43 素直になってみると意外と良いことありませんか?

 百合中さん(ユーハちゃん)のライブ配信を見終わったタイミングで突如として鳴ったあたしとマツウラさんのスマホ。


 その画面に表示されていたのは……。


「百合中さんから通話のお誘いが来てるんだけど、マツウラさんは?」


「同じく百合中さんからよ」


「マジか……」


 スマホに表示された、百合中さんが作ったグループ(メンバーはあたしとマツウラさん入れて三人)への着信。メッセージには、『ゆっくり三人でおしゃべりでもしない?』とある。


「もしもーし!」


「判断が早い!」


 即座に通話に応じたマツウラさんに、あたしはついツッコミを入れてしまう。


『やっほー! あれ? いま寺坂さんの声聞こえた?』


「えっ、えっと……そうかしら?」


 マツウラさんは助けを求めるようにあたしに目を合わせる。スマホのスピーカーから聞こえてくる百合中さんの声を聞いて、あたしの頭はフル回転する。


 その間0.5秒、あたしは自分のスマホの通話ボタンを押した。


「やっほー! 百合中さん、どうしたの?」


『あれ? 寺坂さん、いま通話に入ったよね?』


「そんなことないよ。ちょっと前に入ってて、判断が早い! って言った」


『あれ? 応答の表示が出てなかったんだけど、バグかな。まあいいや。それにしてもなんの判断が早かったわけ?』


「それは……あれだね。配信を終えてから通話を掛けてくるまでの判断」


『あああああー! やっぱり見てたの? やめてよお』


「ごめんごめん、でもあたしとマツウラさんに私信くれてたじゃん」


『それはそういうネタだから。まあいいけど』


「わたしももちろん見ていたわよ!」


『うう……名前の表示で分かってたけどね。調子狂うなあ……。それにしてもなんか音声がハウってない? そっちはどう?』


「大丈夫そうかな」


 言いつつ、あたしの背中には冷や汗が流れる。


 ハウってるんじゃない。あたしとマツウラさんが同じ空間にいるから、両方の声がズレて聞こえてるんだ……。


 あたしはマツウラさんに目で合図してから、音を立てないように移動する。そうして、台所(兼玄関、兼脱衣所)のスペースに行くと、居間との境を隔てるふすまをそっと閉じた。


 これでマイクがそれぞれの音を拾うこともないだろう。


「どうかな? ちょっとイヤホン変えてみたんだけど」


「あーあーあー」


 あたしの言葉に応じて、マツウラさんもマイクチェックをやってくれる。かわいい。


『おっ! マシになった。良かった良かった。こういうのって案外直らないときあるからね』


 嬉しそうに言う百合中さんに、少しの罪悪感を覚える。


 嘘を吐いてしまった。


 百合中さんは、あたしとマツウラさんが同棲していることを知らない。知られるわけにはいかない。詳細は省くとして、同じ学校、同じクラスの人にこのことがバレれば、非常にややこしいことになるからだ。


 でもやっぱり、こうして隠せば心がちくちくと痛む。ましてや、百合中さんは友達、といっていい存在だ。それでも――。


『よし、線香花火しよう!』


 あたしの懊悩おうのうは、百合中さんの唐突すぎる言葉にさえぎられる。


「なんて?」


『線香花火ができるゲームがあるんだー。それやりながら話そうよ』


「そんなのがあるのね! 楽しそう!」


『いい反応だねー。ふたりともパソコン持ってる?』


「持ってないわ」


「同じく」


『じゃあスマホアプリ版だね。開発者の人の支援になるから、なるべくPC版を買うといいんだけどね。あたしは買った』


 それから百合中さんは、アプリの詳細や操作方法などを教えてくれる。


 なるほど。誰かが部屋を立てて、そこに集まった人たちが線香花火に火を点けて眺める。そういうゲームらしい。


◇ ◇ ◇


『あたしの火、消えちゃった。どっちかちょうだい』


「どうぞ! むむ……わたしのも消えちゃったわ」


『寺坂さん、急いで! ロウソク出しちゃうと負けだから!』


「そんなルールないでしょ」


 三人で火を与え合いながら画面上の花火を囲む。


 あたしは台所の真ん中でしゃがみ込んでいる自分に気がつき、本当に線香花火をしているみたいだと思って可笑しくなる。


 マツウラさんはどんな体勢なのだろうか。そう考えていると、画面と襖の奥からマツウラさんの声が聞こえてきた。


「わたし、高校のお友達とこうして電話するのってこれが初めてかもしれないわ」


『おっ、そうなんだ。じゃあいただいちゃったな。松浦さんの高校友人通話しょ……うん、いや、なんでもない!』


 百合中さんは何か良からぬことを言いそうになった様子で、ひとり慌てている。うむ、よく我慢した。


「わたしは何を差し上げたのかしら?」


「マツウラさん、ここはスルーして差し上げよう」


「よく分からないけれど、分かったわ!」


 話している間に全員の火が消えていた。画面にロウソクが現れ、あたしたちはそれぞれの花火に改めて火を灯す。


 あたしはスマホを手にしたまま、重心のかかった足を動かして体勢を整える。会話の中に一瞬だけ訪れる、誰も話さない時間。


 あたしは襖の向こう側にいるマツウラさんのことを考える。


 マツウラさんとあたしのあいだにあるこの襖よりも、てのひらの中のちっぽけな機械の方が、彼女の息遣いをはっきりとあたしに伝えてくれる。


 ならば2メートル離れているのも、たとえば2万キロ離れているのも、たいした違いはないのかもしれなくて。


 いま、あたしと百合中さんはマツウラさんにとって同じ場所にいるのかもしれなくて――。


『マジな話をするとさ、』


 静寂しじまを破ったのは百合中さんだった。


『今朝の会話だけだとなんか消化不良っていうかさ。もう少しゆっくり話した方が、三人ともこれから気楽かなと思ったんだよね』


「さすが百合中さん。コミュニケーションの王なのか?」


『馬鹿にしてる?』


「してないしてない。本当に感心してた」


「さすがユーハちゃんだわ!」


『それ本当にやめてー! これからユーハちゃんって呼ぶたびに暴れるからね』


「ひぇっ! ごめんなさい」


「マツウラさんを怯えさせないで!?」


『そんなにデリケートなの?』


「そんなことないわ! わたしは頑丈よ!」


『じゃあユーハの配信を見ないでも耐えられるよね?』


「それは無理だわ!」


『そっかぁ……』


 心底残念そうに百合中さんは言う。確かにマツウラさんは頑丈なのかもしれない。あたしだったら、ここまで言われたら絶対に見ないからな。


『ユーハのどこがそんなに良いわけ?』


 およそ自分のファンに対するものとは思えない質問だが、それもまた百合中さんらしい。


「そうねえ……」


 画面の中で、マツウラさんの火種が百合中さんの花火に移る。あたしの花火は、心なしか元気がない。


「やっぱり、お化粧とかがとってもかわいいし、それに、コメントが辛辣で面白いわよね! だけど絶対にファンを傷つけるようなことを言わないのがすごいと思うわ!」


『そ、そっかぁ……』


「百合中さんが照れるの、珍しいね」


『ハァ!? 照れてねーし』


 照れてる人の言い草だ。


『マツウラさんには敵わないなあ……はぁ……』


 どういう感情なのか分からないが、百合中さんはため息を吐く。


 ため息を吐きたいのはこっちだよ……とは口には出さない。けどあたしのこと、マツウラさんがあんなに褒めてくれたこと、あったかなぁ……はぁ……。


 いつのまにかあたしの火花は消えていて、百合中さんとマツウラさんの花火だけが、画面の中で煌々と輝いていた。


◇ ◇ ◇


「お疲れー。うむーん」


 通話を終え、襖を開ける。ベッドに背中を預ける形でスマホを弄っていたマツウラさんは、あたしを見て首を傾げる。かわいい。


「うむーん、って何かしら? あまり聞いたことのない言葉だったけれど」


「ううん、なんでもない。楽しかったなと思って」


「ほんとうね! やっぱり百合中さんは面白い人だわ」


 そう! それが『うむーん』なのだ……。


 百合中さんが面白い人であることは激しく認める。あたしも以前からそう思っていた。


 でもなんだか、マツウラさんの百合中さんへの態度を見ていると、非常にもにょる・・・・ものがあるというか。あたしにはあんなこと言ってくれないのに……というか。


 まあ要は嫉妬だ。


 あたしの感情がおかしいのは分かっている。あたしとマツウラさんは別に付き合ってるわけじゃない。勝手に期待して、勝手に打ちひしがれているだけ。


 それに百合中さん、もといユーハちゃんは配信者だし。アイドルみたいなもんだし。アイドルに応援の言葉を掛けるのは普通だし。


 でも、ユーハちゃんは百合中さんなんだよなあ。


 ただの配信者ならいいけど、知り合いだし。学校に行ったら普通にいるし。


「どうしたの、つむぎ。なんだかぼうっとしているけれど」


「どうもしないよ。大丈夫」


 そう、本当にどうもしないし、どうしようもないことだ。気にしていたって仕方がない。


「それならいいのだけれど。まだ元気なら、花火をしない?」


 マツウラさんが本当になにげなく言うものだから、あたしは『そうだね~』とか適当に返事をしそうになる。花火?


「うん? もういっかいさっきのゲームをやるってこと?」


「そうじゃないわ。実際に線香花火を買って、どこかでやるのよ。実物を見たくなっちゃった」


 おお、なんだかお嬢様っぽいな。彼女の実家なら、木下さん(マツウラさんと仲の良い執事のおじいさんだ)がスッと花火を取りだす場面だろう。


 と妙なところに関心しながら、あたしの口は自然と開く。


「じゃあ百合中さんも呼ばないとね」


「え、どうして?」


 マツウラさんは心底意味が分からないといった様子で首を傾げた。


「だってなんか悪くない? さっきまで一緒に花火のゲームで遊んでたんだから、花火をするなら呼べばいいかと思ったんだけど」


「うむーん」


 マツウラさんはさっきのあたしと同じ効果音(?)を口にして、しばしのあいだ部屋の隅へと視線を移した。


 戻ってきた視線は、ばっちりとあたしのそれと出会う。


「つむぎとふたりでしたいわ」


 彼女の表情は、どこか悪戯っぽくて。


「駄目?」


「おう……そっか……駄目なわけないじゃん」


「良かった!」


 とびきりの笑顔を見せてから、マツウラさんは立ち上がって洗面所に向かった。


 あたしは激しくその存在を主張する心臓を落ち着かせるため、小さく呟く。


「マツウラさんには敵わないよ……」


◇ ◇ ◇


「寒っ! もっと厚手の上着にすれば良かった」


「確かに冷えるわね。わたしの上着くらいがちょうどいいかもしれないわ」


 ふたり夜道を並んで歩く。


 マツウラさんはオーバーサイズ気味のテーラードジャケットを羽織っていた。この前、木下さんが秘密裏にクローゼットから持ってきた秋物の中にあったのだろう。めちゃめちゃ似合ってる……。かわいい。


「まだちょっと涼しいってくらいの季節だと思ってたのに……なんなら夏だと思ってたのに」


「さすがにそれは秋じゃないかしら?」


 近くのコンビニに入ると、お馴染みの入店音と快適な温度が迎え入れてくれる。


「花火……ない!」


「前までここにあったわよね?」


 入ってすぐの棚は一番〇じに埋め尽くされている。マツウラさんの言う通り、少し前までこの棚の下に花火セットが置かれていたのだ。


 念のため店内を見回るが、花火が販売されている様子はない。


「うむーん。仕方がないわね。帰りましょうか」


 コンビニを出ると、マツウラさんは伸びをしながら言う。その表現、気に入ってるのか?


「せっかくだからもうちょっと探そうよ。最近は季節関係なく売ってるコンビニもあるし」


「でもこれ以上つむぎを寒空の下に置くわけにはいかないわ」


「いや、あたしは大丈夫! いま、花火をしたくてたまらないから!」


「そう? それならもう少し探しましょうか」


 あたしとふたりで花火をしたいと言ってくれたマツウラさんの期待に応えたい。マツウラさんの希望がなんでも叶う世の中になってほしい。マツウラさんの笑顔が見たい。


 正確な動機はそんな感じだったが、あたしもまた花火をしたいことに変わりはない。


 でも……。


「ないわねー」


「ないね……」


 世の中そう簡単にいかないみたいだった。花火が売られていた痕跡のあるコンビニはあったが、肝心の在庫がない。大量に買ったグループがいるのかもしれない。


「仕方ないわ。帰って皿洗いしましょう」


「めちゃめちゃ現実的……でもほんと、仕方ないね」


 自転車でドン・キ〇ーテとかまで行くという手もあるが、さすがにそうなるとマツウラさんを疲れさせてしまうだろう。残念だがここは大人しく帰ろう……。


 と思ったそのとき、視界の端で何かが瞬いた。


「あれって花火じゃない?」


「本当ね」


 公園の片隅で闇を照らしているのは、大学生くらいのお姉さんたちが遊んでいる花火の色だ。


「2本くらいならもらえるかな?」


「えぇ……やめておきましょうよ。邪魔しちゃ悪いわ」


「でも頼んでみる価値はある気がする。男の人いないからナンパされる心配もないし」


「女の人でもナンパしてくるかもしれないわよ?」


「まあね」


 自分でも、マツウラさんと花火をしたいという欲望のせいでテンションがおかしくなっているのを感じる。話しかけて微妙な空気にでもなれば、明日はメソメソとずっとそのことばかり考えてしまうだろう。


 でもそれがどうした。マツウラさんと花火をすることより人生で大事なことってある?


「すみません!」


「ちょっと、つむぎ!」


「ん? もしかして近所の人? ごめんなさい! 声大きかったですかね?」


 3人いる女性のうち、一番派手な格好(タイトスカートにヒョウ柄のシャツ)のお姉さんが手を合わせる。


「いえ、こちらこそすみません……その……線香花火を恵んでもらえませんか!? コンビニでお菓子とか買ってくるんで!」


「じゃあビール買ってきてえー」


 明らかにへべれけという様子のワンピース姿のお姉さんが花火をくるくると回しながら言う(いちおう、周囲に火の粉が飛ばないようにする配慮はしていた)。


「いやいや、この子らどう見ても未成年でしょ。酒パシらせちゃ駄目だって」


 もうひとりの部屋着みたいな恰好の猫背のお姉さんが怯えたように酔っぱらいお姉さんを制した。


「あげるよ、花火! お礼はいらない。調子乗って買いすぎちゃったから減らしてくれたら嬉しいくらい。置いといても湿気ちゃうかもしれないしね」


 ヒョウ柄のお姉さんはそう言うと、大きな袋から取り出した線香花火の小袋をそのままくれた。


 あたしはこんなにもらえませんと遠慮するが、お姉さんたちはあげると言って聞かない。


「ありがとうございます。じゃあ、お言葉に甘えます」


「いっしょにひようよー若者のエネルギー吸わせろ~」


「どう見てもこのふたりでシッポリやりたいんでしょうが。酔っ払いは大人しくしてて」


「しょんな~」


『どう見ても』ってどういうことなんだという疑問はあったが、部屋着のお姉さんのファインプレーに甘えることにする。


「これ貸したげる。あとこれとこれも余ってるからあげる。使うといいよ」


 ヒョウ柄のお姉さんはあたしに百円ライターとロウソク、空の牛乳パックを手渡す。牛乳パックは水を入れてバケツ代わりにするのだ。


 そういえば着火と消火の手はずを何も考えていなかった。行き当たりばったりがすぎる。


「本当にありがとうございます」


「あ、ありがとうございます!」


 あたしが改めて礼を言うと、呆然と事態を見守っていたマツウラさんも頭を下げた。それからふたりで公園の隅に移動する。


「すごいわ。さすがつむぎ」


「さすがっていうか、あたしもこんなの初めてだし……でもなんか、すっごい満足」


「確かに! やり切った人間の顔をしているわ!」


「でもここからが本番だから」


 ロウソクと、公園の水道から汲んだ水の入った牛乳パックをふたりのあいだに置き、線香花火の小袋を開封する。


「はい」


「ありがとう! こっちの側を持つので合ってたかしら?」


「うん」


 あたしは返事をしながらライターを灯すことを試みる。え、固……。ここの丸いところを回しながら押すんだよね? たぶん。


「おっ、点いた」


 小気味の良い音とともに、ライターの先にボシュっと火が灯る。その火を移動させ、ロウソクの芯に点火する。


「小さな焚き火みたいね」


「なんかその表現、しっくり来るね」


 見惚れそうになりながらも、あたしは本来の目的が線香花火だったことを思い出す。


「やろっか」


「ええ」


 マツウラさんは繊細なこよりを火の中に泳がせ、その先を灯した。


 あたしも自分のぶんの花火に火を点け、マツウラさんの花火に並ばせる。


 ほとんど同時に綺麗な花が開き、混ざり合う。


「なんだかいけないことをしている気分になっちゃうわね」


「どどどど、どゆこと!?」


「えへへ。なんでもないわよ」


 なにこれ、夢?


 時間は夜で、あたしのとなりにはあたしの好きな人がいて、花火をして笑っている。


 たぶん、いつものあたしなら幸せすぎて怖くなるところだ。


 普段なら、今この場の幸せよりも、この幸せがいつか壊れてしまうことへの恐怖が勝る。それがあたしという人間だ。


 でも今は――そういう気持ちがまったくないわけではないけれど――少し違う。


 だってこの花火は、あたしが意地で手に入れたものだから。この時間は、あたしが自分で掴み取ったものだから。


「なんだかつむぎ、少し変わったわよね。良い意味で」


「そう?」


 そう、かもしれない。


「ええ。今までに増してかっこよくなったというか」


「あたしって前からかっこよかったの!? 初耳なんだけど」


「つむぎはかっこいいわよ。当たり前じゃない」


「じゃあもっと褒めてほしいな。ユーハちゃんを褒めるくらいに」


 自分の口から出た言葉に、あたしは自分で呆れる。


 いったい何を言っているんだ……。本格的に舞い上がってしまっている。


 けれど、言ってしまったものは仕方がない。しかもこれは本当の気持ちだ。マツウラさんにもっとあたしのことを褒めてもらいたい。臆面もなく思う。かわいいって言ってほしい。


「その……なんだか照れるわね。つむぎの良いところはもちろんたくさんあるんだけど……あれ? どうしてこんなに恥ずかしいのかしら?」


 暗闇の中でも、マツウラさんの顔が真っ赤になっているのは容易に見てとれた。


 マツウラさんの反応は、想像していたどれとも違ったけれど――


 なんというか……最っ高。


 マツウラさんが照れている間に、火花はオレンジ色の二滴となって消える。


 次の花火に火を点けてから、マツウラさんは口を開く。


「ごめんなさい、思いつかないわけじゃないの。ただ、なんだか変な感じで……」


「それはそれで嬉しいんだよねえ、実は」


「そういうものなの!?」


「そういうものかも」


 少し遠くから、酔っ払いお姉さんの『青春らねえ!』という大声が聞こえてきて、あたしとマツウラさんは顔を見合わせて笑う。


 それからあたしが大きく手を振ると、お姉さんたち3人もそれぞれのスタイルで手を振り返してくれた。


 その様子を見て、マツウラさんはやっぱり恥ずかしそうにしているのだった。

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ちなみに女の子同士なんですけど、京都で同棲はじめました。 かめのまぶた @kamenomabuta

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