第30話 新年度
アクア王国の方は4月になったが地球の方はまだ3月下旬の年度末だ。
サオリが私の部下になることは知らされていたがそれ以外の組織配置は3月25日に発表された。
私のいる部門は私が長となり研究所長の直属になった。
お陰で年度末の1週間は忙しかったが残業や休日返上はせずに過ごせたのは不幸中の幸いというべきか。
水屋の方の営業にはリズムができてきたのがよかった。
週末は朝5時から水を用意して、6時から9時まで朝の営業。
9時から11時は休憩してその後30分で水を用意して11時半から1時半が昼の営業。
3時半から水を用意して4時から7時が夕方の営業だ。
一方で温泉町の方は手付かずになってしまっている。
アクア王国のある世界では年度の考えはないようだが学校は7月1日始まりの4月末終了の10か月の学校生活だ。
成績不振者は5・6月に救済措置を行うらしい。
学校制度は初等学校4年間、中学4年間、高校4年間、大学2年間だ。
義務教育はない。
ユキノさんも7月からは大学生だ。
ここアクア王国では学校というものは卒業でなく修了となる。
そして何を履修してどのような成績かが重要になる。
この国の学校の制度には師匠が関与しているということだ。
大学という専門教育機関を創設したのが師匠だという。
大学に入ると自由時間が増えるとユキノさんが喜んでいた。
優秀な成績を残しているユキノさんは高校修了後、大学が始まるまでは完全な休暇になるという。
彼女の大学に行ってからの専門は魔法研究だ。
高校では領地経営や政治学や経営学や教育学について学んでいる。
温泉町については彼女もやる気に満ちている様で色々な案を提起してくれている。
ユキノさんのこの知識を活用していきたい。
地球でも4月に入って新年度になりそれぞれが新しい生活に突入した。
カオリは大学が始まると忙しくなってくる。
入学式は4日だ。
サオリは初日からすぐに職場に慣れたようだ。
安心したよ。
4月1日は職場の恒例で午後から研究所の一角でお花見が行われる。
これは師匠が始めた行事だ。
職員は全員必ず出席。
そして勤務扱いだ。
職員の輪が大事だからこういうことは大事だよと師匠にいわれたことがある。
家族の出席も大丈夫だ。
むしろ推奨されている。
中には自分の勤め先では有給休暇を取って出席する家族も多くいる。
当然、会費は家族を含めてなし。
外部の業者がセッティングから料理の提供、そして片付けまですべてやってくれる。
外部業者は社長自ら出て花見のために力を尽くしてくれる。
以前雨の時には桜まで覆う仮設の屋根まで設営してくれた。
で、この社長は先日のサオリとカオリの引っ越しの後の宴会にもいた。
沢山の食材を持ち込んでくれた親戚の一人としてだ。
つまりこの外部業者は一族が経営しているわけだ。
私も引っ越しの時に初めて何度も会話をして事のあるこの社長さんが親戚の一人だと知った。
この外部業者には研究所の行っている行事などを手伝ってもらっている。
研究所の一般公開や科学教室・自然観察会などだ。
今、研究所の近くに常設の博物学の展示場所も計画しており、その展示もその業者が準備している。
今年はこの研究所を運営する財団の理事も出席した。
つまりカオリのご両親らだ。
私とサオリの両親も私の家族枠で出席した。
そして、
「タカシさん、桜ってこんなにきれいなんですね。そして花びらが舞う姿は儚いとい感じがします。連れて来てくれてありがとうございます」
「ユキノさん喜んでいただけてよかったです」
ユキノさんも花見の宴に連れて来た。
この日の午後は彼女も都合がついたのでちょうどよかった。
桜はアクア王国にもあるが葉が出る前に咲き終わるソメイヨシノのような桜はない。
ユキノさんは花びらの舞う姿を見入っている。
ユキノさんが来るにあたってカオリのご両親にも相談したところ、警備も含めてすぐに了承してくれた。
迎えにはカオリが水屋まで行ってくれたので助かった。
「タカシさん、ユキノさんに見惚れている?」
カオリが耳元で囁いた。
突然の攻撃で顔が一気に赤くなってしまった。
サオリ・カオリ・ユキノさんは花見の参加者から注目を集めている。
3人とも美人だからね。
しかし、私の側にいる彼女らに近づいて来る人たちは一族の関係者だけのようだ。
魔法陣で結界でも張ったのかな。
ユキノさんはこちらの軽い食事にも満足してくれたようだ。
「こういう感じの行事があちらにもあればいいのに」
「そうですね。向こうには祭りとか無いようですね」
「はい、庶民が楽しめる行事がありません」
今日は定刻までは花見に参加しなくてはならない。
今回は付き合いは悪くて申し訳ないが私は定刻で帰ることにした。
迎えの車でユキノさん・サオリ・カオリとともに屋敷の戻る。
すぐに水屋を経由して王宮までユキノさんを送りにいった。
王宮では王様・王妃様・ウォルト王太子が待っていた。
そのまますぐにお帰るわけにはいかずどんな花見だったか訊かれた。
来年は自分たちも参加したいと言っているけどちょっと大丈夫かな。
仕方ないから地球の屋敷にある桜でも近いうちに見せてあげよう。
だけど腕輪とネックレスは足りるかな?
そんなことを考えてサオリに連絡した。
そして次の金曜日の夕方、屋敷で花見を行うことになった。
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