第9話
私は取り敢えず村を見て回りたかったけど、みうを抱いた奥様はぐんぐん進んでいく。
あの後、金太郎前掛けをみうに着せようとしていた奥様にカイくんから貰った浅葱色の紐を渡して、リボンにする事で諦めてもらった。
すたすた進む奥様。おっさん家に向かってるんだよね、分かってるけどさ。
村の道には黄色い砂がひかれている。泥はね防止かな? 壁は黒いと思ったら、焼き杉みたいに焼かれていた。大きな屋根は瓦式じゃなくて、木の皮が貼られた板が横にはられてるみたい。。板が重なる所に5センチぐらい隙間が空けてあるから、換気がよさそうだけど不思議な作り。
村長さんの所はオレンジ瓦だったから、民家は中から見たらどうなってるのか気になるな。だって屋根でっかいんだよ。
今は10時過ぎ位だからか、人気もまばらだ。
と、言うかじじばばが縁側か、四方八方開け放たれた家に集まって藁を編んでたり、糸を縒ってくむくむしてるぐらい。あと二、三歳の子供たちが、その周りを走り回って遊んでいる。
ちなみに最初は私の周りにうようよいた。今も三人付いて来てる。何も面白くないですよ。ザックお部屋に置いて来ちゃったからお菓子もあげれないしね。
きっとこの子達より上の歳の子はもう、お手伝いでお仕事してるんだろうね。
で、子供みて気がついたんだけど、皆髪の毛は黒から茶色で普通なんだけど、瞳は青とか緑がかったヘーゼルの子供が結構いる。
大人もよく見たら居るけど、明らかに少ない。よっぽど大人になる迄に黒くなるってことかな?
ヴェルツお兄様のアイスグレーも冷視線のせいじゃなくてあ、あいう色なんだね。奥様は······ああ、奥様もグレーなんだね。カイくん···カイくんは普通の茶色だね。お揃い!
おっさんの家は村長さん家から西南西の方向にあって、私が降りてきた山に近かった。
広い庭の、一棟だけど立派な家だ。屋根はあの大きな木の皮の屋根!やったー、気になってたんだよね。
お庭を可愛い少女が掃き掃除してた。
さらふわの黒髪に透明感のある肌、薔薇色の頬っぺにはそばかすが散っていて、赤いふっくらとした唇が魅力的。この子もアイスグレーの瞳なんだね。白の上着に蒼の裳も涼やかな美少女です。あれ? 白雪姫かな?
奥様がくむくむ紹介してくれるけど、名前がフィナ·ジャルって言うことと、おっさんのお世話をしてる事、多分親戚ってことしか分からなかった。
こんな可愛い女の子にお世話されるなんて、なんて羨ましい立場なんだ。
開け放たれた玄関から広めの土間に入ると、肩にエゾリスを乗せたおっさんが待っていた。
え、 おっさんどうしたん? どちら様ですか? ってぐらいに生気に満ち満ちた明るい顔をしている。
かさついていた肌が潤い、クマが消え頬っぺににも張りがある。ギラギラしてたグレーの瞳もも柔らかくなって、今なら40代手前に見えるよ!
エゾリスの、ソラちゃんは相変わらずのトトロっぷりだね! もふらせてくれないかなー。ふわっふわなんだろーなー。
首かしげるのかっわぃぃー! 何で小動物って小首傾げるだけで可愛いんだろうね。
あれ?
あ、奥はロフトがあるんだね。
天井を見ていたらおっさんがくむくむ言いながら近ずいてきて、ぐっと手を握った。物凄くお礼を言われてるのは分かるよ。シュケーラしか聞き取れないからね。
私だって何が起こったのか分からないから、お礼を言われてもドヤれない。だけど、おっさんが空ちゃんを大好きだって言うのは凄く分かるから、良かったなって思う。
だからね? 手を離そうね。
奥様の暖かい眼差しがこそばゆい。
ソラちゃんとみうは、見合ってゆっくり匂いを嗅ぎあって、仲良くなれたみたい。今は空ちゃんがみうの背中にくっついて遊んでるよ。
くー、携帯あったら激写するのに。
もふもふに癒された後、アーラ奥様の
玄関の小上がりから廊下を挟んで右が囲炉裏のある部屋。うわ、いいなこれ、ここにお魚とか刺すんでしょ?
その仕事場の隣の部屋が、私に宛てがわれた部屋らしい。ベットがあって、タンスが一棹、文机。南向きの光取りの小窓もあるし、いい感じですよ。
私は頷いて、おっさんに感謝のお辞儀をする。言葉を教えてくれて住まわせてくれる人だ、おっさん呼びも改めないとね!
名前……おっさんの名前……う、うんこじゃねーべぇ?!。
あ、奥様。いや、私はこのお部屋で充分です。ほら、お布団剥がさない。いや、埃チェックするのやめてください。ほら、フィナちゃんが気まずそうですよ。
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