第25話 妹と許嫁の魔法

サオリとカオリが引っ越してきた日の夕食はパーティーのようになった。

どこからか一族が20人ぐらい集まった。

翌日の事もあるので早めに切り上げたが。


カオリさんにはさん付けを禁止された。

ということでカオリと呼んでいくことになった。

初めてそう呼んだ時の笑顔にぞくっときてしまったのは内緒だ。

パーティー?の後、一緒に暮らす二人には水屋の営業の現状とこれからの予定を話した。

それぞれの学校の卒業を数日後に控えた二人の今は卒業前の自宅研修期間だ。

地球の4月1日以降は職場と学校で忙しくなる。

忙しくなる前に水屋に行きたいという。

明日の朝から手伝いたいという二人だったが明日は営業の終わった午後に行こうということで納得してもらった。

初めてのところでいきなり販売の手伝いというのは大変だろう。

でも以前に行ったことがあるって言っていたよね。


地球はまだ2月だがあちらの世界では3月1日。

臨時営業を告知してある日だ。

朝5時から美味しい水を準備して4時間の販売を行う。

代理販売を止めたので水の販売を待っていた人も多かった。

来週からは週末だけの営業と考えていたがそうできるか心配だ。

「大口だけでも2日に1回ぐらいの予約販売をしたらどうかな。夜、時間は遅くても私なんかは問題ないぞ」

ライトさんに言われた。

販売しろと暗に言われているわけだな。

ライトさんの店は夜10時までやっているからなあ。

方法は・・・・・・考えてみるか。


朝6時からの水の販売は10時に終了して屋敷に戻った。

昼食までの時間はこれまでにあったことを書斎でサオリとカオリに話した。

そして二人の事、とくに魔法の能力について詳しく教えてもらった。

以前あちらの世界に行ったことがある二人は私と同様、地球よりあちらの世界の方が強い魔法を発動できるという。

カオリは火と風と土の魔法を得意にしているという。

他も使えるのだが本人が言うには役立たないぐらい弱いらしい。

そして魔法を使った物づくりの才能があると師匠にいわれていたという。


「魔法陣も描けますよ。魔道具製作はあちらに行かないとちょっと厳しいようです。魔法陣を使えばできる物もありますが。火や土の魔法はどちらかというと壁を造るのは得意かな。炎の壁と土の壁、壁なら水でもできますよ。それからお菓子作り魔法」

「そんな魔法もあるんだ」

「魔法陣と組み合わせて作っちゃった。今は応用で料理魔法と製薬魔法を研究中です」

「すごいね」

カオリは研究熱心なようだ。

そう言えばサオリは魔力を感知、探知探索、治癒魔法、感知した魔力を媒介として鑑定、結界と魔道具製作だったかな。

「物づくりと魔道具製作は同じことだよね」

「タカシさん違うよ。物づくりでは鉄から鍋を作るようなこと。魔道具製作はその普通の鍋に火にかけなくても煮込む機能をつけること。魔法付与ということだよ。当然魔法陣を組み込んで魔道具にすることもできるよ」

「だからカオリは材料さえあれば魔法道具が作れてしまうのです。すごいでしょ。お兄さま」

「すごいし便利だよね」

「もちろん何でもという訳にはいかないけどね。構造を知ることが大事だよ。そういえばタカシさん魔法陣は描けるの?」

「やったことがないんだ」

「それじゃあタカシさんもサオリ姉さんと練習するしてみる?サオリ姉さんはもう少しで中級だけど」

「サオリも描けるのか」

「はい。まだ初級ですけど。カオリは上級ですから」

「ではサオリ先輩、カオリ先生、お願いします」

「まっかせなさい!」

「はい、お兄さま」


その後、書斎で魔法陣を描く練習をした。

魔法陣がなくても魔法が使えても、魔法陣を使えば魔力が少なくて済むらしい。

魔法陣は補助的にも使えるんだ。

まずは簡単な氷を出現させる魔法陣を厚紙に描くことになった。

インクは特別のものだという。

慎重に描き、できた魔法陣に魔力を注ぎ発動させる。

・・・・・うまくできたようだようだ。

「紙だと変形しやすいので細かい魔法陣には向かないわ。木の板や金属の板は変形しなくていいけど運ぶのが面倒よね。でもこんなこともできるのよ」

カオリさんが腕を突き出すと空中に魔法陣が描かれ、光った。

そして氷がでてきた。

「この方法は頭の中に魔法陣のイメージを定着させないといけないの。だから訓練が必要でわ。適性があれな魔法で取り込む手もあるけどね」


ちょっとやってみた。

目の前の紙に描かれている魔法陣を記憶して頭の中に描きそれに魔力を込めて外に出すように・・・・・・・・。

「「え、」」

「できちゃった?」

魔法陣が空中に描かれて氷が出現したよ。

「流石、お兄さま。私は紙に描いたのを見て練習しても1週間もかかったのに」

「1週間だったら優秀よ。初見でできるなんてタカシさんは天才!?」

「さあ?」

「それにこの氷は大きくてきれいよね。それから今、魔法陣を魔法で頭に取り込まなかった?」

「記憶しただけだと思うんだけど」

「いいえ、無意識に魔法を発動して取り込んでいるのよ」


うーん、そうなのかな・・・・・。

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