第4話 営業再開準備
師匠から異世界の水屋までも相続した翌日は土曜日だった。
職場に休暇をもらって師匠の遠戚の方と弁護士の方にあったのは金曜日の午前、昼頃に屋敷に案内してもらった。
そして午後、立体映像の師匠と出会った。
何か夢のように周りが動いていく。
でも夢ではない。
昨夜、銀行口座を確認したら弁護士から聞かされていた金額が振り込まれていた。
これから、銀行のお客様係からの電話攻勢が心配だよ。
定期預金にしましょうって言ってくるよね。
色々と考えて今まで住んでいたマンションはそのまま使っていくことにした。
研究所への通勤は今まで住んでいたマンションの方が便利だ。
屋敷は電車通勤や買い物には少し不便な所にある。
2か所に住むことになるな。
いや異世界も入れると3か所かな。
屋敷にも生活ができる程度の物を運び込んで片付けをおこなった。
昼近くになって空腹を感じ、どこかに買い物に行こうと考えた時、玄関のチャイムが鳴った。
急いで出てみるとそこには遠戚のお嬢さん-サオリさんが立っていた。
「こんにちわ、タカシさん」
「こんにちわ、昨日はありがとうございました」
「家の前を通たら車があるのに気が付いたので。もう引っ越してこられたのですね」
「はい、中の整理がありますのでこちらにも泊まれるようにしました」
「お昼ご飯はもうお済ですか?」
「いいえ、これからどこかで買ってこようかなって」
「よかった。これを一緒に食べませんか」
「いいのですか?」
「はい」
(笑顔が素敵な人だな)
「中がちらかっていますがどうぞお入りください」
サオリさんと食堂まで行き、彼女の買ってきてくれたお寿司とお惣菜をいただく。
電気・ガス・水道は昨日の内に使用開始の連絡をしてある。
お湯を沸かしお茶を用意した。
「そうそう4月から私もタカシさんのいる研究所に勤めるのですよ」
「そうなのですか」
「よろしくお願いします。先輩」
「こちらこそ、後輩」
食事を終え、少し会話をしてサオリさんは帰って行った。
帰る直前に「魔法って信じますか」っていう言葉を残して。
サオリさんを見送ったあと、師匠のいる異世界へと出かけた。
魔導コンピュータであっても知識と記憶と思考をを受け継いでいるのならそれは師匠だ。
「少し遅かったな。何かあったのかと思ったよ」
「すみません。お客があったものですから」
「客?」
「はい、サオリさんです」
「ああ、あの子か」
「4月からうちの研究所に勤めるのですよね」
「そうだよ。彼女は魔力を見ることのできる能力を持っている。こちらに来れば素晴らしい鑑定能力を発揮できると思うがどうするかな」
「ここは秘密にした方がいいのですよね」
「またその件は後で考えよう。まずは創水の魔法だ」
魔法で自分が理想にする水を創りださないといけないからね。
「魔力を感じてみよう。気功の練習をした時に『気』を感じただろ」
「あの時にできたのは師匠と私だけでしたよね」
「あれをやってみなさい」
『気』を巡らせてみる。
「今までよりも多く感じます」
「いいね、それが魔力だよ」
「立体映像なのにわかるんですか!」
「この部屋にはいろいろ仕掛けがあるからね。え、」
「どうしました」
「生前の私より魔力が多い。私の5倍以上。いや、10倍以上。測定の限界を超えた。おそらくこの世界で最大量だ!」
「何かすごい事を言われていますけど」
「ああ、すごいよ。この勢いで水を創っちゃおう」
「あ、はい」
「このコップに空気中の水分子を集めるイメージで」
空気中に水があるね。
水蒸気だ。
それを集める。
水がでコップに出てきた。
空気が乾燥してきた。
「水が出てきたのはいいですけど空気がすごく乾燥してしまいましたね」
「それはそうだ。空気中の水分子を集めたのだから。少し飲んでごらん。ただし、口に含む程度だよ」
水を味わってみる。
不味い。
口の中から何かが奪われる感じだ。
「普通の君に比べて魔力が弱い魔術師が作るのは実は純水程度だ。この世界の容器に入れれば物質が溶け出してしまうから、体内の物質を溶け込ますことはそれほどないけどね。不味いけど危険はない。私は自分で作った水を初めて飲んだときは超純水に近かったようでお腹を壊したよ。君のは完全に超純水だね」
「わかるのですか」
「この部屋はセンサーで鑑定ができるからね」
「そうですか。この水では危険ですよね」
「そうだ。そこの皿を持ってきなさい」
「これは砂?」
「様々な金属が混じっている。それと先程の水を原料に美味しい水を創ってみよう。成分はわかるよね」
「はい、やってみます」
先程作った水に金属イオンをそしていらないものは排除して・・・・・・
「できました」
「うん。いいようだ。それを鑑定してみよう」
「鑑定ですか?」
「その水を調べることを念じてみよう」
「はい、成分の情報が頭に流れ込んでくる」
「どうかな」
「これなら美味しい水です!」
「飲んだごらん」
「うん、美味しい」
「では沢山作れるようにしよう」
その後も練習を続けて美味しい水を創った。
その前に上水道の水を水蒸気にして部屋の乾燥を改善した。
材料は王都の上水道の水と砂。
砂は近くで取れるらしい。
近くの人にお金を払って取ってきてもらうということだ。
ここから必要なものを使って美味しい水を瓶に入れていく。
上水道の水は細菌や不純物が多かった。
これでは安全ではないね。
水を創った後に残骸が残った。
美味しい水を創った残骸の中の細菌にターゲットを絞って水の材料にした。
分子中からも水を取り出すことができた。
残ったのは炭素と金属。
窒素と酸素は空気中へ。
「何をやったんだ」
「細胞の構成する分子中の水を分離しました。残った物がこれですよ」
「そんなこと」
「美味しいし水を創るときだって金属を利用するではないですか」
「あれとは違う。やはり規格外か。今日はこのくらいにしよう。戻って夕食にしなさい。また明日は午前からな。その時この世界の事を教えてあげよう」
師匠と別れて屋敷に戻ってきた。
また、玄関のチャイムが鳴った。
何となく誰が来たかわかるような感じがする。
魔法か?
「はい」
「こんばんわ」
「サオリさん」
「夕食を一緒に食べませんか?」
買い物袋を持ったサオリさんがにっこり微笑んでいた。
夕食はサオリさんに手作りをいただいた。
さらに明日の朝食と昼食を用意してくれた。
「タカシさんここの整理で忙しいでしょうから。家族からもできるだけのことをしてあげなさいって言われています」
その笑顔は反則ですよ。
「タカシさんは書斎に籠って忙しでしょうから」
言葉を返せなかった。
気が付いている。
帰り際に「気の流れがよくなっていますね」と言っていたよ。
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