第5話

 次の日、ジェミーは学校へ始めてスマートフォンを持っていった。教室内でのスマートフォン利用は許可されてはいなかったが、ほとんどの生徒が肘で隠すようにしてスマートフォンをいじっていた。しかも、そのことにミラー先生は本当に気が付いていないようだった。だが、ジェミーはさすがに教室内で利用するのはやめた。というのも、いじり始めれば5時間も6時間も過ぎていき、関係ないことに夢中になって教室にいる意味がなくなると思ったからだ。11年生の中でスマートフォンを持っていない生徒は2人しかおらず、教室内で利用しないのはジェミーを含めて4、5人だった。

 11年生は進路決定のこともあって授業がすぐに始まった。ミラー先生の授業は、生徒同士での話し合いが多かった。ただこれはジェミーにとっては最悪だった。隣の席のひっつめ頭の女子は、相変わらずジェミーのことを無視し続けていた。スマートフォンをいじらないのはジェミーと同じだったが、別に先生の話を聞いているという様子でもない。いずれにしろ、ジェミーには非常にストレスで、苦痛だった。

「あの、私とじゃダメなのかな?」

ジェミーは少し声が震えてしまうのを隠しながらおそるおそる聞いた。

「・・・スマホ、やんないの?」

ぶっきらぼうな声で、相手は初めてそう答えた。ジェミーは少しほっとしながら、

「あ、もちろんそれはいじりたいけど。」

と慌てて答えた。

「じゃあやればいいじゃん。」

怒ったような声だった。それでも自分に答えてくれたことがジェミーにとっては嬉しかった。

「私はやらない。私はスマホ、教室内ではいじんないから。」

ジェミーは自分でも驚くくらい大きな声で答えた。ミラー先生の座っている教室の一番前の場所までその声は届いたらしく、先生は一瞬パソコンの画面から顔をあげた。前に座っている他の生徒達も驚いたようにジェミーの方を見た。ジェミーは慌てて口をつぐんだ。

 新学期2日目なので、学校は半日で終わった。チャイムが鳴ると、ジェミーは荷物をまとめて、教室を出た。すると廊下には数人の生徒がジェミーに話しかけてきた。

「ジェミー、良かったら私たちのグループに入らない?」

ブロンドの髪をきれいに巻き、かすかに香水の香りを振りまきながら、ジェミーに笑いかけてきた。

「私たち、ジェミーみたいな転入生を待ってたんだよねー。ほら、あなたの隣に変な子いるでしょ?あの子の隣は絶対心細いよねーって皆で心配してたんだよー?」

ジェミーは話しかけてもらえたことに心底安心感を覚えた。

「ああ、そうなの。隣の子って結構変で。困ってんの。」

ジェミーはいかにも困っているといわんばかりに顔を膨らませた。

「でしょ!だから、ほら、良かったら私らと一緒にいないー?」

ジェミーは思わず

「ありがと!よろしく!」

と元気よく答えた。その日はそのまま、学校から少し離れた所にあるファストフードの店で話したり、スマートフォンをいじって過ごした。ジェミーは新しいスマホの機能を次々に知った。好きなことをつぶやけるという、ツイッターというアプリはすぐにログインした。そして、さっそくこうつぶやいた。


ジェニー @×××××

初めてのマイアミでのハンバーガー、最高!そして初めてのツイート、最高!


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