第33話 子爵家の闇
サオリとカオリに付き添われたアリルさんとナリルさんは神殿へ向かった。
もちろん近衛衛士が護衛をしている。
私はユキノさんとハルテ子爵邸へ向かう。
子爵邸の近くには王都の警備と事件捜査を行う王都衛士隊と貴族に対する捜査権を持つ近衛衛士隊がウォルト王太子に率いられて待機していた。
「すみません。夜遅く」
「いや、一刻も早く解決しなくてはならないことだからね」
今回は王都衛士隊と近衛衛士隊が合同で問題解決にあたる。
今回の子爵邸内捜索の目的は5つ。
先代子爵令嬢のルビーさんの救出。
アリルさんとナリルさんとその母親から奪った指輪などを発見して3人に対する仕打ちを証明する。
アリルさんとナリルさんへの殺害未遂と二人の母親を殺害したことに対する証拠の確保。
ルビーさんの母親と先代子爵殺害容疑の証拠確保。
最後の一つは・・・・・・・・・。
裁判所と王宮から捜査令状が届いた。
王権の強いアクア王国でも流石に現行犯以外での強制捜査は横暴だ。
権力が暴走しないようにする安全装置がある。
その一つが捜査令状だ。
今回は貴族が相手なので王宮からも捜査令状を発行している。
アリルさんとナリルさんとその母親から強奪と二人の母親を殺害したことに対する容疑だ。
捜査令状を見せられた子爵邸の門番はすぐに門を開けてた。
ここで従わなければ直ちに捜査妨害で拘束される。
門番には屋敷に連絡する隙も与えない。
直ちに屋敷内に突入する。
私とユキノさんと近衛衛士隊の捜査員は事前に水蒸気を利用した魔法で探知しておいた地下室に向かう。
そこには間に合わせで作られた牢があった。
そして女性が一人横たわっている。
「ルビー、大丈夫!」
ユキノさんが声をかけるが反応がない。
毒によって意識を失っているんだ。
「体内の毒を抽出します」
捜査員にもわかるように告げる。
捜査員の一人は鑑定ができる衛士だ。
彼もルビーさんの体内の水溶性の毒を確認したことが告げられた。
捜査員に毒を回収する容器を持ってもらいそこに毒回収する。
「タカシ様。毒の抽出を確認しました」
毒のほとんどを体内から回収したことでルビーさんが徐々に意識を取り戻した。
意識を取り戻したルビーさんにユキノさんが解毒薬と回復薬を飲ませる。
これで安心だ。
ルビーさんを担架に乗せて子爵邸の広間に移動した。
捜査員は様々の物を証拠品として確保した。
いつ毒を盛られたがわかるかもしれない。
ウォルト王太子とその護衛は屋敷内にいるすべての者を広間に集めて監視している。
抵抗したり、暴れる者はいなかったようだ。
王太子の前でそのような事をすればそれだけで罪になる。
その他の衛士たちは邸内を捜索している。
そして次から次へと報告が入った。
ルビーさんに使われた毒が家令の部屋から見つかった。
家令がアリルさんとナリルさんとその母親から強奪した指輪は現当主の母親の部屋から見つかった。
アリルさんとナリルさんが子爵の子供であることを証明する書類は破かれてごみ捨て場から見つかった。
そして様々な先代子爵の殺害を示唆するような書類やメモが家令や現子爵や現子爵の母親の部屋から見つかった。
(何でこんなものを残しているのだか。互いに信頼していなかったのか)
全員の指紋をとった。
書類などについている指紋と照合するためだ。
この世界でも指紋が個人の特定に役立つことが師匠の論文にあった。
道具も師匠が残したものに存在した。
そしてもう一つ師匠が残した捜査に役立つものがあった。
血液型検査キット。
それは水屋の倉庫の冷蔵室に置いてあった。
唾液からでも検査できるタイプと血液や組織から検査できるタイプがあった。
実は私の溶液を鑑定できる能力が徐々に向上してきており溶液中にある物も鑑定できるようになってくれていた。
血液型に関する知識のお陰だが血液型も細かくわかるのだが、それでは証拠にはしにくい。
すでにアリルさんがA型でナリルさんがB型だとわかっている。
二人からの話から母親がO型の可能性が高いと感じたがサオリさんたちからの報告で3人の血液型の確認が取れた。
アリルさんがA型でナリルさんがB型で母親がO型なら父親の先代子爵の血液型はAB型だ。
しかし、私の鑑定では現子爵はO型だった。
現子爵の母親はA型、先代子爵がAB型ならその子がO型ということはあり得ない。
父親の血液の遺伝子型がAOかBOかOOでなくてはおかしいのだから。
私の鑑定だけでなく実際に血液型検査を行った。
そして私の鑑定した通りの結果が出た。
では現子爵の父親は誰か?
見つかった書類やルビーさんの持っていた先代子爵の遺品、そして身体的特徴から家令が現子爵の父親だとわかった。
鑑定の結果から家令がO型だとわかった。
もちろんキットを使って血液型検査も行った。
今までに調べた結果をウォルト王太子と操作責任者の了承を得て彼らに伝えた。
現子爵とその母親は観念したようだ。
「簒奪だな」
「そういうことですね」
暴れようとした家令は衛士に取り押さえられている。
現当主とその母親は猿轡と魔法封じの手錠がかけられている。
使用人もこのあと取り調べがある。
共犯もいる可能性が高い。
ルビーさんはユキノさんらに付き添われて神殿に向かった。
幼いころに母親を亡くした彼女にとってアリルさんとナリルさんの母親は何時も側にいてくれた優しい母親代わりの存在だったらしい。
その死に驚き、涙していた。
今、母親の死を悲しんでいる妹たちのもとへと向かっている。
まだ捜査は始まったばかりだ。
子爵位の簒奪。
ルビーさんの監禁・殺害未遂。
アリルさんとナリルさんの母親殺害。
アリルさんとナリルさんとその母親からの金品強奪。
ルビーさんの母親殺害容疑と先代子爵殺害容疑。
これは明日遺体の掘り起こしと検死が行われる。
誰がどの程度関与していたのかも含めて捜査していくことになる。
捜査終了までは時間がかかりそうだ。
あとは捜査担当者に任せることにして私は神殿によってサオリとカオリとともに帰ることにした。
公園で二人の少女を助けてからの大変な半日だったがまだすべてが解決したわけではない。
明日は朝から水の販売だな。
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