第13話
くむ。
くーむくむ。
くむくむーむくんくめ。
くむぬーむ。くめくむ、くむくむくーむ。
朝、私はくむくむ達の
くむくむ達の朝は早い。
日が昇り始める前には起きて熱いお茶飲み、少しのかりんとうを摘むと、葉っぱに包まれた握り飯を持って畑仕事に出る。
早朝の冷たい空気の中、くむくむ達は挨拶しながらそれぞれの畑へ渡っていくのだ。
そして半刻もすれば、くむくむ達は村に舞い戻り、思う存分くむるのであった……。
って、戻ってくるの早くね?
布団の中からくむくむ達を見送ったあと、二度寝を決め込んでいた私は、のっそり起き上がった。
しかもくむり音がまぁ、大きい事。今日は皆さんテンション爆上げですな!
あれですよ、私は二度目の朝に驚きを隠せず、布団の中で悶々としていたわけですよ。くむくむ星に来てしまっただけでもアレなのに、昨日のアレだよアレ?
なに?此処くむくむ星は、剣と魔法の惑星だったの?なら、翻訳コンニャクプリーズ!!
はぁ、起きよう。
今日は村長さん家で過ごす最後の日。お世話になって、語学習得のチャンスまで頂いたのだ。せめてお手伝いをしよう。
昨日の儀式を思うに、今日も何かあるんだよねきっと。
おはようみう、今日も美しいお腹だね。枕元で腹天しているみうのお腹を撫でてから、ベットをでる。
洗顔洗顔、マイ手ぬぐいと洗顔パウダーを桶に入れて中庭へ急いだ。
うーん、見事な曇天だ。今日のイベント屋内なら良いけど、野外だったら雨が心配だねー。
キコキコ、はい!キコキコ、はい!キコキコ、はい!キコキコ、はい!桶に水を溜めるだけでも一苦労。いやー、脇腹に効きそうな動きですな。くむくむ村に居ればぷにゅ腹ともおサラバ出来そうだ。
貰った赤い紐カチューシャで髪をあげ、左手を凹ませた所にパウダーを二掴み、少しづつ水を垂らして泡立てます。
クルクル、クルクル、くるくる、クルクル……。
それでも泡は、立ちません。
クルクル、クルクル、くるくる、クルクル……。
手の平が痒くなってきたので、残念な泡で顔を洗います。指の腹に直接お肌が当たる感触、残念でなりません。魔法で苛性ソーダ作れませんかね?
洗顔を終えたあと、やっと私は気がついた。昨日は水で洗顔したからまだしも、今日は化粧水いるじゃん! これは大問題ですよ。
簡単な化粧水……精製水·尿素·グリセリンなんとこの三つを混ぜるだけで出来ちゃいます! お好みで精油を追加すると、ゴージャスな気分に浸れますよ。
お手軽にドラッグストアで手に入り、尚且つリーズナブル! さぁ、貴方も手作り化粧水に挑戦しませんか?
って、どれも無理だよぉぉーーー。尿素、尿…うっ
ここで出来そうなのは米のとぎ汁とか?日本酒少し入れたやつも良いらしいけど、結局乳液もないと乾燥するんだよねー。
乳液はグリセリンなしのレシピとかあるけど、精油と植物性乳化ワックスは絶対入ってるし……よく考えるとワックスってなんなんっすかね?
·····米のとぎ汁ばしゃって油塗っときゃいいか!
ぬっるぬるのテッカテカにヌラめいた私が奥様にお手伝いを申し出に行くと、
奥様が持っていたのが巻物で良かったと心底思った瞬間でした。残念ながら、巻物には見事な油染みが···。その後、激怒した奥様による、ありがたいくむ教を拝聴致しました。それでも、こんな私に、奥様は御自分がお使いになっている基礎化粧品をお恵み下さったのです。
ありがたやありがたや。
あ、前髪下ろしてても何も言われなかったよ。ちゃんとした時には前髪は上げるって事かな?
ぬらりひょんから脱した私は、お手伝いする事を求めてコーディーさんを探した。奥様とお出かけする事が決定したけど、まだ早いから出来ることがあるなら少しでも役に立ちたい。
あ、コーディーさん。何かお手伝い出来ることはありませんか?あ、床ふきですね! 小学校の時に得意だったんです!
こう両手を置いて、お尻を上げて、トトトトトトーっと……むむ、今やるとこの体勢がなかなか苦しい。昔はタタタタタタタタタタタタタターーーだったのが今はどっ どっ どっ どっ どっって感じ。でもここは板の間だらけだからやり甲斐があるね。なんか段々思い出して来たよ。
こう、肘を伸ばして、つま先立ちでトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトトー、がっ、ぐぶぉ。
調子に乗って廊下を走ってたら、段差に手が引っかかって見事に飛び上がりの一回転した。遠心力と見える天井にびっくりして目を閉じると、ゴッチーんっと思いっきり頭を打った。真っ白に染まった目の裏に星が舞う。いっったぁぁーーー。
おデコを抱えて前屈みになっていると「くむ!くーむくむくむ、くめーくもらん!」っとすごい近くからくむられた。
あ、ごめんなさい。慌てて頭を起こすとお尻が下がり、何か弾力があって固くて、温かい物に当たった。嫌な予感がしてゆっくり目を開けると······。
床に倒れて後頭部とおデコをサンドイッチ抱えしながら涙目で私を睨むお兄様が! すすすすっ、すみませんお兄様! 決してわざとではないのです! 狙って馬乗りになったのではございません! あ、はい退きます。ほんとに、ほんとうに申し訳ございませんでした。
私は米つきバッタもかくもやと言うほどペコペコと頭を下げた。
はぁ、凹む。
はい! そこのご褒美とか言ってるあなた。
こうさ、お互い立ってとかお互い転んで座って、とかでなら良いよ。馬乗りだよ?馬乗りになったら、下の人からどんな角度で見られますか?!はい!そこの人、今すぐ携帯で上目使いから下舐めへの動画を取りなさい。
どうですか?恐ろしい化け物が生まれたでしょう?
それに、ドン、あっすみません。じゃないよ、ガン! ゴィィーンだよ。ほんとすみませんって感じ。
はぁぁぁーーー。
その後、朝ごはんの席でお揃いのたんこぶについて突っ込まれた、お兄様の苦いお顔が忘れられません。明らかにお兄様のたんこぶのがでっかかったしね……。
◆◇◆
村に出てみて驚いた。村にこんなに人って居たんだね~。屋台も沢山出てる。何が売ってるんだろう、水飴、焼き物、あ、お面がある! 妖怪·鬼·幽霊·狐·目がつり上がって血走り、牙の生えたみだれ髪の女の面·····いや、怖すぎませんか? 子供が買います?
あ、奥様。いえ要りませんよ! 欲しくて見ていた訳ではないのです。奥様ぁぁー。
側頭部にリアルな鬼の仮面をつけた私と奥様は、人波に揉まれながらも神社? へ到着した。なるほど、お祭りだねコレ。
奥様はいかにも貴賓席的な所に座っておいでおいでしてるけど、そこはな~。後ろの席に座らせてもらおう。
水飴を食べながら奥様がくむ説してくれるのを聞いていたけど、当然ながら分からない。おっさんこと、サヒラーさんが出てくるっていうのは分かったよ。
席があらかた埋まった頃、ジュノィ村長とお子様達がやって来た。うっ、おデコが····。
お兄様の冷たい
あ、るるちゃん隣に座ってくれるの?ありがとう。ああ、笑顔が眩しいです。
ドドンと太鼓がなり、笛の音が響き渡る。
昨日儀式の時に枝を燃やしたおじい様が、
ゆっくりとした
観客は神事とは思えないほど盛り上がってる。
るるちゃんがつんつんして「サヒラー、サヒラー」っと舞台を指さす。ん、おっさん出てくるの?
華美な
朗々と響き渡る声、素晴らしい美声です。低音までこんなに響くなんて、凄い声量。舞も綺麗な型に滑らかな動きで、惚れてしまいそうです。おっさんだけど。
色々なくむくっむがあった後、神職の方たちとサヒラーさんが隊列を組んで、おじい様がくむくむ布の着いた棒を振ると、
結構物々しい感じだけど、山の上の神社に行くんだろうね。サヒラーさんは大役だったな、また今度あの美声を聞かせて貰いたいものだね。
店をひやかしながら村長さん宅へ帰り、お手伝いを終えお昼ご飯をいただいていると、血相を変えた男の人が飛び込んできた。
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