狭間
「て……お…て……起きて!」
聞いたことのない少女の声で目が覚めた。
【unknown】という文字が顔に張り付いた黒い人影……。
unknown…?まるでゲームじゃないか?
黒い人影? なんで顔が見えないんだ? こんなに近いのに?
ヴーーーン
機械音が僕から鳴った。正確には、僕の目から……?
【welcome to life game!】? ゲーム……?意味がわからない。
すると、ある一人の女性が目の前に現れた。現れたというより、構成された……!?
コスプレ?肩まである毛先が青い白髪、計算されつくした顔の目は透き通っているようでしっかりとした深い青色で、長い睫毛はあの空の雲よりも、雪よりも白かった。
「こんにちは。私はこのゲームのサポートロボット、Lui*75です。サポートが必要な時は『ルイ』とお呼びください。
これからあなたには、このゲームから出るために、他のプレイヤーと競っていただきます。」
ロボット……らしい。
よく状況が分からない。ゲームに突然巻き込まれたのは分かったが、僕は死んだのでは? もしかして、ずっと夢だったのか?
頭の中でそんなことをぐるぐると考えて黙っていると、『ルイ』が話し出した。
「申し訳ありません、説明が足りませんでしたね。
この世界は死と生の狭間の世界で、あなたと全く同時に『死にかけ』の状態になった人が『生き返る』ためにこの世界から脱出する世界です。この世界は『死にかけ』なので、時間の概念がありません。実際の『生き返る』世界では時間は進みますので、長い間こちらの世界にいると、『死にかけ』の症状は徐々に悪化して、まず心肺停止、次に脈拍停止、最後に瞳孔散大となり、死亡します。死亡しても体があれば間に合いますが、腐ったり、火葬されたりしてしまうと、『生き返る』ことは出来ません。
脱出するには、【ゲート】を潜らないといけません。【ゲート】は、青い光を発している門だからすぐに分かると思います。」
「要は、この世界にある【ゲート】を潜ればいいんだよな?」
自信はないが、このゲームのことが少し分かったところでさっき少し気になったことを聞いてみる。
「ところで、僕の目から鳴った機械音は……? あれは一体何なんだ?」
このロボットが現れる直前『ヴーーーン』という音は確かに僕の目から鳴った。なんで目から鳴るのか、気になっていて先程の話の最初のワードは聞こえなかった。
「私はサポートロボットとして、プレイヤー全員の状況を見ておく必要があります。なので、プレイヤー全員の目から私が見ることが出来るようになっています。いつ私が呼ばれてもいいようにという事です。呼ばれなければ何にも介入しませんのでご安心ください。個人的な話なら、今やっている様に周りに防音の薄い壁を作り、先程のunknownのようなプレイヤーが介入することが出来ないようにしますので、あまり聞かれたくない話があればどうぞご活用ください。」
ルイに言われて周りを見回した。全く気付かなかった。いつの間にか空を覆い隠すように隙間なく建てられ、窮屈ささえ感じるようなビルは見えず、天井の低い真っ白な部屋の中だった。驚いたが、なんとか
「なるほど、もう分かっ――」
ここまで言った瞬間、真っ白の部屋が割れて白い破片になり、破片が更に割れて粉になり、まるで雪の様に散りながら、空気に溶けて消えていった。
「それでは、ご健闘をお祈りします。 頑張ってくださいね。」
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