第50話 雪の下には

この世界には雪の下にだけ姿を見せる幻のキノコがあるという。

大変に美味しいらしい。

王様は2回食べたことがあると言っていた。

ユキノさんは食べたことがないらしい。

温泉町は雪が降っても積もらない。

温泉町から10km進んだ森は積雪がある。

そのマボダケはその地点より先にあるらしい。


ということでマボダケ狩りが実行されることになった。

メンバーは私とユキノさんとサオリさんとカオリさんとこの森をよく知っている猟師2名と護衛が4名だ。


「案内はしますけど私たちもひと冬に1回見つければいい方ですから期待はしないでください」


猟師からはそのように伝えられた。

王様たちはだいぶ期待しているんだけど。


実はマボダケは探索魔法に引っかからないという不思議を持っている。

だから見つけるのが大変だ。

肉眼で見つけなくてはいけない。


ただ今回は秘密兵器がある。

上級の鑑定と上級の探知魔法と上級の隠蔽打破を合成した魔法でマボダケ探しに特化した魔道具だ。

ユキノさんとサオリさんとカオリさんで開発した。

まあ、私も手伝いましたけど。

みんな気合が違うよね。

全く変な所にエネルギーを注いでいるよね。

え、当然だって。


現地までは途中から犬ぞりを利用した。

いや、こんなのがあるんだ。

犬ぞりなんて乗るのは初めてだよ。

犬ぞりで30分ぐらい移動すると予定していた地点に着いた。

マボダケが生えていると雪が盛り上がっているという。


「ここなんかそうだよね」


掘ってみたらキノコがあった。

高さ20cm、傘の直径が20cmぐらいの白い斑点のついたキノコだった。

鑑定をしてもマボダケ、猟師さんに見せてもマボダケだった。

不思議な事に何となくあるところがわかるぞ。


ユキノさんたちはそれぞれ魔道具を持って探しに行っている。

3回掘っても1回しか見つけられないようだ。

それでもすごいよね。

猟師さんの一人が見つけ出して小躍りを踊っているよ。

警備は護衛の騎士がかわるがわる務めてくれている。

1時間のうちに私が134本、ユキノさんが27本、サオリさんが22本、カオリさんが21本、猟師さんが1本、195本のマボダケを見つけた。

正直に言ってすごい収穫だ。

根こそぎ取っても翌年には生えるらしい。


この日の収穫はマボダケだけだった。

魔物や獣は出現しなかった。

猟師2名と護衛4名には4本ずつのマボダケを配布した。

猟師さんが見つけたものは自分のものにしてもらった。

温泉町の宿で昼食を食べる。

10本のマボダケを使って様々なマボダケ料理を作ってもらった。

私の館には何故か王宮の料理長が来ている。

ユキノさんは知っていましたね。



・・・・・絶品だった。

それ以外の表現は無理だ。

てんぷら、煮物、土瓶蒸し、炊き込みご飯、素焼き。

どれも美味しい。

残り170本は4人で山分けにするか?

王宮がきっとキノコを待っているよね。

王宮には20本、残りの150本を4人で山分け。

これで問題がないだろう。


しかし、雪の中で行動したために疲れ切ってしまった。

護衛の運転する魔動車の中で居眠りをしながら王都に戻る、

更に地球の自宅へと戻った。

寒いけど楽しいマボダケ狩りだった。












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週末は王都で水屋さん TKSZ @TKSZ

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