第11話 毒

「私が塩を納品したのが引き金になったのでしょうか」

「まあ、そうだろうけどいずれにせよこの争いは避けられなかっただろう。タカシ君が塩を作ってくれなかったらもっと大変なことになっていたと思う。塩が無かったら軍も戦えないからね。彼らはこちらに塩が無い状態にして弱体化しようとしたのだろう」

「塩はどの位持ち逃げされたのですか」

「この国には塩商人は4店ある。そのうち3店がボウリ伯爵と共謀していたのだよ。彼らの持ち逃げした塩は15tだよ。タカシ君が余計に作ってくれたお陰で問題ない量だ。代金も1000万に行かないから接収した塩商人の財産でお釣りがくるよ」

「もう1店の塩商人は大丈夫なのですか」

「大丈夫だろう。塩の価格を低くしようとしてくれていた。塩を購入できない貧しい人たちには増えた儲けで塩を配布していた商人だ。このアクア王国で塩を担当していたボウリ伯爵に苛められていたようだ」

「そうですか。私はこれからも塩を作ればいいのですよね」

「ああ、お願いする。軍での塩の消費が増えると思うから増産してもらえたら嬉しいのだができるかな」

「大丈夫だと思います」

「タカシ君に行っておきたいことがある」

「はい」

「身辺には十分に気を付けてもらいたい。ボウリ伯爵やカルテ王国が君を狙ってくると思う。以前にも賢者様や賢者様の魔道具を狙って様々な工作をしてきている。こちらでも警戒を強めるが十分に気を付けてくれ」



『ということなのですが』

近衛衛士の皆さんに護衛されながら水屋に帰り書斎で師匠と会話している。

相手は魔導コンピュータで頭の中で会話しているのだが。

『またか。今までにも何回も来て、撃退されているのにな。この水屋の防御は大丈夫じゃ。塩を作りに行ったときに気をつけなさい。君の行く辺りには魔物も少しは出るとはずだからな』

『わかりました。気をつけます』

『しかし、厄介なことになったな』


その後、魔道具についていくつかの知識をもらい屋敷に帰り12時前に寝ることができた。

しかし、3時50分起床だ。

4時から今日1日の美味しい水を創る。

6時までに、

 1L  400瓶

 5L  300瓶

10L 1000瓶

20L  200瓶

計  15900L

これで足りなくなることはないよね。

今回、塩を作るときに使った魔道具でまとめて瓶を出して、まとめて瓶に水を入れた。

その後、店に瓶を並べてシートを掛けておいた。

 1L  300瓶

 5L  200瓶

10L  800瓶

20L  200瓶

計  13300L


並べ終わった時、扉がノックされた。

扉を開けるとそこにはいつも王宮から来られる二人のメイドさんがいた。

後ろには護衛の衛士が二人。

「セシルさん、ミスルさん、おはようございます」

「おはようございます、タカシ様。タカシ様はいつもお忙しいでしょうから朝ごはんを持ってまいりました。開店前に召し上がってください」

(朝一でサオリさんの作ってくれたおにぎりを食べたことは言えないよね)

「ありがとうございます。今、飲み物を用意しますからそちらに座ってください」

「はい、あ、今日はもう美味しい水が入った瓶を出してあるのですね」

「はい、量を多くしたかったので先週と違う方法で準備しました」

「先週?」

「ああ、前回の事です」

「そうですか」

「ではお茶を用意します」

美味しい水をまず作るか。

キッチンで上水道を出した瞬間に気が付いた。

そして、


「セシルさん大変です。上水道に毒が混入しています。加熱しても無効化できない毒です」

店に戻った私は叫んだ。

「そんな。今、どこの家も朝食の調理をしていますよ」

護衛の衛士がすぐに外で警備している衛士を呼んでくれた。

そして一人の衛士が詰め所に向けて走った。

「セシルさんは店の方をお願いします。安全な水が必要ですよね」

「タカシ様は?」

「配水池に行きます。おそらく毒はそこで入れられています」

「お気をつけて」

セシルさんを護衛してきた衛士には水屋に残ってもらった。

外で警備をしていた衛士の4人を魔動自動車に乗せ、王都の西の高台にある配水池に急ぐ。

すでに苦しみながら家から出てきている人がいる。

詰め所から出てきた衛士が水を飲まないように王都内で触れ回っている。

外壁の西門を出た先で配水管に気が付いた。

大急ぎで中の水を冷やした30mにわたって配水管の中の水を凍らせる。

管を膨張で壊さないように気をつけながら。

1時間は持つはずだ。


配水池に着くとそこには3人のローブを被った人物がいた。

排水池に何かを流し込んでいる。

「そこで何をしている」

同行した衛士が叫んだ。

その直後その衛士が倒れた。

魔力が飛んできたのが分かった。

衛士は重傷だ。

治療しないと。

でもまずあの3人を無力化しないといけないな。

魔力は感じられるが攻撃魔法は知らないしできないよ。

そんなことをしているうちにまた魔力が飛んでくるのを感じた。

私はかろうじて躱すことができたが2人の衛士がやられた。

もう迷っていられない。

加減を間違えてもしかしたら殺してしまうかもしれないが。

3人の不審人物の体内の水の温度を下げる。

3人は抵抗したが動けなくなったようだ。

昏睡状態になっている。

「この縄であの3人を拘束してください。魔法も使えなくすることもできます。終わったら水門を閉じてください」

無事だった1人の衛士にお願いする。

師匠の作った拘束の魔道具を持ってきていたのだ。

続いて私は配水池の水を凍らせた。

倒れている3人の衛士を診る。

応急処置だけでもしないと。


私は治癒魔法は使えないが水溶液は創れる。

持ってきたコップに水屋の書斎にあった本に書いてあった傷を塞ぐ魔法薬を作る。

成分はわかっている。

小麦粉と土と水が原料だ。

普通は薬草を煎じるらしい。

仕上げは水溶液に全力で魔力を込める。

これは錬成ができないと駄目なようだが。

できた。

自分の作り出した水溶液には魔力を込められるらしい。

これで応急処置はできるはずだ。

倒れている3人の衛士に魔法薬をかける。

「え、」

「タ、タカシ様、すごいですね」

傷を塞ぐ魔法薬のはずが傷がふさがるだけでなく欠損した部分が再生していったよ。

「ははははは・・・・・」

まさかのこんなことになるとは。

体内の血流液を調べて正常にする。

これで大丈夫か。

衛士は3人とも意識を取り戻した。

次は不審者3人だ。

まだ死んではいないよね。

衛士に監視してもらい、不審者3人の体温を正常に戻していく。

血流も整えて。

よかった生きている。

障害も残らないだろう。


やっと王都から援軍が来た。

さて次は配水池の毒だ。

水門を閉じてあるので水の凍結を解除した。

まず不審者の持っていた毒を鑑定する。

上水道に入っていたものと同じだ。

続いて水屋から持ってきた40Lの瓶に超純水を作る。

次にこの超純水と配水池の水に溶け込んでいる毒で水溶液を作る。

超純水ならこの毒も溶け込む。

塩を作った時のようにもっと手軽な方法もあるが確実な方法をとった。

水を分離して別の40Lの瓶に毒を入れていく。

それを高速で行う。

もっといい方法もありそうだが今はこの方法で毒を回収していこう。

援軍としてきた衛士が唖然としているが。

40分後、広い配水池の水からは全て毒を回収した。

王都に戻ることにする。

配管の中の水の毒を回収しながら王都に向かう。

凍結した水も溶かして毒を回収する。

次に下水処理場に行きここでも毒を回収した。

さらに川に流れ込んだ毒も回収する。

私が下水処理場に着いたところで配水池の水門を開いてもらった。

毒の入っていない水が管を洗っていく。

使われなかった上水は下水処理場に来る。

住民にも管の洗浄のために上水を流しっぱなしにするように伝えられた。

下水処理場に来る水に毒が入っていないことを確認したところで作業を終了した。

川の方では毒が十分に薄められており下流の方でも大丈夫だそうだ。

軍の調査隊から報告があった。


救護所に行く。

解毒薬が足りない様でまだたくさんの人々が苦しんでいる。

解毒薬を作るか。

いや、待てよ。

「毒を回収しますから動かないでください」

患者6000人の体内の毒を対象に回収を行った。

容器には毒が回収された。

患者は皆回復した。



11時を過ぎた。

昼の営業の準備だな。

水屋に戻ってきた。

店の前にもう行列ができている。

「ただいま、え、どうしたのですか?」

セシルさんたちメイド3人とユキノ王女と学生3人がぐったりしている。

急いで味を濃くしたサイダーもどきを出した。

「タカシ様ありがとうございます。出してあった水は全て売れきれました。瓶も200瓶売れました。もうすでに外にはお客がいますよね」

「ユキノ様たちの学校は?」

「学校は毒の騒ぎで休校よ」

倉庫にあった小麦粉と脱脂粉乳と試作しておいた砂糖と濃厚炭酸水でホットケーキもどきを作る。

キッチンにフライパンと油はあった。

コンロは魔導コンロか。

皆さんに食べてもらう。

シロップも用意した。

バターはないけど。

皆さんエネルギー切れだよね。

「これおいしいわ」

好評なようだ。

疲れた時には甘いものがいいよね。

昨日、王宮でもらったクッキーのあまりも出したよ。


さて急いで水の準備だ。

まだ水に対して不安なんだろう。

安全宣言は出てないのかな?


朝の残りの在庫をまず取り出しただす。

 1L  100瓶

 5L  100瓶

10L  200瓶

20L    0瓶

計   2600L


10Lだけを1500瓶作った。

店における限界だ。


 1L  100瓶

 5L  100瓶

10L 1700瓶

20L    0瓶

計  17600L


12時、昼の営業を開始した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る