第8話
手の指の関節がオイル切れの機械のように、動かす度にギリギリする。コーディーさんの為にも、ローラ式脱水機の開発を急がなくては。
筒に棒入れてたのをAとしてそれを二本。長さは五、六十センチが実用的だろうか。
Aの長さの棒のA’を1本、用意してそれを30センチぐらいのB棒4本で繋ぐ。その
A’を固定して、リングをA’の方に寄せるとAか開閉出来るので、そこに洗濯物を挟んで閉じる。この時に、Bに通したリングをA側に押し込んでから固定し、洗濯物を引っ張るときつく絞れる。
リングをA’と同じ長さの、(強度はそこまでいらないので)細い棒で繋ぐと、作業の効率化が望めるだろう。
いちいち右と左のリングを動かすのは大変だもんね?
取り敢えずこんなんでも良いんじゃない?くむくむ星にナットとボルトがあればすぐできるよね!な、無くても釘打って折ればイけるんじゃないかな!木製になるけど!ギコギコ凄そうだけど!
最悪、Aにロープ通して竿を跨いで引っ掛けて、小さなリングつけて、それで完成でもいいよね!
私が部屋で発明家を気取ってうんうん唸っているいると、アーラ奥様が呼びに来てくれた。
朝ごはんですか?ありがとうございます。
奥様に付いて広間へ行くと、ジュノィ村長とカイくん、カイより少し年上に見える男の人と、下に見える男の子が待っていた。
座卓には雑穀ご飯おにぎりと、漬物、青菜に根菜の煮物。謎の
素晴らしきかなくむくむ食。
昨日頂いた晩御飯も美味しかったんだよねー。
この人達、晩御飯には居なかったよね。あ、村長さんの息子さんかな? そりゃー居るよね。息子さん。
おはようございます。昨日からお邪魔してます。ゆうな、ゆうなです。あ、そんな感じです。
「うぇるどぅ?うぇるつ?」凍りそうなアイスグレーの瞳のヴェルツお兄さまに、愛らしい弟君ハェルルゥ、るるちゃん!名前まで可愛い。
お兄さんの方は、明らかに私を詐欺師か何かと思ってますよね? 眼光で溶けてしまいそうです。
弟さんは、好奇心が勝ってる感じ。
くるくるふわふわの髪で、かっわいいの! カイくんもそうだけど、中東系の顔立ちって言うのかな? 目鼻立ちくっきりで、でも柔らかい印象。
お兄様は、緩やかにウェーブした艶のある髪を高く結っていて、こぼれ落ちる御髪がゴージャスです。凍えそうな視線もご褒美に思えてきました。踏んでもらいたいランキングがあったらTOP10入りは間違い無いでしょう。
くむくむ星の煮物は煮物と言ってもなんかスパイス効いてて、和食とは違って最初びっくりしたよ。山椒とか、八角は絶対入ってたね。
漬物は塩じゃなくて糠だったんだよ。ぬか漬けさいこー! やっぱり塩は貴重かな?
私と奥様が席につくと、くむくむしてからいただきますとなった。
煮物は変わらずスパイシーで、漬物はあっさり。おひたしもコクと甘みのあるソースがかけてあって濃厚でおいしい。これはおそらく木の実のソースですね。
五穀ご飯のおにぎりはあわがプリプリ、麦がブチブチ、ご飯がもちもちでお口が幸せになります。
この鉢はなんだろう? 大きさの違うオレンジ色の玉が何個か入っている。
くむくむ言われて、差し出さされたけど、なんで私から?1個食べて返せばいいか、イザ実食。
うん、緩めのかまぼこみたいな不思議な食感で、舌触りはまろやか。甘辛スパイシーに味付けされても分かるほどのコク、これはご飯が進むくんだね。
「ラディズゥン」
頬っぺに手をやって、美味しいアピールをしながら、習った単語を使ってみる。
ジュノィ村長は大喜びでもっと食えくむと言っているけど、遠慮してみんなにまわす。
タダ飯ぐらいなのにおかず多いとか、申し訳なさすぎるよ。
皆にも鉢は大好評で、特にジュノィ村長はこれが大好物だったみたい。
唐突に村長が腕をバタバタして、オエオッオーっと鳴く。あ、うん、突然始まったけど、チャボね。村長さん今はご飯中ですよ?
丸めた手ぬぐいをきばった演技をしたあと、お尻からぽんと出す。うん、卵ね?村長さん今はご飯中ですよ?!
横、横見てください。貴方の息子さん、眼から絶対零度ビーム出しそうですよ?
お腹を手刀で切った仕草をして、丸めた手ぬぐいを出す……村長さん今は……
なるほど……
だから毟りの功労者たる私に真っ先にくれたわけですね。大切なタンパク源ですしね。
あんなふうに、大っきいのからちっちゃいの迄、既に体の中にあるのですね。生命の神秘を感じます。
あ、いえ私はもう結構です。大切なタンパク源。やはり力を使う男集が頂くべきかと。
ちょ、カイくん、良いから。私は良いから!食べ
そこ、るるちゃんも笑ってないでお食べなさい、大きくなれませんよ。
私はこの煮物と漬物で充分ご飯が頂けますので。あぁ、煮物が美味しい。ふぅ、お腹いっぱい、沢山頂きました。ご馳走様でした。
◆◇◆
心尽くしの朝食をいだいて、いざ村を散策にと思ったら、奥様が着物を下さりました。やはりくむくむ村でこの格好は異様なのでしょう。
奥様が着ているような、お着物に羽織を羽織るタイプと。カイくんが着てる上着の豪華版に(房とか付いてて、紐が紅くて綺麗なの)、裳のセット。
ちょっとひだがあるガウチョパンツって感じ。
奥様!あかん、これ触ったら分かる高っかい奴や。私は作務衣で充分ですよ。
身振り手振りでカイくんと同じ服を要求したけど奥様が折れず、結局ガウチョのセットの方を頂いきました。本当に何から何までありがとうございます奥様。この御恩は何時かお返しします。
着替えるのも奥様に手伝ってもらって、綺麗に着させて頂きました。「くむ!くむくむんくむくむてぃんくむ!」まぁ、夕菜さん凄いお似合いですよ! っと、奥様が両手を握りしめて褒めてくださいます。 多分。
表情的に悪くは無いはずです。
けれど私は不安です。何故なら上が白で下が紅。そう、巫女色なのです。バイトでも無いのに巫女服を着ると言うのはなかなか勇気が要ります。
はしゃぐ奥様に背中を押されて、広間に出るとカイくんが待って居ました。軽く眉を上げただけ、無表情でくむくむ言ってくれました。
奥様がカイくんにくむくむ教を始めます。いいんですよ奥様、カイくんはお世辞を言い慣れていないだけなのです。私はそんなカイくんでいて欲しい。
あ、履物まで用意してもらってありがとうございます。
なんて言えば良いんだろ? い草かな? ツルツルした素材で固く編まれてて、縁が紅の布で縁取られてます。草鞋の紐付きって感じですかね。白い足袋にクロスして結ぶと赤い紐が映えてが可愛いです。
やっと、やっと村を見れる!
初日は魂抜けたし、村長宅へ直行したからろくに見れてないんだよね。
楽しみーーー。
さあ、いざ村へ!
あ、奥様。みうにお洋服はいらないと思いますよ。
足? 猫ですから、あ、あの、奥様?
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