第10話
何故か小姑根性丸出しで部屋のあら捜しを終えた奥様が、早速買い物に行こうと誘って下さった。いや、ありがたいんですけど、先立つものがないので、御遠慮させていただきますね。
「くむくむくーむんくめーるくむん!」
あ、はい。
私達は村の東に来ていた。お店などは東に集まってるみたい。お店の壁は黒くないから分かりやすかったよ。民家は焼きすぎで(杉かは知らぬ)商店は木に明るい色のニスなので、すぐに分かる。
西と違って、東には結構人が歩いている。ご飯屋さんも何個かあったし、商店街的な所なんだろうね。
それにしてもくむくむ村民よ、遠慮なく近くでくむりすぎではないかね? もうちょっと遠目でくむくむしてくれるとありがたいんだけど。
まぁ、村にエイリアンがきた! 位の感じなんだろうけど、それならそれで距離をおこうね? 噛み付くかもよ?
ちょ! そこ、お触り厳禁ですよ!
奥様は板の間に敷く敷物を探して下さってるみたい。あれ?! 私シート持ってるし、それでいいじゃん。奥様に敷物はあるからいらないと伝えようと頑張ってると、カイくんがくむくむ説得してくれた。有り難い。手織りの敷物なんて、すごい値段しそうだもん。
結局囲炉裏炉端にい草の円座っぽいやつを四個と、私の部屋にも1個、同じくい草? の枕を買って頂いた。もちもち猫枕があるけど、夏は頭が埋まって汗地獄になるので有難く頂いておいた。
あと、石鹸に使ってたなにか実の粉と、手拭いを三枚、ガーゼみたいに薄い、甚平の上だけみたいなやつと、足袋、
褌……まあ、紐で結ぶだけの半ズボンみたいなのより、着心地はイイよね。
赤と白が売ってて、女の子は赤で男は白みたい。女性は血行大事だもんね!
着物屋さんの隣は
で、すっと簪抜いたら髪がサラサラーって落ちるのも良いよねー。
あー、この前髪の横に付けてシャラシャラするやつ! これ憧れだったなー。七五三で張り切って付けたの思い出すな。
ふぅむー、組紐もなかなか可愛らしいね。
ショピングを満喫した私達は、村長の家に戻った。ちょっとくむくむ村の外食産業も気になったけど、文無しなのに外食したいなんて言えないわ。
村長宅に戻ると、皆さん忙しそうに走り回ってる。襖を取り払い、大広間となった広間に沢山の座布団。
こんな時に奥様を連れ回して申し訳なかったかな? 奥様、私もお手伝い致します。
あ、コーディさんお疲れ様です。このお膳を運べばいいのですね。分かりました。
延々とお膳を持って往復する。おひたしと煮物の小鉢、漬物のお皿とからの平皿が乗ってるから、水平保って運ぶのに気を使って結構大変。十四回頑張りました! 指示されても分からないので、こう言う単純な作業を振ってくれるのはありがたい。
ほら、親戚のお葬式とか結婚式とかの後の手伝い。あれ思い出してみて? 時間かかるお手伝いの方が嬉しいよねー。皆が忙しくしてるのに、何もすること探せない時の焦燥感。あれ嫌だわー。
次のお手伝いはなんですか? と、近づくとお手伝いさんに攫われた。あまり映りの良くない丸い鏡の付いた鏡台に座らされて、前髪を弄り倒される。どうやら前髪を纏めたいみたい。短いので変になる予感しかしない。
紐を貸してもらえらるようにお願いして、頭の後ろから耳の後ろを通して、頭の上でリボン結びにしてから1回下ろしてまた上げる。これで前髪無しのデコ出し娘の誕生です。
どう?っとデコを指さすと指さすと、満足そうに頷かれた。リボン結びは少し照れくさいけど、パツパツに引っ張られたヤワラちゃんになるよりはマシだしね。
フィナちゃんは前髪短かかったど、お手伝いに来てる人達は皆長いし横に分けてるから、短くて良いのは子供だけとか、お祝いとか正装では上げないとダメとか? まぁ、終わって下ろしてて何も言われなければ後者なんだろう。
ってか、この紐私が見てたやつだよね。ありがとうございます奥様。
大広間へ戻ろうとすると待てが掛かった。村長さん御一家と合流して一緒に入る流れらしい。
ジュノィ村長が大袈裟に服を褒めて下さる。そう言えば見てなかったんだね。お兄様も褒めてくれてもいいのよ? そんな解せぬって顔してないでさ。
女中さんが温かいお汁と焼き鳥をお膳に載せてくれる。うわぁ、焼き鳥美味しそう。って、きっと朝のあれだね。有難く頂きましょう。
全員に行き渡ったところで、ジュノィ村長がくむ説して頂きますとなった。
ちらっと前を見ると、カイくんとおっさんも参列してた。ちょっと安心。まあ、パンダ並にがん見されてるけどね。
これが何の集会かも私には分からない。分からないけど、粗相の無いようにちゃんとしよう。こんな私に良くしてくれた村長夫婦の為に。
これが親戚の集まりだったらお酒を注いで廻る所だけれど、話せないんじぁね。せめて美味しく頂きましょう。
黙々と料理をたべ、明日からのおっさん家生活に思いを馳せる。あんまり真面目に勉強した事無かったけど、これからは一生懸命勉強しよう。伝えられないのってもどかしい。ジョン万次郎って偉大だね。万次郎大先生にあやかれるように私も頑張るよ。
チャボ美味しいね。あ、皮焼きも炭火焼きだからか香ばしくて最高です。
なんだか宴の最後に儀式めいた事が行われた。
神主さんみたいな豪華な刺繍の入った着物を着て、袴を穿いたおじいちゃんの前に六人の男集が跪き、木の枝を差し出す。それを一本ずつ受け取ったおじいちゃんはその束を恭しく掲げてくーむくーむして北の方に置いてあるお盆に乗せた。
なんか知らないけど
内心凄いビビったけど、皆さん極々真面目に静かにしてらっしゃるので、空気の読める私は黙ってすわっていた。
なに今の! 魔法ですか? 火魔法ですか?! 手品ですか? 生木だったよね?! すごい速さで全体的に燃えたよ!
厳かな雰囲気の中で宴が終わり、参列者が帰って行く中、じゃぁねと帰ろうとしていたカイくんを確保して興奮を伝える。ああもどかしい。
こう、おじいちゃんが枝もらって捧げ持ってくむくむしてぽいってしたらメラメラって! 燃えたでしょ。あれ何?
ああ、あれねって顔をしたカイくんは懐から葉っぱを出すとくむくむ言って燃やしてみせた。
ふぁ?!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます