第22話 いもうと!?

私の早く王都に帰りたいという希望はウォルト王太子の許可で実現することになった。

司令官は私にもう少しこちらで手伝ってもらいたがっていたのだが。。。。

とは、言っても真っ暗闇の街道を走る速度には限界がある。

街道は直線が多いのでいいのだが路面の形状が問題だ。

轍がある。

このような所を高速で突っ込んだら事故になる。

あとは魔動自動車のライトに釣られて近づいて来る魔物や獣が問題か。

うーん、探知・探索と結界もどきがあるから魔道具を作ってみるか。

持ってきた荷物の中にタブレットのようなディスプレイがいくつか入っている。

しかし、これをどうやって師匠は作ったのだろう。

このタブレットのようなディスプレイに自分の水蒸気を使った探知・探索の魔法と結界の魔法を付与した。

街道がどこにありどのように続いているかを探索して表示できる。

その街道とその周辺に魔物や獣がいるかどうかを探知し、進路を妨害しそうならば結界で排除する。

そんな魔道具だよ。

魔動自動車にも対物理と対魔法の結界が発動するようにはなってはいるのだが魔物や獣にぶつかりながら進むのはちょっと抵抗がある。


私は魔動自動車3台で王都に向かうことになった。

3台ともに魔道具を装備したよ。

王太子の指示で護衛と交代の運転手もつくことにしてくれた。

先頭車両には運転手3名と護衛3名。

運転手も近衛衛士だから護衛もできる。

2台目の中央の車両に私が乗車。

運転手3名と護衛2名。

3台目、最後尾には運転手3名と護衛5名。

後方の監視をしてくれるために護衛の人数が多い。

後方の警戒は疎かになりやすいよね。

最後尾車両には後方確認用の魔道具も装備した。


ということで準備して王都に向けて出発することになった。

「ウォルト王太子、すみません。私の我儘で」

「大丈夫だよ。無理してここまで来てもらっているのだから。それにタカシさんにはもう十分に活躍してもらったしね。あとはこちらに任せてくれ。妹さんを心配させるのもまずかろう。妹さんにもよろしくね」

「はい、ありがとうございます。ではお先に王都に帰らせていただきます」

(しかし、自分の妹に「さん」付けってシスコンか?)


20時にボウリ伯爵領の領都を出発して9時間、空が白みだしてきた王都ブルーに無事到着することができた。

魔物や獣も問題はなかった。

魔動自動車はここまで使った3台も含めてこの一件が終わるまで貸し出すことになっている。

護衛をしてくださった皆さんに感謝を述べて別れた。

彼らは王宮に向かい、伯爵鎮圧の報告をしてから休憩を取り昼前には代官と内政官ら文官を乗せて戻る予定だ。

ご苦労様です。


5時過ぎには水屋から屋敷に戻った。

戻ると、

『ピンポン』

玄関のチャイムが鳴った。

(え、こんな時間に?)

『ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピポン、ピポン、ピーンポーン』

「あ、はい、はーい」

魔力から考えて外にいるのはあの二人だよね。

玄関に急ぎ、扉を開けた。

そこにいた泣き顔のサオリさんを見て固まってしまった。

「またお兄ちゃんが離れて行ってしまったと思って心配したんだから、不安だったんだから」

「え、お兄ちゃん」

そういってサオリさんが私の胸に飛び込んできた。

後ろではカオリさんがしょうがないなという顔をしている。


玄関にいつまでもいることもできないので応接室に移動した。

カオリさんがお茶を用意してくれた。

サオリさんはそのお茶を少し飲んで落ち着いてきたようだ。

え、そのお茶は?

まあいいか。

「サオリさん、カオリさん無断で留守にしてゴメン」

「いいえ、すみません取り乱して」

「問題ないよ。それで何から話したらいいか・・・・・」

「私からお話しします。タカシさん、いいえター兄ちゃん」

「え、ええええー。サーちゃん?」

「はい、思い出してくれたのですね。お兄ちゃん。記憶は戻っていますか?」


私の中で砕けていた記憶の断片のいくつかが繋がっていった。

そして、小さい時の妹との思い出が。

そしてあの事故が。


小さい時から私と妹のサオリは魔力を感じ、操ることができた。

久しぶりに生まれた魔法の使える子だと期待された。

私たちの家系は魔法が使える先祖を持っている。

しかし、地球にはほとんど魔法が使える人間は残っていない。

そういうことで私たち兄妹は一部の魔法を知る人たちには期待されていた。

しかし、2人で遊んでいた時に幼かった妹サオリの魔力が暴走してしまった。

そして「災害」が発生した。

奇跡的のその時に死者が出なかったのは幸運だったのだろうということになっている。

その地域で秘密にされている「災害」だ。

しかし、奇跡ではない。

それは、

「お兄ちゃんがサオリの暴走を自分の魔力で抑えてくださったのですから」

私は妹サオリの暴走する強大な魔力からサオリを守り、周囲に漏れ出し「災害」を起こす魔力をできるだけ無効化し、サオリの体内の魔力の流れを正常化したらしい。

緊急事態に対応して駆け付けた師匠と魔法陣が扱えるカオリの両親が現場についた時は瓦礫に埋もれ意識を失いながらも無意識に結界で妹サオリを守っている兄タカシの姿だったという。

そして私タカシは記憶と魔法を操作する力のほとんどを失っていた。

しかし、それまで以上の強大な魔力は体内に持ちながら。

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