第21話 早く王都に帰りたい
ボウリ伯爵の居城は高さ6mの城壁に囲まれている。
城壁の外には幅6mで水深4mの堀がある。
城壁の中には兵舎や練兵場もある。
練兵場にはテントで臨時兵舎が建てられ、そこに徴兵された住民が押し込まれている。
彼らの持っている武器は木の槍と木の剣だ。
練兵場で訓練をしている。
いや、させられているんだな。
一緒にいる伯爵軍の副隊長格が訓練を指揮している。
酷い扱いをしているな。
早くしないと徴兵された住民が訓練で殺されてしまうな。
副隊長格は上と下からの板挟みでストレスが溜まっているようだ。
訓練と称して住民をいたぶっているよ。
今、王国軍は城壁から矢や魔法が飛んでこない位置で城壁を取り囲んでいる。
我々は攻城作戦の会議中・・・・というか私からの作戦の説明を受けているところだ。
「全体に投降を促してから、まずは徴兵された住民を助けましょう」
「徴兵された住民に敵兵が混じっていたら困るな」
「武器は無力化しますから大丈夫ですよ。住民を保護した後は残った兵にも再度投降を促します」
「簡単に投降しますか。投降したくても後ろから襲われるのが怖いのではないでしょうか」
「その点も考えてあります。お任せしていただけますか。あ、彼らの武器は一度全て溶かしてしまいますがいいでしょうか」
「構わないよ。服は着せてままにしてもらいたいのだが」
「善処します」
王太子から城に向けて降伏と投降の勧告が行われた。
城内に動きがないな。
徴兵されている住民たちは騒いでいるけどね。
まずは練兵場に面した城壁の近くにやって来た。
護衛の兵が10人いるよ。
王都から一緒に来た近衛衛士だ。
王太子から私が傷つくことがないようにと厳命を受けているらしい。
心配しなくても大丈夫だよ。
そして私たちの後ろには300人の王国軍の兵もいる。
彼らは徴兵された住民を保護する部隊だ。
城壁に近づいて行くと矢と魔法が飛んできたけど、
「え、矢も魔法攻撃も消えた。タカシ様は結界も使えるのですか?」
「はははは、結界もどきですよ」
矢と魔法に対して盾を突き出した護衛の皆さんも驚いていますよ。
実は周囲の探索に使っていた水蒸気に魔力を込めてあるお陰で魔法攻撃が無力化できるようにもなった。
ここに立て籠もっている兵が使える魔法攻撃はね、という条件は付くが。
矢は木製部分は炭化した。
金属部分は主に鉄と銅だから塩化鉄(II)水溶液と塩化銅(II)水溶液にしてから塩化ナトリウム水溶液と金属に分離して金属は近くに置いた瓶の中に入れている。
塩化ナトリウム水溶液も塩化ナトリウムと水の分離した。
塩化ナトリウムは私が納品してそのまま持ち逃げしたものや買い占めでため込んだもの大量に場内にあるからそれを使った。
水は堀に沢山ある。
塩化ナトリウムも瓶に回収して水は堀に戻した。
城壁の上にいる兵は鬱陶しいから無力化するか。
まずは弓などの武器は排除しよう。
金属部分は金属として回収、有機物は炭化した。
兵や衣服を炭化しないように気を付けたよ。
中の徴兵された住民の武器と訓練を指揮している兵の武器にも同じ処理をした。
では城壁を崩しますか。
練兵場に面した城壁を外壁のように崩して城壁の上にいる兵をケイ素の泥の中に入れて動きを封じる。
それと同時に外壁を再生した方法で堀に橋を作った。
徴兵された住民にこちらに避難してくるように促す。
住民たちがこちらに来ようとするのを阻止しようとした兵と私を狙ってきた暗殺の特殊部隊の者は水蒸気を操って無力化した。
彼らはなぜ自分たちが動けなくなっているかわかっていないようだけど。
徴兵された住民の保護は完了した。
無力化した敵兵や特殊部隊も連行されていった。
特殊部隊の者は毒を使おうとしたけど無効化しておいたよ。
すごく苦いが健康に影響のないものをしてしまった。
うん、苦しんでいるね。
「タカシ様の笑いが怖いです」
護衛の隊長にいわれてしまった。
顔に出ていましたか?
ではサクサクと行きますか。
早く王都に帰りたいし。
「では金属の武器を無力化しますから再度降伏と投降の勧告をしてください」
城内を対象に武器の金属部分は金属として回収、有機物は炭化した。
人間や馬などの動物や衣服を炭化しないように気を付けたけど範囲が広くて少し失敗してしまったようだ。
衣服の一部を炭化してしまった。
伯爵も含めた何人かが下着姿になってしまったようだな。
城壁も崩して橋をいくつか作った。
呼びかけに応じて何人もの兵が投降してきた。
投降してこない兵は城内に逃げ込んだね。
投降の邪魔をする兵は私の水蒸気で拘束した。
城内に残るは900人程度らしい。
さあ、仕上げだよ。
調理も仕上げは大事だよね。
まずは城内の飲み水をはじめとした全ての水を濃厚な食塩水にして、堀の水で45℃の水蒸気を作って城内を覆います。
湿度100%!
不快指数はMAXだ!
あとは投降してくるのは待つだけ。
厚さと湿度に耐え切れなくなった何人かの兵が場内から飛び出してきて堀に飛び込んだ。
だが慌てて堀から出てきたよ。
堀に残っているの水は44℃の飽和食塩水。
兵なんて傷がいくつもあるだろうから沁みるよね。
はいはい投降すれば体を洗う水と美味しい水がありますよ。
1時間で800人余りが投降してきた。
残り80人程度は熱中症で倒れているのか。
まだ中で生きているようだけど動けないだろうね。
それでは水蒸気は堀に戻して水蒸気の操作で風を起こして城内の空気を入れ替える。
王国軍に城内に残った敵兵と貴族と商人を確保しに行ってもらった。
熱中症も大丈夫なようだ。
重症でも体内の水を操作して生きていれば助けられるけどね。
攻城作戦はこれにて終了。
ご苦労様でした。
いや、もう19時だよ。
屋敷で夕食の時間ですよ。
あ、サオリさんたちに何も伝えずに来てしまった!
これってまずいよね。
屋敷に戻れるのは王都の水屋だけだよ。
「早く王都に帰りたい!!」
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