第19話
南にあるファヴィロン山脈、その高地に住まうシャルベンの民に伝わる呪術がある。中でも有名なのは、落神だ。と、言っても知る人ぞ知ると言うだけで、民草には縁のない話だ。
サヒラー様が調べて下さったのだが、あまりに非道な術なため、詳細まではとても教えられないと仰った程だ。ただ、この術の核となるのが女人らしく、俺が見た女はこれではないかと、教えてくださった。
その呪術では動物も使われていて、それによりより作られた呪毒を、苦境に追い込んだ動物に使うとかなりの確率で
俺たちが禍祇と戦っている間、ジークは傷ついた狼と戦っていたらしい。こちらまで転じていたかと思うと恐ろしいばかりだ。その死体は確保出来ているので、
それに、ここまで大きな事を仕掛けてくるとは思わなかった。玉納めが失敗すれば、大領を引きずり下ろせたところで何にもならないではないか。実際、危なかったのだ。
玉による結界が無ければ、地に巣食う魔物から、大きな
交易する度に、魔物に苦労する商人たちにそれが分からぬ筈がない。奴らの神輿たる
目の前では、真面目に考えるのが馬鹿馬鹿しくなる様な状景が繰り広げられている。
小さな尻尾をちぎれんばかりに振って、アミルの元に駆け寄るウリ坊······少しでも近付きたいのか、足に乗り腹に手を掛けてない首を伸ばしている。健気で愛らしい仕草だ。
此奴は······禍祇だった猪だ。
皆と話し合ったのだが、ユウナはどうやら憑いているモノを、実体化出来るらしい。実に不思議な異能だ。
だがまさか禍祇····
いや、だがサヒラー様は仰っておられた。禍祇になる前の猪が、助けてやろうとしたことを恩に感じて、呪いから守っていたのではないかと。
まぁ、主に
確かにアミルは頭から呑み込まれた、とても助かるとは思えない有様だった。
こんなに慕っている事だし、受け入れてやってもいいと思うのだが……、ウリ坊か、下手に道を歩くと鍋にされそうだな。
あの禍祇は南の呪術師によって、呪いを被せられたらしい。それを思うと、哀れな猪だ。
トドメを刺そうとしたアミルをあんなに慕って······
猪を検分したサヒラー様も、悪いものでは無いと断言しておられた。まぁ、
ユウナはアミルに猪に優しくしろと言いたげに怒っていたが、此奴を一体何だと思っているのだろうか?まさか犬を殺し、俺たちを痛めつけた元凶だとは思うまい。
初めこそ怯え、忌々しげにウリ坊を見ていたアミルだが、サヒラー様の話を聞いた後は恐る恐ウリ坊を撫でてやっていた。それを見るサヒラー様の優しい眼差しといったらない。
サヒラー様がアミルに、ウリ坊の名前を付けるようにと仰った。アミルは
サヒラー様も、昔より使い魔のソラと意思の疎通がしやすくなったと仰っておられたが、アミルにも分かる様になるのだろうか?此方は猪だが……
ひとしきり、ぎこちない触れ合いを見守った後、我に返ったサヒラー様がユウナの能力を検証するべきだと言い始めた。確かに確かめておいた方が良いだろう。異能は知り得る限り、条件を把握しておくべきだ。
例えば、
わからぬ。
サヒラー様の場合は、ずっと使役していた使い魔だと言うこともあって、見守っていたところ実体化されたのかと納得していた。
アミルの場合も、この様子を見ていると恩に感じて懐いているというのは理解出来る。
だが、悪意を持ってとり憑いているものを実体化してしまったら、どうなるのだ? ユウナにはその違いが分かっているのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます