第30話

 

 主賓しゅひんで初めにやって来たのはハルちゃんを連れたカイくんだった。全くの普段着でやって来たカイくんを席に案内し、麦茶をすすめる。


 うん、もふもふ達を愛でる会なので主人の服装はどうでもいいのだ。


 ハルちゃんを預かり、もふもふ広場に放った。もふもふ広場の1日守役をしているアイーシャちゃんとハリスくんが、ハルちゃんを見て大喜びする。ハルちゃんってなんかありがたい感じがするんだよね。見た目だけだけど、神獣っぽい。


 スタンバってたみうとチビがハルちゃんに鼻チュー挨拶をした。何事も無く、ハルちゃんは受け入れられたらしい。謎生物過ぎて受け入れられるか不安だったけど、魔獣とっては問題ないみたい。


 次にアミルくんがエルちゃんを連れてやって来た。相変わらずのうり坊っぷりに安心する。

 いや、イノシシになっちゃうとその辺歩くだけでも大変そうじゃない? 害獣扱いだろうし、美味しくいただかれてしまいそう。


 最後にアーラ奥様とルルちゃんが見学に来た。氷を分けてもらった時に、もふもふ大集合の事を申し上げたら参加したいと仰ったので、是非にと招待させて頂いたのだ。


 皆様に麦茶を出して、暫しご観覧頂く。

 今こそ魅惑アイテム、ヒッパーレーロープ、ミニミニシーソー、ネズミ捕れないの箱の出番だ。守役の二人に目で合図を送ると、力強く頷いてアイテムを設置してくれた。


 早速チビが目を輝かせてロープに食いつく。端をくわえてブンブン頭を振ると、その動きにお尻をフリフリしたみうがガバっと飛びつく。その後、咥えて逃げるチビとロープの端を狙うみうの追いかけっこに発展した。


 エルちゃんはマイペースにふごふごと地面の匂いを嗅ぐのに夢中で、意外にもハルちゃんがネズミ取れないの箱で遊んでいる。みう専用になるかと思われたが嬉しい誤算だった。


 神性って何なんだろうね?


 シーソーだけは未だに未使用だが仕方ないだろう。

 一見普シーソーの両端にボックスを取り付けたの普通のシーソーだが、支点·力点兼作用点いずれにも術により反発するように設計されていて、ゆっくり揺動出来る。遊び疲れた魔獣が狭いところを求めて箱に入り込んだ時、シーソーゲームが始まるのだ。


 まったりと魔獣を眺めていると、サヒラーさんとフィナちゃんがやって来た。

 ボス、お待ちしておりました。さぁ、こちらの席へどうぞ。あ、ソラちゃんをお預かりしますね。


 ボスはソラちゃんがもふもふ広場で落ち着くのを見届けてから、おもむろにくむり始めた。


「皆の者、今日はよく来てくれた。ユウナが実態化した魔獣の特性について些か気になる点があったので、この機会に調べさせて貰おうかと思う」 


 ボスの言葉を受けて飼い主たちが頷く。


「自分の魔獣の気になった点などあれば先に聞いておきたい」


 ワラドくんがおずおずと話し出した。


「俺はチビと三年の付き合いで、元々かなり分かり合えてると思っていたのデスが、ユウナに戻して貰って以来本当に思った事が伝わっているのかと思う程、意を汲んでくれる、のです」


 ワラドくんはボスの威光にビビっているのか、くむりが硬い。


「大史様、私はハルと過ごしてまだ少しですが、そのように感じます。アミルも、以心伝心出来るようになってきたと言っておりました」


 アミルくんがカイくんに頷き、続けてくむる。


「エルと一緒に山に出ると、美味しい木の実や、埋もれて見つけにくいキノコなどを見つけて伝えて来ます」


 エルちゃんの魔獣としての活躍がフランスの豚さんレベル! 慌てたようにアミルくんが付け足した。


「勿論危険な獣の存在や、魔獣の事も警告してくれます」


 うんうん、ちゃんと役に立ってて良かったよ。

 ちなみに私は単語の組み合わせから推測してるだけで会話の半分も理解してない。


「成程、ではこれから少し検査をした後、ちょっとした試験を受けてもらう」


 ボスはそう言うとフィナちゃんと一緒に広場へ足を踏み入れた。板に紙を置きメモをとるフィナちゃん。なんかかっこいい。


 ボスとフィナちゃんが魔獣チェックを始めたのを確認してから、皆様にスイーツをお出しする。ティネットさん渾身の甘味を召し上がれ。


 くむくむ広場の守役達も休憩にしてもらって、一緒にくず餅を頂く。

 うーん、ちゃんと冷えててつるつるで美味しい! やっぱりきな粉と黒蜜は鉄板だね。


 なんか体を流れる何かの効率を調べるって言ってたんだけど、何だろうね? ファンタジー的には魔伝導率とか?

 あんなふうに御札で調べれるもんなんだね。


 くず餅を食べ終わって、麦茶を飲みながら眺めていると検査が終わった。ボスとフィナちゃんがくむりながらワラドくんを呼び出す。

 ここからはペアでテストするらしい。


 雑談していると、突然バキバキっと音がしてくむくむ広場に巨大な氷雪が立ち上がった。ちょ! うちのみうさんが氷漬けになる所だったじゃんね!


 ワラドくんがびっくりして固まっている。今のチビがやったの? くむくむ広場の守役達が慌てて持ち場に戻り、魔獣達を反対側に寄せた。


 チビって、魔法使えたんだね。しかも氷。かっこいいなおい。

  はっ、もしかしてみうも使えたり? わくわくが止まらないね!


 次にアミルくんが呼ばれた。エルちゃんなにか出来るのかな? キノコはダメだよ。


 エルちゃんがふごふごと鼻を鳴らすと、地面から滲み出た黒い水滴が逆さに垂れて、空中で小さな生き物の形になった。5匹……6匹だね。


 なにこれ、くねくねしてて嫌なことを思い出す。正直、キノコ掘ってくれた方が良かった。凄いけどさ……アミルくんもドン引きしてる。


 でも、山守としてはかなり有難い能力なのかもしれないよね。出した6匹を偵察に放てたら最高だよ、その隙に食べ物も探せるしね!


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