第31話 屋敷で花見を

水屋の書斎で魔導コンピュータの師匠に訊いたら転移の認証の腕輪とネックレスは水屋と屋敷の両方に予備があることが判った。

水屋の書斎には隠し金庫のような形で収納の魔道具が隠されていた。

ここには貴重なものが収められているらしい。

屋敷の書斎には隠し金庫がありそこには貴重な品が入っていた。

これでユキノさん以外にも地球の屋敷に呼ぶことができる。


地球の日付で4月4日に屋敷の庭で花見を行うことにした。

庭にはソメイヨシノが5本と八重桜が1本、そしてヤマザクラが2本ある。

他にもサクランボ向けのサクラが2本ある。

ソメイヨシノと3本と八重桜1本とヤマザクラ1本があるところを天幕で囲って花見の会場にした。

使用人には私たちだけで料理さえ用意してもらえれば後は私たちだけで行いたいという旨を伝えてある。

最近になって地下室に特別な部屋があることに気が付いた。

書斎は2階だが、地下に繋がる秘密の階段があり、そこに地下室があった。

その地下室から庭に出る階段があった。

階段は今回の花見会場の横にある小屋に繋がっていた。

この小屋は私が実験室として使っており、使用人は入らないことになっている。

その小屋の隠し部屋が地下への階段の入り口だった。

この経路は途中に様々な仕掛けがあるので認証のネックレスを着けてないと大変なことになるようだ。


当日は私とサオリとカオリ、王様と王妃様とウォルト王太子とユキノ王女、そしてカオリさんの両親が出席した。

「これが地球のサクラか。圧倒される美しさだな」

「そうですね、アクア王国にもこんな花が咲くところがあれば民衆も喜びますね」

王様も王妃様もソメイヨシノの美しさに感動しているようだ。

ソメイヨシノの苗は運べないだろうね。

運べれば師匠が運んでいそうだが。

苗って物なのかな?

いい方法がないか考えてみたいなあ。

「葉が出る前に咲き終える桜はないのですか」

「いや聞いたことがないな」

「あればそれを品種改良できないかと思いまして」

「そうか。少し調べてみるか。タカシ君、手伝ってくれるよね」

「そうですね。王都の皆さんが喜んでくれるのならやりたいですね」

「タカシ君はいつも民衆の事を考えてくれる。本当に優しいよね」

「タカシお兄さまですから」

「流石、タカシさんですね」

みんなの評価が高すぎてこそばゆい。

でも、アクア王国王都ブルーの公園で花見なんていいよね。


「そう言えば温泉町の方はどうなのかな」

「地球は年度初めで忙しくて、なかなか休みが取れなくて。地球の4月末から5月初めに祝日がありますからそこで少し進めたいと思います」

「タカシさん。一族の会議の方の事も忘れないでくださいね」

カオリさんのお父さんにいわれた。

「あ、そうですね。そちらの会議の方は水屋の方の休みを取らないといけませんね」

一族の長を決める会議は4月下旬の日曜日に行うことになっている。

「水屋は私に任せて。水さえ用意してくれれば販売は私たち学生が行うわ」

「そうかアクア王国ではその日は5月になっているんだね。学生さんたちは休みに入っているんだね」

「ええ、そうよ」

「それではユキノさんにお願いしようか」

「いいわよ」

一つ問題が解決したな。

「タカシ君。温泉町というか君が言う温泉リゾートへ行く方法は魔動自動車を運行するつもりなのかな」

「初めはそれも考えていますが、鉄道も考えているのです」

「鉄道?」

「はい、近いうちに案を持っていくつもりだったのですが、これをご覧ください」

王様たちにタブレットを使って鉄道の動画を見せた。

王様たち4人は食い入るように動画を見てくれている。

動画に引き付けられたのか、鉄道に引き付けられたのか。

まあ、両方かな。

「今、温泉町まで敷設したいと考えている鉄道はここまでは速くはできませんが、それでも今までより速い速度の移動が可能になります。鉄道はとても便利な交通機関ですから温泉町だけではなくアクア王国の他のところにも作りたいと思います」

「確かにこの鉄道によって国内の交通を便利にできたら素晴らしいな。魔動自動車より速く移動できるのだよね」

「はい、かなり速くなりますし、一度に多くの人や荷物を運べます。先ほども言いましたが、まずは王都から温泉町までの鉄道を作りたいので許可をお願いできますか」

「いいぞ。こちらからお願いしたいところだ。鉄道は街道沿いに敷設するのかな?まあ詳細は王宮に帰ってからだな」

「はい、できるだけ早めに案をまとめます」


その後も王様たちは花見を楽しみ、料理を楽しみ、満足して水屋を経由して王宮に帰って行った。

花見は大成功だよね。

桜の事で考えさせられたが地球の物をアクア王国に持っていく方法を考えたいな。

これも要検討だね。

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