第34話 少女たちの第一歩

翌日、朝の水の販売の後に王宮へと呼び出された。

サオリとカオリも一緒にということだ。

おそらく昨日の事件の事後処理についてだよね。

王宮に着くと王様の執務室に通された。

執務室では王様とウォルト王太子とアリルさんとナリルさんとルビーさんが待っていた。

「まず、アリルとナリルの母親の葬儀を今日の午後に行うが参列してあげてくれるかな」

「はい、わかりました。ウォータ陛下」

「次に今朝早く先代子爵とルビーの母親の再検視を行った結果、家令の持っていた毒と同じものを検出することができた。これで二人が殺されたことが判明した。そして残っていた魔力の残滓の分析や見つかった文書や使用人の証言などからルビーの母親を殺害したのが家令と現子爵の母親の二人、先代子爵を殺害したのが家令と現子爵の母親と現子爵の三人だということが判った。本人たちも証拠を突き付けられて自供したよ。関与していたということで共犯者といえる者は使用人や従者の中に12名いた。残りの12名の使用人は全く知らなかったようだ。おかしいと思っているうちに解雇された元使用人たちも供述してくれており、先代子爵とルビーの母親の殺害に関してはほぼこれで確定だ。ツグル村のアリルとナリルの叔父や村長や警備隊長をそそのかしたのも現子爵たちだった。すでに隣国の商人とともに近くの町の衛士隊によって逮捕拘束されている」

「そうですか。子爵家はどうなるのですか」

「ルビーが当主になる。使用人や従者は王宮の方で選定また派遣する。そこで相談なのだがアリルとナリルを水屋で雇ってもらえないだろうか。人手を欲しがっているとユキノからも聞いているのだが」

「彼女たちには子爵家での生活がいいのでは。またはツグル村の家も戻ってくるのですよね」

「貴族としての生活は嫌だということだ。そして村にも戻りたくないらしい。向こうで頼れる人物も思いつかないらしい。自分たちで働いて王都で生活をしていきたいということだ」

「それで私のところですか」

「タカシ君だったら信用できるからね」

「二人はそれでいいのですか。子爵邸に住んで学校に行った方がよいのでは」

「はい、学校には興味がありますが。自分たちで働いて得たお金で学校に行きたいので是非水屋で働かせてください」

「私も姉と同じ思いです」

確かに今までに村で暮らしていた二人に貴族として暮らせと言うのは大変か。

それに混乱が続いている子爵家に彼女が入るのは使用人や従者の間に無用な争いを起こす原因にもなりかねない。

「学校といえば7月から新しくできる学校は9時から12時の半日というコースがあるけどけどそこなら授業料も安いしどうかな」

「いいですね、ウォルト様。そこを後で教えてもらえますか」

「いいよ」

「よろしくお願いします。それでは二人には住み込みで働いてもらいましょう。学校へも行ってもらいますけどね。二人ともいいか」

「「よろしくお願いいたします」」

「タカシ様、妹たちをお願いします」

「はい、ルビーさん。貴方も子爵家のために頑張ってください」


私たちは水屋に戻り昼の水の販売を行った。

そして午後はアリルさんとナリルさんの母親の葬儀に参列した。

亡くなってから数日が経っているので早めに葬儀と埋葬を行わなければならないらしい。

葬儀は神殿で行われ、ウォルト王太子とユキノさんも参列した。

ルビーさんやアリルさんとナリルさんの母親が以前王都にいたころの知り合いも駆けつけてくれた。

葬儀そして埋葬後、アリルさんとナリルさんの二人を連れて水屋に戻り、夕方の水の販売を行った。

休んでいるように言ったが販売の様子を見ていたいというので店にいてもらったら途中からは販売のお手伝いもしてくれた。

二人には寝室の一つを与えた。

「二人で一室になってしまって申し訳ないな」

「いいえ、私たちは一緒の方がいいのです」

「そうか、まずはここの生活に慣れてくれ。明日は店はお休みだから王都を見学してきなさい。ユキノさん、悪いね。学校が休みなのに」

「任せてください。キッチンには食材も揃えておきましたから使ってくださいね」

「二人とも料理は大丈夫だよね」

「はい、料理を作るのが大好きです」

「それはよかった。二人は魔法は使えるよね」

「はい、二人とも水魔法が使えます。私は風魔法と火魔法を組み合わせて使って料理も魔法でも作れますよ」

「え、アリルちゃんは料理魔法ができるの」

「カオリ様、料理魔法というのですか?」

「私も最近組み合わせて料理をしているんだけど料理魔法として固定できるようになったんだよ」

「私はまだ不安定です。あくまでも組み合わせです」

「それじゃあ一緒に頑張ろう」

「は、はい」

アリルさんはカオリの勢いに負けているな。

「でもナリルは私よりすごいですよ。植物の育成を速める魔法が使えます」

「それはすごいね」

魔力もそこそこ多いし、これは子爵家にいたら一波乱起こしてしまうな。

だから私のところに『預けた』のか。

王宮で囲ったら問題になるし賢者様の後継者の弟子なら問題がないという訳だ。

水屋の中の使い方を説明した。

書斎と倉庫は許可なく入ることは禁止した。

翌日学校が休みのユキノさんが私の寝室に泊まっていくというので任せて屋敷に帰った。

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