第2話

 9月2日、新学期が始まる日。ジェニーは緊張していた。転校は3度、経験済みだ。それでもまだ、慣れない。新しい学校というものは、そこにいる生徒から先生まで全ての人達がまるで自分のことを睨みつけているように見えてしまう。そんなことを考えるだけでも嫌になってしまう。母親が朝食にと作ってくれたマフィンは、喉に通らなかった。ジェニーは深呼吸をすると、マンションを出た。学校はマンションからものの数分の場所にある。校舎は2階建てで、ジェニーは新11年生(高校2年生)としてこの学校に編入することになっていた。学校の周りには女生徒がもう何人か集まっていて、校門が開くのを待っていた。少し早く来すぎたかもしれないとジェニーは後悔した。周りからの視線に気がついていないような振りをしながら、爪をいじりはじめたその時、

「あれ、君がジェニーかい?」

背後から声がした。ジェニーが振り向くと、片手に箒を持った、学校の先生らしき人が立っていた。

「あ、はい。転校生です。」

ジェニーはなるべく愛想良く聞こえるように、努めて明るい声で答えた。父親から出掛けに第一印象が大事だと言われたのを思い出しながら。

「ああ、やっぱり君がジェニーなんだね。ようこそマイアミへ!早速だけど、僕は新11年生のホームルームの担任なんだ。マイケル・ミラーだよ。どうぞよろしく。」

ジェニーは一瞬、驚いた。というのもこんな所で急に会うとは思わなかったからだ。だが気を取り直して、

「ジェニー・ヒューストンです。よろしくお願いします。」

と返した。

「じゃあ、そろそろ校門も開く頃だし、教室に行こう。」

そう言うと、ジェニーを新しい教室へと案内してくれた。校舎は思ったよりも広かった。1階に9年生と10年生の教室、保健室、校長室や事務室があり、2階には11年生と12年生の教室、ホール、実験室、ITルーム、音楽室があった。

「わりと明るい感じの校舎に設計されているんだ。体育館は隣の建物だよ。プールは近くの市民プールを使うんだ。この建物はわりと最近に作られたんだよ。」

確かにシアトルの頃の校舎より新しい、とジェニーは思った。

「まだ開始まで少し早いか。それじゃあ、始まるまで1階の事務室で待っててもらおう。」

「はい」

ジェニーは言われた通り、事務室へ向かった。




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