第35話 水屋カフェ

忙しかった週末の後の月曜日は仕事がきつい。

一日一生懸命働き夕方を迎えた。

職場から帰って来ると、サオリとともに屋敷から水屋に向かった。

カオリは大学の授業が終わるとすぐに帰ってきて水屋に行ったらしい。

扉を通って水屋に着くといい香りがした。

キッチンを覗くとカオリがアリルとナリルにお菓子作りを指導している。

「アリルちゃんはもう魔法でお菓子を作れるようになったよ」

「それは飲み込みがいいね」

「ナリルちゃんは魔法を使わなくてもお菓子作りとお料理がすごーく上手だよ」

「そうか、それではカフェを開くのもいいかもね」

「そうだよね」

「「カフェ?」」

「水屋の中にカフェのスペースを作ろうと考えているんだ。それから君たちには美味しい水の作り方も覚えてもらおうと思うけどどうだろう」

「私たちにもできますか?私たちも水を創れますが少しだけです」

「大丈夫だよ。ただ水を理解することが必要なんだよ。しっかり勉強してもらうことにはなるけどやってみないか?」

「「はい、お願いします」」


美味しい水が何故美味しいか理解できていなければ美味しい水は創れない。

その日の夜からアリルとナリルに理科の講義を行った。

化合物や混合物、目には見えないが水に溶け込んでいる物質の存在、空気中に存在する水蒸気に関して中学校の理科程度の知識がないと美味しい水は創れない。

二人は抵抗なく知識を吸収してくれた。

知識を得た後のは美味しい水を創る実習も行った。

二人とも水魔法の扱い方が大変に良かった。

私がいない空き時間にも本人たちが一生懸命に勉強をしたおかげで次の週末の前には二人は満足できる美味しい水を創れるようになった。

魔力の関係で創れる水の量は多くはないが品質的に問題はない。

二人で1日に300Lぐらいの水を創っても問題ないようだ。


地球の週末と休日と水曜日の夜は水を販売するのは今までと同じにして、水曜を除く地球での平日の昼12時から午後6時にカフェを営業することにした。

水を販売する週末と休日も13時から16時まではカフェの営業もすることにする。

当面のメニューは紅茶とハーブティ-と各種の味のサイダーとタンポポコーヒーとスイーツ。

スイーツはホットケーキとパウンドケーキとお茶のゼリーとクッキーにした。

飲み物には二人の創った美味しい水を使う。

カフェで注文した人にはコップ1杯の美味しい水を出すことにした。


週末土曜日には空き時間を使って水屋の店の一部を仕切ってカフェにした。

こちら側には庭に通じる扉もある。

営業にあたっての商業組合への登録は今回もエコノさんがやってくれた。

そして地球の日曜日、13時から『水屋カフェ』が営業を開始した。


「このシュワシュワとした飲み物が美味しいね」

「このホットケーキも柔らかい」

「私はパウンドケーキが好きかな」

客にはなかなかの好評だ。

特に宣伝はしてなかったのに口コミで広まり、『水屋カフェ』の営業が始まるとすぐにお客さんで店内は満席になった。

庭にも予備の椅子とテーブルを出して対応した。

今日は晴れていたからいいが雨の時は困るから庭に屋根付きのテラスを作ることにした。

3時間の営業時間で用意しておいたものは飲み物もスイーツもすべて予備を含めてすべて売れてしまった。

一部のお客さんには提供できず申し訳ないことをしてしまった。

アリルもナリルも楽しそうに働いてくれていた。

よかった。

客も笑顔、従業員も笑顔の店はいいよね。


夕方からの水の販売も終わり、サオリとカオリの作った夕食を楽しんでいる。

今日は屋敷での夕食はキャンセルしてある。

ユキノさん、サオリ、カオリ、アリル、ナリルそして私で夕食を囲んでいる。

煮物や炒め物や揚げ物やスープなど何種類もの料理が並んでいる。

飲み物も各種のお茶やサイダーやジュースを用意した。

お酒は今回はなしだ。

「それでは『水屋カフェ』の開店を祝して乾杯」

「「「「「乾杯!」」」」」

ちょっとしたお祝いをした。

「で、アリルとナリルは明日からもカフェをやっていけるかな」

「はい、大丈夫です。すごく楽しいです」

「働きがいがあります」

「そうか、それはよかった。明日からカフェの営業しかないけど無理せずにやってね」

「はい、がんばります」

「私も学校が終わり次第手伝うから大丈夫よ」

「ユキノさんも無理はしないでね。それから次の週末の2日目のことよろしくね」

「任せなさい」

ユキノさんやアリルやナリルには週末というものがどういうものか教えてある。

5日の平日と2日の週末。

地球での曜日についても教えてある。

次の日曜日は一族の会合がある。

私は必ず出席しなくてはいけないので朝のうちに水を用意した後、水屋はユキノさんに任せることになっている。

こちらの世界では次の土曜日から5月になる。

ユキノさんも高等学校を終了して休みに入る。

土曜日から頑張るよと言ってくれているけど無理はしないで欲しい。


明日は地球の平日で午後6時間の『水屋カフェ』だけの営業になる。

うまくいくといいのだが。

警備は外にいるからいいが少し心配だな。

明日は職場を少し早退して『水屋カフェ』の様子を見に来るかな。

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