第28話 温泉リゾート計画

次の日も朝から水の販売を行った。

6時から10時までの営業だ。

サオリとカオリも手伝ってくれたので楽になった。

昨日が遅かったので一人で販売を行おう思ったのだが二人とも準備して書斎で待っていてくれた。

二人が手伝ってくれたので屋敷の方での朝食を交代で食べに行くことができた。

使用人からは何故一緒に食事に来ないのかは訊かれない。

私の秘密には触れてはいけないこととそれを守らなくてはいけないことはわかってくれている。

彼らには感謝だ。


水の販売を終了した10時からサオリさんたちと王様からの褒美について何をお願いするか話し合った。

王様からは屋敷なら王都の一等地に4つぐらいが妥当だと言われた。

でも屋敷4つってどうするの?

貸すのかな?

そう思っていたら小さな町1つでもいいぞと言われた。

そのことも含めて考えるか。


「町づくりなんて面白そうね。魔道具を沢山使った快適な街。王都の人が気軽に体を休めに来れる町。タカシさんどうですか?」

「カオリが言うのはリゾートという感じかな」

「はい、そうです。アクティビティもあるといいですね」

「うん、いいかも。タカシさん、この近くでは温泉はあるの?」

「温泉が湧きだしている場所があるけどあまり利用されていないようだよ。サオリは温泉があるリゾートを希望なの?」

「はい、できれば」

あとで知ったことだが王族の別荘や高位貴族の別荘には温泉が付いたところもあるらしい。

一方、平民には温泉は相当裕福な商人でなければ入ることができないらしい。

私の目指すもののことを考えると民衆が気軽に利用できるリゾートというのもいいな。

そういうものがあれば王都の人たちの心を豊かにできるだろう。

造るとしたら数年計画かな。


昼食後、サオリとカオリを伴なって王宮に向かった。

手土産にカオリが菓子作り魔法で作ったスイーツを持って行った。

こちらの世界に来るとカオリも魔法がより細かく使えるようになるらしい。

早速、王様のリビングに通された。


「いや、カオリさんのケーキは美味しいな。止まらんよ」

「陛下、ユキノの分をちゃんと残してくださいよ。またユキノに氷漬けにされますよ」

「それなら王妃が残せばよいだろう」

「私の分は私の物です」

王様も王妃様もケーキに夢中で全然話に入れない。

それよりまだ昼食から時間が経っていないよね。

ああ、ケーキは別腹ですか。

あと、ユキノさん怖いね。

氷漬けって死んじゃわない?

「ウォータ様、褒美の件についてよろしいでしょうか」

「お、おう。あまりの美味しさに夢中になってしまった。あ、ユキノに私が氷漬けにされた件は忘れてくれ」

「あ、はい。褒美をいただけるという件ですが私たちで話した結果、『温泉リゾート』を作りたいなということになりましてそれに協力していただきたいのですがいかがでしょう」

「『温泉リゾート』って温泉のある町か?」

「そんな感じです」

「昔、王都から北に30km行ったところに温泉を楽しめる街を賢者様が造ったのだが、初めはよかったもののそのうち寂れてしまって現在は源泉が残るだけになっている。廃墟だな。タカシ君が造っても大変じゃないかな」

「何故、寂れてしまったのですか」

「遠いのと高いのが原因かな。高級志向が強すぎたと思っている」

「そこを見せていただけないでしょうか」

「ああ、いいぞ。国の直轄地だから周辺も含めて褒美として与えることに問題がない。見て来い」


王宮から出た私とサオリとカオリは魔導自動車で昔の温泉町へ向かった。

道が整備されており50分で到着する事ができた。

馬車だったら1日はかかるかな。

温泉町の「廃墟」は山間の静かな湖のほとりの北側にあった。

周囲は高さ4mの外壁で囲まれていた。

東西1800m南北600mのその中には温泉の源泉が4か所もある。

北側には山がそびえ、その麓には深い森が広がっている。

東側を流れる川は山の渓谷から湖へと流れ込んでいた。

街道は湖の南側に通っている。

そこから湖の西岸を通り町の西側にたどり着いた。

護衛の衛士が西門の鍵を開けてくれた。

無人になった町は魔法によって強化維持されている建物も多く廃墟というにはきれいすぎた。

しかし、植物が繁茂しており、これをどうにかしなくてはならないのは一目瞭然だった。

王様からもらった資料によると高級旅館12軒、商店26軒、住宅132軒、従業員寮6棟、公共施設が8棟などがあったらしい。

そのまま使えそうな建物は7割というところか。

温泉も問題なく湧きだしていた。

充分に使えそうだ。


「どうかな、ここにリゾートを作るのは」

「いいよ、賛成」

「時間がかかると思うけどじっくりやりましょ」

「それでは決定だね。師匠がうまくできなかったのをその遺志を継いで私たちで立派な温泉リゾートにしよう」


王宮に戻り、王様にここを『温泉リゾート』として再生させたいと伝えた。

実際に下賜されるのはボウリ領の紛争が終結してからになる。

それまでにどのようなリゾートにするか考えよう。

今日は屋敷でゆっくりと夕食が楽しめそうだ。

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