カクヨムよ、お前もか
え? 何がカクヨムもかって? 誤解されないように話せば長くなるんですけど、ぶっちゃけると、つまりは「宣伝」について、なんですけれども。
僕が初めてネットの小説投稿を利用したのは「E★エブリスタ」というサイトだったんですが、ここが凄い所だったんですよね。登録者はおそらくですが、体感的にほぼ全て「クリエイター」と呼ばれるアマチュア小説書きさんや、イラスト描きさんたちでしたん。
で、そこでは、自作品の宣伝が凄く盛んでして。「スター」というものを作品に投げて応援し合ったり、レビューし合ったり、初期の頃なんぞはなんと課金アイテムまでありまして。自作品が目立つようにサムネイル画像(大体表紙イラストや写真)を額に入れる感じになるアイテムとか、作品タイトルが目立つ色に出来たりとか。まあ、それはそれはクリエイターさん同士の交流が盛んで、僕がエブリスタで投稿を始めた頃は、そりゃあ楽しいところでしたん。
でもね。それが問題だったのんな。
そうしていると、作品自体のクオリティより、作者さんの人柄とか、まめまめしく人の作品を応援している人とかに人気が集中してきまして、僕が「へー、これが1位の作品か。どれどれ」なんて読もうものなら、もう本当に「なんっじゃこりゃああああ!」って叫びたくなるほどに、こう、人の事を言えるような作品、僕も書いてないんですけど、もうなんかこうアレな、稚拙というか、素人丸出しというか、こいつ絶対小説の事を何にも勉強してねぇだろみたいな作品が多かったわけですよん。
もちろん、そんなのばかりじゃなくて、本当に凄い作品だってありました。文体は小説と呼ぶにはちょっと、てものでも、内容は凄く良くて、僕が夢中になって読んでしまうほど。僕、技術云々よりも、その作品が「伝えたい事」みたいな、中身っていうか、そっちの方を重視するので、誤字脱字違文法には割と寛容。顔文字が入っていても面白ければ全然おっけー。限度はありますけども。
と言うわけで、必然エブリスタ投稿作品群の質は低下の一途を辿ります。そりゃあそうですよね。作品がどんだけ酷くても、宣伝頑張ったら上位に入って目立てるんですから。宣伝やってる時間を作品の質向上に充てて頑張る本当の小説書きさんたちは埋もれる一方ですしおすし。
そうして埋もれた、人気の出ない作品の中でも、僕が「この人は凄い!」と思った人たちは何人か出版デビューしましたが。その中の一人は、ここ。「カクヨム」でも出版されていますけど。元エブリスタ難民だった先生なのですよね。才能ある人をボコボコと埋もれさせるエブリスタ。僕は見る目があるなーと思いました。これは自慢()。
でも、エブリスタもこのままではまずいと気付いたのでしょう。一気に方向転換したので、今はそんな事は無いはずです。ちゃんと実力ある人は発掘してる。作品名は伏せますが、エブリスタからアニメ化された推理もののアレ、僕は大好き。エブリスタの事だから、どうせ作画崩壊必至だろとか思ってたのに、予想外のハイクオリティアニメに仕上がってたのが嬉しかったん。
で、ここからが本題で。前置き長いのは僕の持ち味。焦らして焦らして結局何もしないというドSな性がそうさせるんな。
ほら、このエッセイの前の話。カクヨム甲子園のポエムなんですけど。僕、ツイッターていまだに使い方が良く分かんなくて、フォローやらリツイートやら、勝手にやると怒られそうで怖いんです。は、ともかく、僕も参加してみたら、急にいいねとかフォロワーさんとか増えたんです。それは素直に嬉しいんです。
でもね。
そう、エブリスタにいる頃、散々経験したあの「宣伝」の臭いがぷんぷんして。「ええー……カクヨムでもこういう事やってる人がいるのー?」って、ちょっとげんなり。
エブリスタには、僕のエッセイもあります。タイトルは「僕がエブリスタを辞めたワケ」。カテゴリランキングで最高2位にまで上がった事もあるエッセイでした。そこにも書いたんですけれども。
宣伝て、何か意味あるんですかね? その時間で、1000文字でも2000文字でも書けそうな気がしません? 面白い作品なら、ここ「カクヨム」にたくさんいそうな、素晴らしく目の肥えた読み専さんたちが絶対に放っておかないと思えるんですよ。
読まれなければ作品の意味が無い。せっかく頑張って書いたものだから、もっとたくさんの人に読まれたい。
そう考えるのは当然です。僕もそう思います。しかし、だから宣伝するというのは、ちょっと違うと思うんです。その為には、作品の質を上げようと考える方が自然だし、その方が絶対自分の為になると思います。
自作品に自信がある。なのに読まれないのは、人の目につかないからだ。
それも確かにあると思います。でも、本当にそうでしょうか? 宣伝など一切しなくとも、人気の出た作品はたくさんあるんじゃないでしょうか? これは僕がいつも自分に言い聞かせている事ですが、
「人気が無いのは面白くないからだ」
僕の作品は間違いなくコレです。宣伝した所で、人気が出るなんて思えません。もちろん、自分では面白いと思って書いてます。僕、自作品読むの大好きなんで。でも、他人が読んで面白いものでは無い。人それぞれ、「面白い」の基準は違う。なので、「面白い」の絶対公約数が足りていないのだ、と。そう思っています。
宣伝する事を否定はしません。それで繋がる人がいて、貴重な人脈も出来たりします。僕、元赤川次郎先生の担当編集だった人に作品を読んでもらえた事もありますから、有意義に作用する事だってあり得ます。
でも、僕は宣伝やらやたら絡みたがる小説書きさんを見ると、ちょっと悲しくなるんです。その努力と時間、違うベクトルに向けて欲しいなって、そう思ってしまうんです。
余計な心配だとは思いますが。
「カクヨム」が、素晴らしい投稿サイトであり続けられますように。祈っています。
2018.6.24 仁野久洋/峯みると
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