第20話 作戦決行

14時作戦決行!

まずは外壁の処理。

複数の魔法を発動するとしよう。


昨日、死にかけたら広範囲を対象にした魔法が簡単に使えるようになった。

いや、順序良く説明すると、死にかけたことを反省して相手を察知する方法を考えて試行錯誤をしていたら水蒸気を作り、その水蒸気を支配できるようになった。

どうもその水蒸気に私の魔力を帯びさせることができるようだ。

この世の中には魔法を使える人はそれなりにいるが魔力を感知できる人は少なく、さらにそれが誰の魔力かまでがわかる魔術師はほとんどいないようだ。

私はできるようになってしまったが・・・・。

そのことは置いといて、水蒸気を自分の周囲に配置して配置した範囲に何かが存在すると水蒸気の状態が変化するのを感知できるようになった。

このことによって周囲の気配-物や生物の存在を簡単に察知できるようにもなった。

どこまで察知できる範囲を拡げていたら、自分から6km離れた場所でも可能となった。

お陰でいつの間にか、6km離れた場所までが自分の魔法の有効範囲になったのだ。

これってさらに範囲が拡がるのかな?


さて、外壁についてだ。

壁を造っているのは岩石。

火成岩も堆積岩も変成岩も使われているようだけど。

主成分は二酸化ケイ素。

大理石は違うけどね。

岩石は鉱物の結晶が複雑に組み合わされてできている。

それなら二酸化ケイ素を破壊したらどうなるか。

どうやって破壊するかって!

酸素をいただいてしまう。

近くの川の水が持つ水素と二酸化ケイ素の持つ酸素から水を合成した。

ただいま川では大量の酸素が発生中。

火気厳禁だ。

燃えやすくなるからね。

このままでは危ないから過酸化水素水と硝酸カリウム水溶液を作ってそれぞれを出しておいた瓶に入れた。

かなりたくさんできてしまった。

外壁の岩石中に残されたケイ素は少しはお互いに結合するが今までの結晶で強固だったものが粉末になってしまった。

他の物質はどうするか。

外壁に使われている岩石に含まれるカリウムは硝酸カリウム水溶液を作るのに使った。

ナトリウムは炭酸塩の水溶液にすることで除去した。

カルシウムとマグネシウムは塩化物にして水溶液を作るということで除去する。

これらの水溶液でケイ素を主成分にした粉末が飛び散らないように湿らせた。

外壁がゆっくりと崩壊していく。

外側に崩壊していくように外壁外側の地下から水を抜いて外側に傾けてもおいた。

外壁の上にいた兵士たちは泥のようになった湿ったケイ素に足を取られて動けなくなってしまっている。

彼らの持つ弓などの武器の木製の部分からは水分子を取り出し炭化させた。

炭水化物から硫酸で脱水するあれですよ。

服まで炭化して丸裸という手もあるけど後が面倒なので止めた。

住民の行動を妨げていた柵や城門の扉も同様に脱水によって炭化させて崩壊させた。

これで住民が自由になった。


唖然としている王国軍に指示して動いてもらう。

「事前に分担してあるように住民の保護と敵兵の捕縛をお願いします」

王国軍の兵士が住民を誘導して保護施設に連れてくる。

出された飲み物や食べ物を美味しく食べている。

経口補水液は不味いと思うのだが喜んで飲んでいるね。

体が欲しがっているのか。

かなり脱水状態になっていたようだ。

栄養食も人気がある。

美味しく作ったからね。

夕食は自宅で食べられるようにしてあげたいね。

動けなくなっていた兵士も捕らえて、捕虜収容所に入れられた。

住民にも敵兵にもけが人は出なかった。

よかった。

外壁の崩壊がゆっくりだったので住民は巻き込まれた者はいなかった。

外壁上にいた敵兵はもろに巻き込まれたけどね。

病人の治療も用意しておいた病気治療薬で対処できたようだ。

街を巡回していた敵兵たちの一部が投降してきた。

外壁が一瞬で無力化されたのだから当たり前か。

当然、城壁内に逃げ込んだ者もいる。


住民救出の作戦は1時間で終わった。

さて、外壁が無くなってしまったけどこのままでは困るよね。

では新しい外壁を造りますか。

外壁があった場所から軍や住民に退避してもらい、作業を開始する。

先程作った過酸化水素水と硝酸カリウム水溶液とケイ素から二酸化ケイ素を作り、水に混ぜた状態にした。

それを外壁が無くなった窪みに詰め込み盛り上がるぐらい入れてそれを上に壁状に伸ばす。

水を高温にして二酸化ケイ素を焼き固め、魔法薬みたいに魔力を込めて水を除去したら白い魔法で強化された高さ3mの壁ができた。

鑑定したら魔法と物理攻撃にかなりの耐久性があるようだ。

私の支配下にある素材なので私の魔法には弱いのだが。

4か所の外壁門のところは後で工兵に扉を作ってもらおう。

「やはりタカシさんは規格外だね」

軍も住民も唖然としていたがウォルト王太子は平常運転のようだ。

魔動自動車の運転を覚えた彼の側近も同様だけど。


16時。

住民の世話と捕虜の監視を行う1200名を残し、城壁の周囲を囲むように進軍した。

こちらの軍勢は約1800人。

中にいるのは正規の領軍が1400人弱と徴兵された住民が2000人と貴族や商人や側近か。

敵であっても傷つけずに無力化したい。

領都の住民の建物の被害も出さないようにしたい。

さあどうしよう。

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