第29話 年度末の日々
温泉リゾートの計画の詳細はゆっくり話し合えばいい。
週に一度、塩を納品して水屋で美味しい水を販売するという週末を過ごしている。
ボウリ領での事後処理も終わったようでウォルト王太子も無事に王宮に戻って来た。
魔動自動車もすべて戻ってきたが王様から頼まれて2両を貸し出してある。
水屋の方では貴族や富裕層や食堂からの要請で水曜日の夜、大口予約の納品を行うことになった。
納品時刻は21時ということにしようしたが一度に多くの馬車が集まって近所迷惑になるので20時40分から10分おきに22時30分まで12回に分けた。
1回に馬車が4台、20Lの瓶で平均20瓶を納品している。
収納の魔道具に納めておいた美味しい水の入った瓶を馬車の中に出すだけだから納品は簡単だ。
それでも水の準備と合わせて約3時間の残業は忙しい。
水曜日の午後と木曜日の午前は半日ずつの有給休暇を地球の職場で取るようにした。
他にもちょこちょこと1時間程度の休暇をとったお陰で持越しができない分の有給休暇をすべて年度末までに解消することができることが確定して上司からも感謝された。
週末と水曜日の夜はサオリとカオリが水屋の手伝いに来てくれる。
二人とも卒業式が終わっている。
卒業旅行とかにはいかないのかと訊ねたら、
「タカシさんが連れて行ってくれれば喜んで」
と返されてしまった。
通勤は屋敷から行っている。
職場に駐車場が準備されてそれを使っていいということになった。
何も言わないうちにそうなっているというのは一族の関係か?
この職場自体が一族の関係の場所だ。
よく考えると一族の長になるということだが一族という組織についてはあまり深いところの事は知らないことに気が付いた。
正式に一族の長になるのは4月の一族の会合で決まるらしい。
単に一族の長になるだけなのだろうか。
大変な義務が生じるようないやな予感がするのだが。
職場の方は普通は7時50分に屋敷を出て8時20分に職場に到着、8時30分から勤務する。
12時から13時昼休みで16時30分終業、17時10分帰宅という生活を繰り返している。
サオリは事前研修で3回職場に来た。
配属は私の部下だった。
どこかに意図的なものを感じるのは私がひねくれているせいか?
私の所属部門では水質環境の研究とその環境保持の研究と実行だ。
私の仕事においてフィールドワークも多いのだが、この年度末の時期は書類の整理や報告書作成が多くなる。
この時期に残業をしなくて済むようには事前から計画的に仕事を行っているおかげで定刻に帰宅している。
そんな日々が続く中、王宮から昼間に王宮を訪れることのできる日について問い合わせがあった。
ちょうど祝日が近づいていたのでその日を答えておいた。
早い話が春分の日だ。
ではその日の9時に水屋に迎えに来るということだった。
正装をして迎えの馬車で王宮に向かった。
10時より、先日のボウリ伯爵討伐の恩賞の授与が行われた。
私には先日見てきた温泉町とその周辺と王都に2か所の土地をもらった。
王都にもらった土地はボウリ伯爵の屋敷の跡地と塩商人の一人の商店の跡地だ。
これで温泉町のどうするか計画に着手しなければならなくなってきた。
温泉町は現在、軍が樹木の伐採や整備をしてくれている。
そのようにして年度末の日々が過ぎていった。
新年度はどのような事が起きるのだろうか。
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