第17話 魔物と襲撃

「タカシさん、この『癒しの水』は売らないのかね。と訊くのは野暮か。店があれほど忙しくては無理だよな」

「すみません。もう少し余裕ができたらと言いたいのですが、これは結構手間がかかるんで難しいですね。売るとしたら値段も高くなります」

「そうだな。期待しないで待っているよ」

「はい」


ご近所さんたちも帰り、店の方へ戻ることができた。

水を買いに来る人たちも減っている。

庶民にとって10円でも節約したい。

4人家族で毎日おいしい水を飲料水にしたら月に2400円になってしまう。

月収の5%を超える。

それはきついだろう。

午後は少し水を追加するぐらいで夕方まで売れ切にはならなかった。

そろそろ営業時間の見直しが必要だと思ったら閉店間際にウォルト王太子がやってきた。

ちょうどいいので営業時間の見直しについて切り出してみた。

「そうすると7日後から朝6時から9時、昼は11時半から13時半、夕方は16時から18時半の営業ということだね。塩の生産の方は大丈夫かな」

「はい、魔道具で作っていますから大丈夫です。それからいつもはいないこれからの5日間のうち2日ぐらいは来れそうなのでその日は朝だけ営業します」

「そうすると私たちの方での代理販売もやめても大丈夫かな」

「ええ、そうしてください。お手伝いも明日までで結構です」

「わかった。ちょうどボウリ伯爵討伐の関係で物資を保管する場所が必要だった。塩小屋だけでは足りなくなったので助かるよ」

(それで塩取引所を造ったのか)

お手伝いの人たちが残念そうにしているね。

ごめんなさいね。

いつまでも王宮に頼るわけにはいかないよ。

早速、店の前の掲示を書き換えた。

明日からの予定だ。


営業予定日と営業時間

2月28日 6時から18時

臨時営業 3月1日2日 6時から10時 

3月4日5日 6時から9時 11時半から13時半 16時から18時半

3月11日12日 6時から9時 11時半から13時半 16時から18時半

3月18日19日 6時から9時 11時半から13時半 16時から18時半

3月25日26日 6時から9時 11時半から13時半 16時から18時半


※練兵場での代理販売は終了しました。


2月が30日まであるって変な感じだ。

これでどうかな。

ウォルト王太子の了承も得た。

おそらく会社の方もあと5日の休暇を取らないとまずいようだ。

地球の暦とずれがあるからこちらの暦で3月20日から24日ぐらいになるかな。

本日の営業は終了して「癒しのお茶」を出した。

皆さん喜んでくれた。

ウォルト王太子の目が光ったのは・・・・・・

まあ、いいか。

いつもの通りお礼を渡して解散になった。

ユキノ王女はウォルト王太子と帰って行った。

私も屋敷に帰ってサオリさんたちと夕食を楽しんだ。


翌朝も5時には水屋に出かけた。

美味しい水の量もそれほど多くしない。

昨日も最後に残った水を食堂の経営者や富裕層の人たちが買っていった。

大口は営業時間終了後に別口にしようという話をしてある。

12時間連続営業だが売れ具合を見て順次生産している。

お手伝いの皆さんがいるから可能なのだが。

閉店間際にまたウォルト王太子が来た。

ちょっと話があるというのでリビングに案内した。

「明日からボウリ伯爵の討伐のために私が第2陣の指揮をしてボウリ伯爵の本拠地に行くことになったよ」

「そうですか。それは大変だ」

「うん、戦争は嫌だね。すでに第1陣が包囲しているのだが住民を盾にして本拠地の領都に籠っている」

「住民をただの駒としか見ていないんだね」

「そうだよ。今までにも王国が定めて以上の税を裏で取っていたりした。高額の相続税を取って遺産のほとんどを取り上げたり、伯爵協力税を取ったりとね」

「それでは住民が逃げ出すんじゃないの」

「だから伯爵領が出国者に対しては厳しいというのが有名な話だよ。王国では今まで厳重に注意してきたのだが改善されていない」

「しかし住民を盾にされると攻めにくいね」

「ああ、厄介だ。頑張って任務を遂行してくるよ」

「そうですか。では気をを付けて」

「ありがとう」

ウォルト王太子には餞別として内緒ということで魔法薬を渡した。

喜んでくれたよ。

今日もユキノ王女はウォルト王太子と帰って行った。

兄妹で仲がよくていいね。

私にも妹がいたような感じがするのだが・・・・・・

私には小学校入学前の記憶がほとんどない。

正確には断片的な何かがあるのだが。

妹がいたような感じとというのもその期断片的な何かだが。

私も屋敷に帰った。

サオリさんたちと夕食を楽しんだ後、ちょっと気になって屋敷の書斎で調べごとをしていると例の内線電話が鳴った。

1番のボタンが光っている。

王様からだ。

「おう、繋がった。タカシ君だね」

「はい。陛下」

「賢者様にはこの電話というもので連絡を取っていたが君とは初めてだよな。それより大変じゃ。王都が魔物に襲われている。君のこの前に男たちを捕らえた力を貸してくれないだろうか」

王都が!

ライトさんやハリスさんやルルさんやご近所さんたちも危ないじゃないか。

「わかりました。すぐに行きます」

書斎をロックして水屋へ。

倉庫から結晶粉末状の物と照明の魔道具を持って魔動自動車に乗った。

警備の衛士がいた。

魔物が南門を破ろうとしているらしい。

衛士も乗せ、南門に急ぐ。

南門に着いたところで門が破られた。

「皆さん後退して」

私は警備の関係者ではないが名誉貴族だ。

皆が指示に従ってくれた。

「魔物は殺してもいいのですよね」

「そうしてくれ」

警備隊長が答えてくれた。

魔物はキラーベア10体、アースドラゴン6体、ホーンラビット12体、フォレストウルフ8体だ。

魔法を発動する。

遠隔でこれだけの相手だが塩づくりのお陰で自由にこなせるようになった。

慎重を期して2つの事を同時に行う。

魔物の体内に持ってきた粉末を溶かし込む。

この結晶粉末は塩化カリウムだ。

同時に体内から塩化カルシウムを取り出し下水にに溶け込ませる。

魔物は動きを止め、そして倒れた。

相手が大きかったので塩化カルシウムが足りるか心配だったけど大丈夫だった。

魔物の体内から塩化カルシウムを回収して収納に納めた時、

ブスッ。

背後から刺された。

3人組だ。

相手を体温を下げて無力化したが私もそのまま倒れてしまった。

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