第18話
きっと、くすぐったかったのだろう。アミルくんは、みうとウリ坊に手を当てながらゆっくりと目を開けた。
天井を見つめる、優しげな茶色の瞳。ここはサヒラーさんの小屋ですよ。伝えてあげたいけど分からないしな、るるくんが居たらな。
両手をみうとウリ坊のお尻に置いて、天井を見つめていたアミルくんと目が合った。あ、どうしよう。
ボーっとしてたアミルくんの顔に、理性が戻る。慌てて肘を立てて頭を起こしたアミルくんは、緊張した面持ちで私を見た。
お、襲ったりなんかしませんよ?あー、サヒラーさんはお出かけだし、るるちゃん···は無理かな、カイくんを呼んでももう平気だよね?痣はほぼ消えてるし。
両手を目の前に出し手のひらを向けて、待てを二回してから小屋を出た。
井戸を挟んだカイくんの小屋に行き「カイ、こい」っと言いながら手招きをする。カイくんは不貞腐れた様子で渋々ついてきた。
アミルくんの小屋を指さすと、ハッとした顔をして駆け込んでいった。感動の再会ですね、っと思っていると、入った所で固まっている。
ん、どうしたの?横から覗くと、ベットの隅っこで枕を盾にウリ坊と戦っているアミルくんの姿が。ウリ坊が悲しげにぶーぶー鳴いている。アミルくんどうしたの?さっきはお尻を鷲掴みにしてたのに……
片手にみう抱いてるし、生き物が嫌いってことは無いよね。やっぱり、ウリ坊はペットじゃなかったんだね。
それにしても、こんな小さい子を怖がるなんておかしいよね?るるちゃんも、カイくんもおかしいし。うーん、くむくむ星ではイノシシが肉食でライオン的なポジションとか?
ぶーぶー泣くウリ坊が可愛そうだったので、ベットから抱き上げてみた。可愛いけど抱き心地は良くないね! 猫と違って硬い筋肉だなー。
私に抱かれてワタワタするウリ坊を微妙な顔で見る二人。
ほら、感激の再会でしょ?アミルくんなんて死の淵から蘇ったレベルだしね。熱いハグでもしなさいよ。
小さな足を下にして腕に乗せ、お尻をしっかり支えてあげると落ち着いたみたい。うーん、愛いやつ愛いやつ。
ウリ坊にうりうりしていると、カイくんが動き出した。未だ壁に追い詰められたままの格好でウリ坊をガン見するアミルくんに、くむ話を始める。ズルズルと座り込むアミルくん。
ああ、三日も寝てたんだから、薄いお粥持ってこなきゃ。最初の一杯は白湯が良いよね。
えーっと、こいつどうしよう?村に入れて良いのか分からないし、置いて行きたいけど、この二人平気かな?
アミルくん怖がらせるのは悪いから、地面に置いていけばいいかな。ベット登れないサイズだしね。ウリ坊を下ろすと、一目散にベットの方へ駆け寄って行った。カイくんがビクッッって足上げてたけど、アミルくんは平気そうだし良いよね。「アミル、ごはん」っと言いおいて出ていく。
入口のところでフィナちゃんが待ってた。あれ?もしかしてるるちゃんが来た時から待っててくれたのかな?申し訳な……いた、痛いよフィナちゃん!
フィナちゃんは凄い怖がりなのか、そういうのに弱いタイプなのか、柵を越えない。それに毎回執拗に叩いてくれる。
「アミル、ごはん」
フィナちゃんは喜んだ後、私に抱きついて頭をわしゃわしゃした。まー、頑張って拭いてたしね!
取り敢えずお湯を沸かして、お粥を炊こうか。
サヒラーさんとフィナちゃんは外食三昧だったらしく、台所は放置されてた。綺麗だったけどね。
なら私が!っと三度炊飯を試みるも未だ一度も成功していない。いや、最後のは本当惜しかったんだよ。
鍋でコンロなら30分あれば炊けるのにさ!
フィナちゃんが、
だけどお粥だよ?お水があれば焦げないもの、お粥ならいける気がする。
だけどまぁ、すきっ腹のアミルくんを小一時間待たすのも悪いし、フィナちゃんが正しいね。
フィナちゃんが戻る前に、白湯を持って行ってあげたら、カイくんまでベットに乗ってた。床ではウリ坊が悲しげに声を上げ、ベットの周りをウロウロしてる。
君たち······
私が残念なものを見る目で見ていると、るるちゃんがサヒラーさんを連れて帰ってきた。
あぁ、るるちゃんサヒラーさん呼んできてくれたんだね。ありがとう。
サヒラーさんは来た途端ウリ坊をがっしりと掴み、舐めまわすように調べ始めた。悲しそうなウリ坊の悲鳴が響き渡る。
肩から降りてきたソラちゃんも、くんくん匂いを嗅いで確認してる。
その後、物凄い勢いで皆でくむり始めたので、私は静かに立ち去った。ソラちゃんの時に比べて、サヒラーさん以外のテンションがおかしいよね。なんなんだろう。
入口で待っていると、すぐにフィナちゃんがお粥を持って来てくれた。バケツリレーの様に持っていく、中はくむくむ大会議だ。
暫くして食器を下げに行くと、まだウリ坊がベットの下で鳴きながら、アミルくんの所に行こうと頑張っていた。
こんなにアミルくんが好きなんだから、ペットじゃなくても大事にしてた家畜とかなんだよね?いい加減に抱っこしてあげなさい!
ウリ坊を拾い上げた私は、アミルくんにウリ坊を差し出した。あなたの子よ! さぁ、抱いてあげなさい!
ウリ坊がパパァーーーってぐらいな感じで足を漕いでアミルくんの元へ行こうとする。なんて健気な……
キッっとアミルくんを見ると、恐る恐る手を出したのでベットの端に下ろしてみる。
だって突然渡しても(コイツ動くぞ!)ってなって落としそうなぐらいビクついてたんだもん。
念願のベットの上に乗れたウリ坊は一目散にアミルくんの胸の中へ駆け込んでいった。
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