第7話

 

 ねぇ知ってる?

 人力で脱水することの難しさを。




 私に驚いたみうが頭を落としたので、ちょうど頭を置く当たりに血がついた。

 いや、ちょっとだよ?かすかすの、クレヨン軽く滑らせた跡みみたいな感じだけどさ。


 でも、今日これで寝るんだよ?いい夢見てしまいます。


 1日しか寝てないのにシーツを洗濯なんて、洗濯機のある現代でもお願いしづらい。


 ましてや、此処はくむくむ星。きっと洗濯は重労働。

 しかも相手は言葉も通じない、猫を連れた怪しい女。そんな女をこころよく受け入れ、泊めてくれた家の方に、こんな小さな汚れでシーツ変えてくれなんて言えない。




 でも夢見ちゃうから、ね?




 シーツを引っペがした私は、三度洗い場へやって来た。この、握りこぶしの範囲だけでいいからこっそり洗おう。付いてすぐなんだから水洗いでも落ちるはず。


 重ねられたたらいを拝借して、水をはる。一部だけでいいので、そこをとんがらせてくしゅくしゅ揉む。あっさり血は落ちた。ほっ


「ゆーなくむくむくーむ」


 ひぁぃい!

 あ、コーディーさん。いえ、これはなんでもないんです。

 え、この汚水みたいなものがはいったタライに入れる?いえいえ、もう終わったのです。

 私のシーツは真っ白です。


「くむくむ、くーむんかくむくむくめ!」




 あ、はい。




 洗い場でシーツを持ってくしゅくしゅしていた私を見たコーディーさんは、物の分からない私に洗濯の仕方を教えてくれる気満々のようです。


 か弱い私の腕からシーツを引き抜き、灰色の油の浮かんだたらいに突っ込んで実演して見せてくれました。




 アリガトウゴザイマス。




 その後、コーディーさん指導の元、泡立つ不思議な実の入った水で濯ぎ、もう一度水たらいに付けました。


 あとは干場の主柱に付いている鉄のフックに、シーツの真ん中を引っ掛けてひたすらにねじるのです。




 ねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじねじ……




 肩から腕に乳酸が溜まり、手のひらが痒くなってきました。後どれだけ捻じれば良いのでしょうか?


 どんぐりを白い前足で、ていていして遊ぶみうが憎たらしく見てえ来た頃、OKを頂きました。


 畳んでパンパンシワを伸ばしたあと、干したら終了。青い空に白いシーツが眩しいです。


 尊い動労でかいた汗を腕で拭い、腰に手を当て仁王立ちで空を見上げる私に、次の洗濯物が手渡されました。




 あ、はい。

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