最初は気持ち悪いと思った泥人形達も、ちまちま動いて戦ってるのを見てたら可愛く見えてきた。
台所に行っていた泥人形もくず餅を掲げて戻ってきた。何故か一体しか居ない。
まさか台所で戦ってないよね?
慌てて台所に向かった私が見たものは、箒で泥人形を叩き潰そうと走り回るティネットさんだった。
すでに一体は殺ったらしく、土間にベッタリと泥が散っている。逃げ回る泥人形を庇って、ティネットさんに説明をする。
「すみません、ティネットさん。これみかた、サヒラー様のじっけん」
「えっ、そ、そうなんですか? 突然来て寄ってくるから、なんか気持ち悪くて……」
うん、しょうがないよね。あんなうねうねが無言で近付いて来たら、誰だって逃げるか反撃するさ。キリッとしたティネットさんの慌てた様子が見れて、何故か得した気持ち。
「サヒラー様、悪い。ティネット悪くない」
言いおいて会場へ戻る。私が庇った泥人形はとっくに戻ってたらしい。
結果、泥人形は話せないがエルちゃん経由で簡単なイメージは伝わるらしく、偵察任務に陽動にと大活躍出来そうな能力だと思う。山守するには最高じゃない?
それと、泥人形が話せなくて良かったと心から思うよ。あれが話したらホラー過ぎる。
最後はカイくんの出番だ。
アミル&エルちゃんコンビが予想外の面白能力を見せざわめきが収まらない中、カイくんがもふもふ広場に足を踏み入れた。未だにネズミ取れないーの箱で遊んでいたハルちゃんがカイくんに気付き飛んでくる。
「待たせたな、では同じように的に攻撃してもらいたい。チビには元々使えた技を使ってもらったが、ハルは何が出来るかな?」
エルちゃんが、凄かったからかボスの瞳孔の開ききった目が怖いです。期待度MAXの視線に促されながら、カイくんが答える。
「的を攻撃すれば良いのですよね? ハルは
「変化出来るのか?! やってみてくれ」
狸だけに変化出来るのか、あの落神由来か。やっぱり後者なんだろーね。もうボスがヨダレを垂らしそうです。
「ハル、此処へ」
カイくんが肩をポンと叩くと、ハルちゃんがヌルッと小さなイタチに姿を変えて、脚を駆け上がり肩に登った。まるでミンクのマフラーのように白銀に輝く美しいイタチだ。
「おおおお! これは素晴らしいな」
「五種類は変化するのを見たことがあります」
「何と! 五種類もか、是非全部見せてもらいたいものだ」
「サヒラー様、それは皆様がお帰りになった後でも良いかと思います。先ずは試験を受けて貰いましょう」
興奮するボスをフィナちゃんが
「兎に角、あの的を攻撃するように命じてくれ」
カイくんは不安そうに首を捻りながら、ハルちゃんに手を添えて呟いた。
「ハル、あの的を攻撃してくれ」
神秘的な真っ赤な瞳でハルちゃんが的を見据えると、ザンっ音がして藁人形が斜めにズレた。
むおおぉ! えげつないスピード。目にも見えないし、あんなのどうやって避けたらいいわけ? 現象的には一番地味だけど、一番対処に困るよね。何でも瞬殺なんじゃないの?
そして
フィナちゃんがボスを宥めながら、また的を立てると私を呼んだ。
えっ、私? 私もやるの?
みう何もしたことないよ。みうの必殺技は腹天アンモナイトですよ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます