第29話
サヒラーさんがそうだと言ったから、明日ははもふもふ大集合の日。
何やら調べたい事があるらしいよ、解剖とかは無しでお願いします。
結局あれから誠心誠意カイくんとお話して、ボスからは退魔のブレスレットをプレゼント。ハルちゃんにも退魔ネックレスを付けました。狸顔のハルちゃんに数珠っぽいネックレスが似合うことといったらない。一気に妖怪感が増した。
私は今、魔獣大集合に備えて裏庭の整備をしている。ドッグランじゃないけど、待ってる間五匹で遊べたらいいなーと思ってね。この裏庭南南西向きだから草がひどいんだよ。今
此処は小屋に続く門がある手前のちょっとした広場だ。今までは門に続く道以外は放置されてたけど、折角だから開拓しようかなーと思って。
みうは住処を追われて慌てるバッタに夢中で遊んでいる。神性……って何なんだろうね?
前日にミティアさんに頼んで、ワラドくんの
張り切って草抜きをしている二人に話しかける。
「ワラド、チビ元気?」
「お兄ちゃんとっても元気になりました! チビを助けてくれて、ありがとうございます」
「お姉さんありがとう」
「元気でて、よかった」
草をブチブチ抜きながら、二人の最近の大事件を聞く。リティアさんがボス宅勤めになった事で、畑&田んぼのお手伝いが無くなってちゃんと学校に行けるようになったんだって。ほんとに良かった、教育は大事だもんね。
通い始めた時期が同じだから、学校話に花が咲いた。今が一番楽しい時期かもしれないね。
今日は学校もお休みだから(そもそも二日に一回で、学区を二つに分けて交互に授業してるから、毎日行っても同じことやってるだけなんだよね)お喋りしながら地道に抜く、草むしりの秘訣ってお喋りだと思うんだよね。
サヒラーさんを見送った後、フィナちゃんも手伝いに来てくれた。
たわいのない話の後で、私は気になってた事をフィナちゃんに聞いてみた。
「フィナ、なんでサヒラー様、好き?」
フィナちゃんはほっぺを薔薇色に染め私の肩をバシッと叩いた。
「好きだなんてそんな、私はサヒラー様を尊敬しているのです。」
恥じらう乙女は可愛らしいね。
「サヒラー様は若くして大祐にまでなった御方で、今は大史の務めをこなしながらも衰えない探究心で、術詞や学術の進歩に貢献しておいでです。」
うんうん、全然わからん。
「それに、サヒラー様はああ見えてお優しいのです。こんな体質で、家族にも迷惑を掛ける遠縁の私に手を差し伸べてくれ、何時か自分で身を守れるようにとこうして学ばせてくれているのですから。サヒラー様、優しい私を助ける。勉強する、嬉しい」
「フィナ、病気? 大丈夫?」
「病気の様なものですが病気ではないのです。一種の祝福らしいですよ」
どうゆうことだってばよ。
「病気違う」
「呪い?」
フィナちゃんは首を振って呟いた。
「そうですね、私にとっては最早呪の様なものです」
ぬぬぬ、なんか良く分かんないけどフィナちゃんも何か憑いてるのかな。この世界のスピリチャルは仕事しすぎじゃないか?
「フィナ、私助けた。私、フィナ助ける」
フィナちゃんは悟った様な顔で、ありがとうと言って笑った。
それが不満だったけど、私にはフィナちゃんの現状すら理解出来てないのだからしょうがない。
◆◇◆
次の日、ワラドくんと学校から帰った私は急いで裏庭に向かった。もふもふNo.1号のみうの飼い主として遅刻は許されない。ボスの信頼に答える為にも、このもふもふ大集合をつつがなく終わらせる責任があるのだ。
もふもふ達が戯れる姿を存分に満喫出来る位置にテーブルを設置、南南西の西日対策にシーツでルーフを作ることも忘れない。
暑くなってくる季節、魔獣達のため適所に水皿を置く。飼い主達には冷たい麦茶を提供出来るよう、村長改め大領様の氷室から氷を分けてもらってある。とっておきの炒った黒豆入り麦茶だ。
そして三時のおやつには、イチジクとくず餅を用意した。自領で採れた葛に挽きたてのきな粉をまぶし、東南の大国バッパァから取り寄せた黒蜜を惜しみなく回し掛けた至高の一品だ。
勿論魔獣達のおやつも忘れてはいない。
肉食派には~皮と軟骨の煮こごりに地鶏の足を添えて~
草食には~早採れのビワにスダジイの団栗、花の種を添えて~を御用意させて頂いた。
シェフのティネットさんには心からの賛辞を送りたい。彼女が居なければこのもふもふ大集合計画は頓挫していたことだろう。
何か見落としは無いかと会場を見てまわる。もふもふ広場の砂のトイレと杭をチェックする。アイーシャとハリスも良い仕事をした様だ。二人も招待してあるので、もふもふを存分に堪能してほしいと思う。
そして我が家の発明家セグさんによる魅惑アイテム、ヒッパーレーロープ、ミニミニシーソー、ネズミ捕れないの箱も完成し広場の片隅で静かに出番を待っている。
手伝いをしてくれたワラドくんが若干引いているのを感じる。
正直、初めて任されたプロジェクトで些か張り切りすぎてしまったきらいがある。だが、足りないよりは良いはずだ。
私は胸をときめかせてもふもふ大集合開演の時を待った。
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