私は・・・

 國里蒼生、私は今、白い箱の外で白い箱が割れて崩れて空気に溶けるのを待っていた。

 そう、あの日のように…。

 しかし、今回は前回とは違った。

 待っている理由もそうだが、私は今は泣いていた。それは、私が起きてこの箱を見、こうやって待つのよりも前に、私が寝ている間に見たげんじつの所為だ…。




 私は今日、学校を休んで父の真っ白だがモニターと書類だらけで色が分からなくなっている研究室へ行った。父が私を呼び出したのだ。「蒼生、今日は実験が成功しそうだからおいで。こんな実験が成功する瞬間なんて見れるのは一生に一度程度だろう。」と…。

 一生に一度しか見る事が出来ない!この機会を逃したら絶対に見ることは出来ないだなんて、気になるに決まってる。

 私は学校を休んで父のいる研究所へ向かったのだ…

 その先で私が変わるとも知らず…




 ここで夢は消えた。やはり、所詮夢だから…目が覚めたら曖昧になってしまう。

 もしかして、研究所へは行かずに寄り道したのかもしれない…。ただ、辛く、悲しい感情だけが心の中に残り、渦巻いていた。私はどうして悲しいんだろう…。そして、私は一体――

 ――誰?


 暫くして、白い箱は崩れた。涙で頬が濡れ、目の周りが少し赤くなった私の顔を見て、彼は聞いた。「どうしたの?」と。私はやはり思い出す事が出来なかった為、涙を拭いて、まだ少し赤い目を細め、笑顔で「何でもないよ、ルイと何を話していたの?」と、言った。

 彼は心配そうな顔で私を見てから言った。「とある無茶ぶりだよ…」と、重い口調でゲートの出現条件についての話を教えてくれた。




 彼はやっぱり私の事を忘れてしまったのかな…?


 そして、


 私も、私の事を覚えていないのだろうか…?


 思い出すにも、ゲートを出現させるにも、こんなところで立ち止まっているだけでは、何かしら行動しなければ、何も出来るわけがない…。


 そう思った私は、私の事を忘れてしまった彼を連れて、私の事を覚えていない私のままで、再び町へと歩き出す。

 思い出した事が、どれほど辛い事だとしてもきっと私は後悔しないと、今、私は思うのだった。

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